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舟の実験

その頃、諏訪湖に怪しい一団が何やら実験をしていた。居残り組のお幸、親衛隊jr、格さんと助さん達工場組みである。


「何で、舟が鉄でできてるの?」


「勝頼様の考案じゃ。今までも色々と不思議な物を作ったじゃろ。だが、どれも出来上がるとこの世の物とも思えん代物ばかり。さて、浮かぶのか、おい!」


「何その掛け声?みんな、押すわよ。」


お幸の掛け声で舟を押した。そう、これは軍艦の1/50モデル 雷火1号である。当時の舟には動力がない。この舟には電力と人力双方が、ようは電気自転車のようにどっちでも動くようになっているテスト舟である。定員1名、実験台はそう、高さん弟の寅松がやらされている。


「おお、浮いた浮いた。」


「百田様、浮いただけで喜ばないでください。乗ってる身にも、うわー、揺れる、怖い。え、漕いでないのに進むぞ、何だこりゃ?」


「あんたそれでも親衛隊jr筆頭なの、情けない。」


お幸は笑いをこらえながら、寅松がいてよかった、実験台が私じゃなくてと思いつつキツイ言葉を投げていた。


「どうやらテストは成功だな。次の段階に進むぞ。」


格さんはさてこれからが大変と思いつつ、勝頼に言われた順番でテストを重ねていった。




さて、駿府城では、


「何、駿河が欲しいと。ならん、そなたは跡取、駿河ではなく、古府中へ来い。駿府は山県昌景、馬場美濃に任せる。」


と、信玄が重臣がいる前で勝頼の古府中入りを指示した。つまり、皆がいる前で正式に跡取が勝頼だと宣言したのである。当然、誰も反対はしなかった。

だが、この瞬間から重臣間のイザコザが始まったのである。

強い王様の下では言うことを聞く重臣達も、個々にはいっぱしの男であり勇者であり戦士である。当然自我が強く目立ちたがりもいる。王が変われば、素直に従う者、これを機会にのし上がろうとする者色々である。

また重臣同士が仲がいいとは限らない。

『なんか、あいつムカツク〜、いつもいい事ばかりいいやがって』

と腹の中では思っていても信玄の建前、喧嘩せずにうまくやってるのもいる。

強い王様、信玄の指示で皆んなが同じ方向にベクトルを向けて進んでいるから武田軍は強いのである。


つまり、勝頼はそれを乗り越えなければならない。勝頼は歴史を知っている。このあと、勝頼贔屓の跡部を嫌いな穴山が、跡部の権力が増すのを邪魔して自らが親戚衆筆頭を維持する為に色々策を用い、結局徳川に寝返る事も。

穴山が勝頼を見限り、武田の事を考えて裏切った事も。


勝頼はここからが勝負と考えていた。駿府が欲しいと言えばこうなる事を予想していた。


「お屋形様、それでは勝頼は古府中へ移ります。ただ、この戦、まだ終わってはおりませぬ。大井川まで攻め入るべきかと存じます。また、先に話もあった水軍ですが、この先焼津の花沢城に今川水軍の伊谷康直という者がおります。この者を召し抱え水軍奉行とする策を提案致します。」


信玄は、元今川の武将、岡部正綱に聞いた。


「そちはどう思う?」


「は、確かに伊谷康直は今川水軍の将。この者をお味方にできれば水軍作りは楽になりましょう。その他にはそれがしの親戚で水軍にいた者がおりますが、今は北条に仕えております。こちらはそれがしが説得致します。それと、北条には間宮兄弟という北条水軍の要となる一族がおります。彼らを味方にできれば鬼に金棒かと。」


「北条の水軍が簡単に裏切るのか?そんな奴らは信用できん。」


「お屋形様。水軍の連中は陸の者とは考え方が違います。彼らは海が領地、戦場なのです。北条家はそれがわからずただ用がある時のみ使います。嫌気が指しているので、武田家が手厚く迎えれば大きな働きをすると考えます。」


「わかった。間宮兄弟の説得はそちに任せる。一族全体で千石。それと水軍奉行、戦が始まり功績次第では水軍大将を任せると交渉しろ。」




山県昌景は駿府を任されたので、焼津、藤枝方面へ進出した。先ずは伊谷康直を味方にする為に花沢城を攻めた。花沢城は山城で簡単には落ちなさそうな城だったので、勝頼に城を包囲させた。開城を要求したが抗戦の構えを見せたので桜花散撃改をぶっ放し、敵が驚いている隙に一気に門から突入した。交戦となったが、城主の大原資良は諦め、高天神城へ落ち延びた。


城には情報通り、伊谷康直がいた。勝頼は信玄公が貴殿に話をしたいと伝え、駿府城まで連れて行った。


「伊谷殿、武田水軍を作りたいのだが手伝ってくれぬか?」


信玄は率直に打ち明けた。伊谷は大原資良には義理があり仕えていたが、今となっては武田の方が面白いと思い即答で引き受けた。

北条軍の間宮兄弟は、岡部正綱の手の者に話を聞いたが話がうますぎる為信用しなく、武田重臣が来なければ同意しないと言ってきた。

勝頼は自分に考えがあるので任せてくれと信玄に交渉の許可と時間の猶予をもらった。ついでに水軍に配下の者を加えたいと申し出て、了承された。






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