秀吉発見
桃は信忠の死を確かめた後、お幸が根こそぎ持っていったと思われるゼータの部品以外の物を全部の電動台車から集めた。そして電動台車を5台連結して城の北側に向かった。この連結した電動台車を勝頼は電車だ!と言って喜んでいたが、桃には何が楽しいのかわからなかった。桃は残っていた技術部、工作部、製造部の面々を電車に乗せ共に北に向かった。何となくだが北に向かえと誰かが言っている気がする。沙沙貴彩、あいつはまだ生きているのか?あの爆発でお前が仕えていた信忠は死んだぞ。彩を助けてくれと信忠は言った。それが信忠の遺言になってしまった。
「わからない、私には……」
桃が北に向かう途中で山県昌景と山上道及を拾って電車に乗せた。道及は信平に言われ途中から城攻めから外れて、前田慶次郎の応援に向かう様言われていて山県昌景のところに来ていたのだ。電車の後を赤備えが続く。空を見ると、ハンググライダーが北に向かって飛んでいるのが見えた。あれ、数が少ないと思ったら後を追うように三機が続いていた。
「山県様。この方向で合っているようです。空に大御所が」
「あれが新型か。今までの甲斐紫電と何が違うのだ?」
「あれは、光乃突刃叉という新型で、いくつかの改造がされています。電池の代わりに小型のエンジンが積まれ、翼の先端部分だけ金属になっていて刃になっています。それと、」
「それと、なんだ?」
それは見てのお楽しみにして下さい、と桃は言った。そして北へ急いだ。
勝頼は上空から秀吉一行を見つけた。兵の数は500といったところか。電車も向かって来ているが追いつくには30分はかかりそうだ。その後を赤備えが続いている。確実なのは赤備えが追いついてから囲ってしまう事だがそう上手くいくかどうか?その時、豊臣軍の装甲車が秀吉を追いかけているのに気づいた。
「まだあんなの残ってるのか?電車に何が残ってるのかな?勝てる?」
高城が答えた。
「大御所、あれはまずいです。走りまわられながら機銃撃たれると盾では防ぎきれず山県様が危険です。我々はこの高さなら届かないと思いますが」
うーん。攻撃するには高度下げないとだけど下げたらいい目標になっちまうな。どうしましょ、と思っていたら戦国飛行隊の3人が追いついてきた。6機かあ、足りるかなあ。熱量。
そうこうしているうちに装甲車が秀吉に追いついた。装甲車に乗ってきたのは右近だった。
「殿下。長距離砲が完成し信勝本陣を直撃、信勝を殺しました」
「右近。でかしたぞ。余は一度九州まで退く。ついて参れ」
「はっ」
右近は褒められて置いていかれた事を忘れてしまった。文句の一つも言おうと思っていたのだが。その時本多正信が右近に言った。
「嫌な予感がする。警戒を怠るな」
本多正信か、こいつも逃げていたのか。よく見ると籠に付き添って沙沙貴彩までいる。まあいい、殿下を守るのは俺だ。
電車が秀吉一行を見つけた。桃が望遠鏡『見えるんです』を使って。まだ向こうは気づいていない。
「あ!」
桃は電車を止めた。
「どうした?」
「山県様。向こうに装甲車が一台あります。このまま突っ込むと機銃の餌食です」
山県昌景は軍議を開いた。メンバーは山上道及、桃、工作部、製造部のみんなだ。電車に積んである武器であの装甲車に対抗できるか?
*速度 向こうの方が速い 盾を展開しても回り込まれてあの世行き
*火力 向こうの方が強い 機銃の連発には敵わない
*装甲 向こうの方が強い 鉄砲くらいじゃ屁でもない
「あれは電池で動いています。そのうちに動けなくなりますぞ」
「それがいつかわからん。それに動かなくなっても装甲は厚い、機銃は使えるから近づけん」
「伝説龍王があれば」
「無い物は仕方ない。ん、待てよ?桃殿、桃殿の光乃突刃叉はありますぞ」
「それをどう使う?敵の目が上空に向かえば大御所が危なくなる。あと残っているのは大御所が使うはずだったあれと、あ、あれがあった。ドリルミサイル」
「ドリルミサイルって海軍の船の船首につけるやつか。あんなのここでどうするんだよ」
技術部、製造部と工作部の会話は続く。山県昌景は電車の連結を解いて電動台車にもどした。そして積んであった鉄の盾を前面に設置し、正面からの銃撃を防げるようにした。そこに前田慶次郎と服部半蔵、茜、伊賀者が合流した。
「風魔小太郎を追って城の北側にいたら電動台車が見えたのでな。敵に装甲車がいるぞ」
慶次郎の言葉に桃が答えた。
「慶次郎さん、ご無事で。そうなんですよ、あの機銃が厄介で」
「この間は源三郎が車輪に槍を突っ込んで動きを止めていたぞ。秋山殿は丸太を突っ込んでいた。まずは動きを止める事だ。止めてしまえば、機銃は一方向しか撃てない」
「前田殿の言う通りだ。電動台車で装甲車を円陣に囲む。盾を前面に設置しておけば銃撃は防げる。そして敵の足が止まったところを狙う。技術部、できるな!」
「あいあいさー!」
技術部は海軍の乗りで返事をし、工作部に指示を出した。皆が準備に入る中、桃は敵の中に沙沙貴彩を見つけた。
勝頼はその様子を上空から見ていた。ぼちぼち燃料気にしないとかな。もう少し保つから皆の仕事ぶりでも見学しますか。
「どうやら装甲車をやるようだ。こっちもタイミング見て仕掛けるぞ」