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加藤清正の最期

井伊直政は加藤清正に向かって自信たっぷりに言った。『武でも策でも勝つのは真田昌幸』だと。その自信はどこからくるのだろうか?その答えは?


信豊と旗本達は奮戦していた。斬っても斬っても敵が現れる。消耗激しく味方がどんどん減っていく、それでも戦い続けるしかない。信豊は死を覚悟したが、死ぬまで続くと思われた敵出現度合いが突然変わった。


「敵が減った?真田が来たのか?いや、あれは!」


前田慶次郎だった。慶次郎は加藤清正の馬に槍を投げて転ばせそのまま信豊の応援に向かったのである。馬を狙ったのは加藤清正程の腕なら飛んでくる槍の気配を察し防がれてしまうとの読みだ。馬を狙う方が確実と踏んだのである。

慶次郎は風魔小太郎を追っていたが真田兵の姿をしている小太郎を見失ってしまった。なんせ周りには同じような格好の兵ばかりだ。仕方なく木陰で傷の手当てをしていると、服部半蔵配下の忍びがつなぎに現れたので小太郎を見失った事を伝えた。戦闘は激しくなってきているようだ。見ていると信豊本陣にまで敵が迫ってきていた。手当てが終わり立ち上がるとそこに半蔵の指示で伊賀者が20人、慶次郎を助けるようにと現れた。新しい槍を二本持って。


「前田様、ご指示をお願い致します」


「よいところに来てくれた。何か嫌な予感がする。信豊殿を助けるぞ」


そう言って槍をまず一本受け取り走り出した。その後ろを伊賀者が続く。加藤清正が馬上にいて信豊を見つけたようだ。清正の動きが止まり、駆け出した瞬間慶次郎は馬に向かって槍を投げた。槍は馬の腰部分に刺さり馬は痛さのあまりロデオホイップをした。加藤清正は馬から放り出された。


それを見た慶次郎は、すぐに信豊と清正の間にいる敵兵にもう一本の槍を持ちながら側面から突っ込んだ。周りの伊賀者も焙烙玉や刀で敵と戦っている。慶次郎は清正の近くに井伊直政と真田昌幸の姿を見て、清正退治を任せる事にしたのだ。直政は槍を投げたのが慶次郎とわかり、昌幸の応援に参じた。あの爺さんは強い、信頼できる、と。


「おらおらおらおらあ、前田慶次郎見参」


慶次郎と伊賀者は加藤軍の中央に進み暴れまわった。その為、敵の足が止まり、信豊への圧力が減ったのである。真田軍の一部も慶次郎に加勢し一気に盛り返した。真田の一番乗り戦法の成果だ。清正は槍を捨てた。


「うつけ者ばかりよ。これで勝てぬとは。だが、まだ大阪城が残っておる、せいぜい足掻くがよい」


と言って座り込んだ。


「井伊殿、手柄にするがよい。お主の槍さばき見事であった」


「師匠が強いのです。本多忠勝様といいます」


そうか、あの有名な男の弟子か。清正は討ち取られた。また、細川藤孝も捕らえられ首を斬られた。信豊も怪我を負いながらもしのぎきった。結局野戦は武田軍の勝利となったが、犠牲が多い、北条、小山田、原が戦死。信豊、織田信忠は兵の多くを失った。真田軍も信綱、昌幸の兵半数を失っている。


井伊直政は信豊とともに成田、佐竹、里見を順番に呼んで功をねぎらった。佐竹、里見には念押しも兼ねている。不問にする代わりにわかっているだろうな、という脅しも含んで。



信豊、昌幸、直政は慶次郎に礼を言った後、信勝のところへ移動しようとしたが、突然慶次郎が槍を構えた。


「ここにいたか、風魔小太郎。この隙をついて殺るつもりだったのか?」


そこには疲れきったように見える武田兵がいた。ニヤっと笑ったあと、


「全く人の邪魔ばかりしおって。迷惑な御仁だ」


と言って何かを投げつけてきた。慶次郎は槍の柄先でそれを跳ね返した。地面に落ちたそれは爆発し、砂埃が舞い、それが消えた時には小太郎の姿はなかった。


「それがしは伊賀者と小太郎を追います。くれぐれも油断しないように。それと直政、お主には大御所から特命がでているそうだ。そのままここから三千の兵を連れて河口へ向かえ。向こうに田中光吉が待っているから詳しくは光吉から聞け」


と言って再び慶次郎は離れていった。直政は結構疲れていてこれで少し休めるかと思っていたのだが、元気な爺さんを見て唖然としつつも何も言えなかった。バケモンかよ前田慶次郎。直政は昌幸から兵を借りて河口に向かった。


格好つけて立ち去った前田慶次郎だったが、皆の姿が見えなくなったところで座り込んだ。流石にしんどい。直政の前では弱いところを見せたくなかったのである。天下の傾奇者のイメージを維持するのも結構ツライ年になっていた。気持ちを入れ替え伊賀者から『かつよりんZ』を貰い飲んだ後休息をとった。そして小太郎の次の行動を予想した。

伊賀者は凧が残っている事を突き止めすでに壊している。小太郎の最期の狙いは大御所の筈だ。だが、どこで仕掛けてくる?その時、ふと桃の顔が浮かんだ。そういえば桃殿は今どうしているのか?







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