湾岸戦の行方
海では、怒露駿技愛1号艦の船壁を海凛龍王がゆっくりと登っている。指先の斬鉄刃を船壁に突き立て、大きな音を立てながらだ。
甲板にいた甲賀者5名は音のする方を見て驚いた。龍が船をよじ登って来ているのだ、慌てた。その後冷静になり手榴弾 桜花散撃もどきを二発、海凛龍王に向かって投げた。
爆発音がして、やったか、と下を見ると海凛龍王は右手だけ船に突き刺したままゆらゆらとぶら下がっている。
「今だ、あるったけ喰らわせてやる!」
甲賀者は顔を下に向け持っていた手榴弾を全部放り投げようとした。その瞬間を弦は逃さなかった。
左腕を上に向けバルカン砲が火を噴いた。甲賀者3名は弾があたり即死、2名はギリギリ難を逃れたが手にしていた手榴弾に弾があたり爆死した。
そして海凛龍王は甲賀者が最後に投げた手榴弾の爆発の勢いに耐えきれず、海に落下した。
お市は甲板の中央部で縄で縛られていて動けず、猿ぐつわをされていて声も出せない。音に気づいた風魔忍者が一名現れお市を担いで、艦橋へ向かった。
海凛龍王は海に落下した後、再び船壁を登り始めた。光太郎は、
「さすが、ゴーリー、何とも…なくはないか」
「兄者、そこは何ともないぜでは?」
「いや、流石に直撃をくらうとな」
龍の頭部分が半分欠けていた。まあ、頭は飾りだから影響はないのだが。光太郎と弦は船壁を登りきった。そして敵兵がいない事を確認すると、隠していた縄を取り出し海面まで垂らした。いつのまにか、海上に駿河茶畑が集まっている。その縄を使い、続々と海軍兵が船壁を登り始めた。駿河茶畑は各母船に戻っていった。
艦橋では、島左近が傷の手当てをしていた。残る味方は10名、だいぶ削られてしまった。しかも武田海軍の侵入も許しているし、どうやら浸水もしているようだ。外では大きな爆発音がしている。
「これまでか、何か手はないものか?」
そこにお市が担がれて連れられてきた。これで味方は11名、甲板の者は殺られたようだ。船は動かない、再びスクリューを固定されたようだ。艦底から侵入した海軍兵は途中防護壁を作って艦橋手前で抑えている。
「この船を捨てて脱出する。脱出用の船は無いのか?」
「左近様。不思議な駆動の小舟が二艘艦底にありましたがすでに浸水していて近づけません。敵の進入路ですので危険です」
「お市様がいては泳いで逃げる訳にも行くまい」
お市は解放されるかな?と期待したが、左近が続けて、
「といって置いていく訳にもいかん」
と言ったのでがっかりしつつ、どうやってここから逃げ出すかを考えていた。手足は縛られ、武器も無い。といってこのまま大阪城に連れて行かれれば猿に会わなければならない。
お市、左近とも次の行動が決められずにいた数分後、外が再び騒がしくなった。
大阪城から出航した小舟軍団が1号艦に着いたのだ。50艘の船に乗るのは船頭1名に兵2名。ちょうど到着し上を見ると敵兵が縄を使い船に侵入しようとしていた。慌てて下から火縄銃で撃ったが当たらない。それではと、100名の兵が縄を登って敵を追いかけ始めた。小舟の船頭は状況を知らせるために浅野長吉がいる海岸へ舟を向けた。
そこに、再び駿河茶畑が現れた。敵の小舟が1号艦に近づいたのを見て再び出撃したのだ。マシンガン嵐乱連を撃ちまくり、小舟を30艘動けなくした。また、縄を登る兵の半分は撃ち落としたが途中で弾切れとなってしまった。兵の半分は船に侵入した。
武田、豊臣双方50名づつが新たに船に入り込んだ事になる。そこにやっと動けるようになった1隻の楓マーク2が鬱憤を晴らすかのように小舟を全部破壊した。楓マーク2はそのまま進路を海岸に向けた。
海岸に現れた浅野長吉軍を牽制するためだ。
いち早く船に乗り込んだ海凛龍王は機体が大きすぎて艦橋に向かう事が出来なかった。そのため、何とかならないかと船の通路付近を破壊していた。指の代わりに付いている斬鉄の刀、長爪のような斬れ味抜群の刀でバッキバッキと船を壊していく。だがやはり海凛龍王ごと艦橋へ向かうには無理があった。そこに縄を登ってきた海軍兵達が現れた。
海軍兵 「それで中に入るのは無理だろ、俺達が行く。それに下から豊臣兵が上がってくる。ゴーリーはそいつらを頼む」
光太郎、段 「あいあいさー」
海凛龍王は甲板で敵を迎え撃つ事になった。海軍兵達は艦橋へ向かって進み始めた。
その少し前の事、島左近は甲板の様子を見に行かせ、このままだと袋の鼠になると判断して、結論を出した。
「艦底に向かい、敵の船で脱出する。お市様はわしが担ぐ。貴様らは全力で突破だ」
「承知!」
左近達が艦底に向かうとそこには防護壁があり守護していた風魔がいた。壁の向こう側にいる潜水艦の乗組員と戦っていたが、お互いに飛び道具が尽きたところだった。武田海軍兵がならばと防護壁に突っ込もうとした時、壁が艦橋側から倒された。
風魔11名対海軍兵6名、海軍兵はよく戦ったが風魔を3人倒し全滅した。左近はお市を担ぎながら
「急げ、急げよ。早くしないと船が沈む」
左近達は艦底に向かって走っていった。その少し後を外から侵入した海軍兵が追う。甲板では海凛龍王が豊臣兵を一歩も通さぬと暴れまわっている。
1号艦の争いは終盤を迎えていた。
その頃、信勝本陣に100名ほどの集団が突然現れた。数km先で25万もの兵がぶつかってる最中に。そこから1人の将が信勝の前に現れた。
「上様。いや兄上、お久しゅうございます」