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幸村のアイデア

盛信の兵は武器を捨てて投降してきた。盛信が死んだらそうするように言われていたそうだ。


「叔父上は死に場所を探していた。だから一騎打ちに応じたのだ」


信勝は皆に聞こえるように大きな声で独り言を言った。投降してきた兵は泣いていた。

そこに、桃と紅がやっとたどり着いた。


「遅かったか。上様、井伊様が怪我をされています。それと凧を仕掛けたのは風魔の小太郎です」


前方で起きた事の報告を皆にしたその時、


「風魔の小太郎か。やはり出てきたか」


「慶次郎さん、ご存知なのですか?」


桃が驚いて聞いた。慶次郎は利家配下の時に、秀吉の元に怪しい者が出入りしている事に気付いていた。おそらくそれが風魔であろうと。

慶次郎は元々は滝川家の出身で前田家の養子となった過去を持つ。滝川家は代々忍びの家系で風魔の存在は知られていた。北条が弱体化した後、秀吉の動きが変だった。それが風魔の影響でいつか武田とぶつかるのではないかと気にしていたのである。


「何だと。大御所と風魔の小太郎にそんな因縁があると言うのか?」


慶次郎は驚いた。風魔の小太郎は正体不明の化け物と伝えられていた。それを大御所が殺しただと、しかも小太郎が双子で大御所を仇として狙っているとは。只者では無いのは大御所の方か!普通ではないと知ってはいたが、そこまでとは!


「上様。風魔が出てきているとなるとこの先まだまだ色々仕掛けてきますぞ。しかも武田家に恨みを持っているとなると」


「慶次郎よ、仕方あるまい。武田と北条の間の因縁はやっと消えたが、風魔は北条を見限ってまで武田に敵対しておるのだ。それこそ命がけ、いや、お家でもないな、忍びの誇りをかけて背水の陣で挑んでくるだろう。桃、備えを頼む」


「はい。半蔵殿も来ておられます。武田忍び総力を上げてお守り致します」


今回武田の死傷者は300名、残りは700名だ。怪我した者達は半蔵の息のかかった伊賀の寺で治療をする事になった。伊賀から兵を100名追加し、一行は気を失っている井伊直政をおいて近江を通って美濃へ向かっていった。





井伊直政が目覚めるとそこは見知らぬ寺であった。周りには怪我人が横たわっている。


「そうか、置いていかれたか。怪我人は足手まとい、悔しいが仕方あるまい。さて、気を失う前に何かを見たような気がするのだが。うーん、思い出せん」



直政が見た物、それは空高くに浮かぶ気球だった。気球には武田忍びの頭領、茜と蘆名源二郎信繁改め蘆名幸村、直江兼続が乗っていた。


勝頼が動けないため、若手の2人に監視を頼んだのだ。何でこの2人かって?単純に勝頼の好みでしかない。


「直江殿。どうやら五郎盛信とは決着がついたようですな。しかし甲斐紫電もどきに凧を使った空からの攻撃とは。大御所の得意技が盗まれてますな」


「蘆名様。どうやら風魔が出てきたようです。この気球には気づいていないようですが、あまりうろちょろしてると不味そうです。とりあえず収まったようですので下がりましょう」


上杉軍と蘆名軍は岐阜城周辺、長浜城周辺に待機している。岐阜城には武藤昌幸がいて愛話勝(アイハカツ)が設置されている。気球は岐阜城へ向かって進み始めた。幸村は望遠鏡『見えるんです』で辺りを監視している。


「風魔がいましたぞ。走るのが速い速い。どうやら坂本城ではなく伊勢に向かっているようです」


「蘆名様、では坂本城を見学してから戻りませんか?本命が風魔だとすると坂本城の兵は囮かも知れません」


「風魔はまだ気球の存在は知らないはずですからこの場は引くとしましょうか」


万が一の為に攻撃できるよう準備はしてあったが、できればそのまま帰って来いと言われていたので引き上げることにした。


直江兼続は風魔の凧に驚いていた。ああいう空からの攻撃方法もあるのかと。この気球も大した物だが凧の方が無人で凧の数だけ空爆ができる。強いて言えば落ちる場所が定まらないところが欠点だが数打ちゃ当たる作戦でいけば防ぎようがない。


「風魔。恐ろしい敵です。何をすれば凧なんて発想ができるのか?」


「直江殿。大御所に聞きましたが敵の新兵器は風魔だけの技では無いようです。関白秀吉の発想が加えられていると」


「大御所はどうしてそれを?」


「それはわかりません。父上ならご存知かと。岐阜城へ行けば父上がおりますので話を聞けると思いますぞ」


直江兼続は風魔対策を考えていた。前回は出番がなかった、次こそはと思っていたが簡単ではなさそうだ。


「あの凧をどう防ぐ?風上に毎回入れれば良いがそうもいくまい」


「ほう、直江殿でも困る事があるのですな?」


「やめて下され蘆名様、それがしは真田一族のような軍師家系ではないので」


「上杉一の軍師と聞いておりますぞ。凧の対策ですか?それがしならこうしますな」


幸村は自案を述べた。そうか、ならばこうして。景勝は長浜城の戦いでで出番がなかった、次こそはと燃えていたのである。




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