格さん奮闘
勝頼は浜松城へ来ていた。本多忠勝の報告を聞き自分の甘さに後悔していた。
馬場美濃守が死んだか。未来の俺は大丈夫なのか?前世では長篠で死んでたし、それより長生きしてるからまあ平気だな。そういえば本家ではなくて結構遠いってたけどどういう親戚?まあ大丈夫だろ。
本多正信だって!ここで出てくるのか。こりゃしまった。いやあ参ったね、ノーマークだったよ、手強いじゃん。室賀の裏切りも石川数正の反乱もこいつの仕業か。家康の仇ねえ、そういう風に言えば逆らう奴も出てくるって事か。
秀吉の狙い、この先にあるものは何だ?何を狙っている?読み違えるとやばそうだな。
「忠勝、お前は信濃へ行け。室賀に任せてたところを平定してこい。岡崎へは俺が行く。数正を討つ」
「恐れながら大御所。石川数正はそれがしが責任持って討ち果たしたいのですが」
「気持ちはわかるが数正の配下には三河の衆が多い。お主には辛いであろう。それに馬場美濃守は余の大事な家臣だ。余が仇を取る」
秀吉の狙いは、武田の内紛の責任を将軍に取らせる事だろう。先ずは収めるしかないが問題はその先だ。先手を打ちたいが。勝頼は同行してきていた戦国飛行隊の四人に指示を出し、岡崎へ向かった。
さて、室賀と戦っていた格さんだがどうなったのか。
山道を進んできた室賀勢に、先ずは牽制の意味で今でいうロケット花火を打ち上げた。室賀勢の上で
『ヒューーーーーーーーー パン!』と音がして敵兵が足を止めた。空からの攻撃を警戒して何か飛んできたら直ぐに撃ち落とすよう指示がでていた。足を止めて上空を見上げて敵を探した。
その間に格さんと配下の者達はマシンガン天嵐乱連 を3台組み立てて室賀軍に銃口を向けていた。大崩にあった嵐乱連 の改良版で圧縮空気を使って千発は連射が可能だ。敵が上空に目がいってる隙に先ずは1台目が銃弾を乱射した。
『ダダダダダ……………』
連射音とともに兵がバタバタ倒れていく。二百発ほど撃ったところで銃撃を止めて敵の様子をみた。前衛の敵が皆被弾し倒れていた。ただ山の為敵兵は縦長になっていて撃った弾数の割には兵は倒れていない。
室賀勢は弾丸をふせごうと竹襖を前面に出してきて、矢を打ちかけてきた。天嵐乱連 の前には鉄の盾が立てられている。またマシンガンを撃つ兵を守るべく護衛兵が盾を持ち矢を防いだ。
五郎が戻ってきた。
「格さん。信平様は越中へ下がられた。もう甲斐紫電は奇襲以外は使えん。空を警戒されておる」
「木村殿。ご苦労でござった。信平様をよくぞ逃してくれた。室賀相手には甲斐紫電は、そうだ、一緒に来てくれ」
室賀軍が進もうとすると天嵐乱連 が乱射され、進む事ができない。室賀は焦り始めた。こんなところで足止めされている場合ではないのだ。前田軍と信平を挟み撃ちにできる予定だったのだが完全に遅れてしまった。
「もっと前進しろ、何をやっている」
室賀は軍後方にいたが居ても立っても居られず、前の方へ出てきて言った。
「殿。あの連発銃が厄介で進む事ができません」
「矢を打ち、敵の銃撃を止めてそこを一気に進め。数では勝っておるのだ。ここは数で攻めろ」
室賀の指示通りに、矢を一斉に打ちかけた。武田軍は、実は軍といってもここには150名ほどしかいないのだが矢を盾で防いだ。その為銃撃ができなくなった。そこを突いて室賀軍が進軍し始めたその時、
「空だ、空から敵が来たぞ!」
甲斐紫電が3機、室賀軍に向かって飛んできていた。それを見た室賀軍は進軍を止めて甲斐紫電を撃ち墜とそうと慌てて鉄砲隊が準備を始めた。その隙を天嵐乱連 が襲い、またもや前衛が全滅した。
甲斐紫電はそのまま室賀勢の上を飛んで行く。矢が搭乗者に刺さり、落下するかと思いきやそのまま飛んで行く。そう、甲斐紫電に乗っているのは人形であった。最初は人間と人形が乗り、飛び上がり方向を決めた後、人は用意してあった網の上に飛び降り人形だけで飛行させた囮だった。
「空を警戒しておるのなら、それを利用すればいい」
「さすがは格さんだ。まさか囮に使うとは」
「ここで室賀を通すわけにはいかん。木村殿、後はお願い致す。わしは室賀を仕留める。この3人はわしの弟子で八兵衛、善左衛門、権左という。こいつらを大御所へ、さらばだ」
「格さん、待て、何をする気だ?」
格さんは答える事無く横の林に入っていった。
甲斐紫電は室賀軍の中に落下した。乗っているのが人形と気付き室賀は激怒した。
「舐めおってからに。二度と同じ手は食わん。進め」
再び矢を打ち、マシンガンを打ちにくくし、その隙に進軍を始めた。武田軍は矢を防ぎつつ銃を撃ち抵抗したが、室賀勢は前衛が撃たれながらも盾になり進軍を続けた。室賀本人の姿も後方に見えた。
そこに再び一機の甲斐紫電が室賀軍に向かって飛んできた。前衛は前を見ていて気付かない。後方の室賀は前方空から向かってくるのに気付き、囮だとは思ったが目障りなので周りの兵に撃ち落とすよう命令した。
兵の声と天嵐乱連 の連射音で周りがうるさく聴覚は役に立たない、その状態で室賀の視線は前方空の甲斐紫電にむいていた。
「くらえ、誘導爆撃 」
室賀に側面空から何かが襲いかかった。