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大罪抱えし  作者: 硝子
序章・アプリと美女と自由
3/17

「毎日こんな感じなら超嬉しいんだけどなー」


 だらりとソファーの背もたれに体重を預け、紫煙を眺める和徒はポロリと心情を溢すも、取り敢えず明日ものんびりできるかと、若干の喜びを感じながら今日の予定をもう一度頭に浮かべる。あれしてこれしてと考えていると次第に時間が経過していき、啜るようにしか飲めなかったコーヒーは既に冷めてしまい残り僅かとなっていた。


 時間を確認し、ノロノロと準備を始める。

 外着へと着替え、軽く洗い物を済ませ、持っていくものを確認しながらテーブルへと並べ、それが済めば後は出掛けるだけ。

 しかし、残念ながらまだ少し出掛けるには時間が早い。いま出掛けてもまだ目的地に到着した時、店は開店していないだろう。


 そんな予測のもと時間潰しにスマホをいじり、これから行うことに必要だろうと予想される情報を集め、それを行いつつ喫煙を繰り返し僅かな時間をだらりと過ごしていった。


 スマホをいじり、予想外に時間を浪費。既に和徒の住む街は活気が訪れる時間を過ぎ、その事に漸く気が付いた和徒は行動を開始した。


 玄関から出た和徒が行ったのは天気の確認だった。

改善せし不浄の右手スユズ・ラウ・パタユア】しか使っていない和徒はこれから手に入るであろう様々な『力』を想い心を踊らせる。まずは第一歩目。

 そんな浮き立つ気持ちを自覚しつつ【天気予知(サー・プレ・ジオン)】を使った。


「サー・プレ・ジオン」


 数多の人々がその呟きを聞いたところで意味不明な音であろうその呟きを放った瞬間に和徒は理解(・・)した。現在の時刻は午前10時を過ぎ、あと僅かで半分が経過しようとしている。そこから12時間の天気が和徒の頭の中にハッキリと浮かんだ。

 一時間おきの天気。―――――――――なんてものではなく、分刻みどころか秒刻みで12時間の天気を把握した。


「おぉ。すげぇな」


 思わず漏れた心の声は軽い感動を含んでいて、思わず口許が弛む。


 今日の天気は概ね曇り。しかし、昼を少し過ぎた辺りで雨が降る。しかも、そこそこな雨量で傘は必要。直ぐに止む雨ではあったが、いちいち雨宿りをするのも面倒。そう考えた和徒はもう一度玄関のドアを開き、前に使ったとき乾燥のため脱衣所で開き、その場に折り畳んだ後に放置していた折り畳み式の傘を空のリュックに詰め込み、もう一度外へと出る。そうして今度こそ外出をスタートさせた。


天気予知(サー・プレ・ジオン)】。

 これを使用した後の天気は和徒にとって確定事項。もはや和徒にとってこれからの天気は『過去』の出来事の様なもの。何しろ既に『結果』を知っているからこそ感じる不思議な想いだった。


 意気揚々と足取り軽く歩き、愛車であるママチャリに跨がり、目的の店。近場にある全国チェーンのスーパーに間借りする形で営業する『宝くじ売り場』へとたどり着いた。

 和徒の予想。希望。それは、手に入れたスキル【僕(私)が!1番!】が宝くじにて一等を獲得できる。と言うもの。


 しかし、無い頭を使って失敗する要素を考え出した和徒は、少しでも成功する見込みがあるものを考えた。何せ、このスキルには『10分』と言う時間制限があるのだ。その間に結果が出ないものに関しては信用性が殆ど無い。


 この世界には様々なギャンブルが存在する。

 しかし、『10分』の時間で行えるものとなってくると極端に少なくなってしまう。更に、ここは基本的に賭博が禁止されている日本である。ギャンブルの種類はこの国で行う時点でその数は制限される。


 その諸々を考えたときに普段ギャンブルをやらない和徒が考え付いたものは『パチンコ』とスクラッチタイプの『宝くじ』、そして競馬などのレース競技関係のものであった。


 競馬やボートレースといったギャンブル。

 これは和徒にとって未知の世界で、その1つのレースに必要な時間がわからなかった。わからないならば調べれば良い。そして、調べる事が驚くほど簡単になったこの時代。さして時間もかからず疑問は解決し、和徒は『不可能』と判断した。


 調べたところ賭けることが出来るのはレース開始の5分前程度で、レースが始まれば1~2分、どんなに長くとも3~4分で、最大計9分程度。机上の計算で言えばギリギリ間に合うが、それは全てが上手く事が運ばれればの事。


 ギリギリを狙って賭けようとしてもそこには和徒だけが居るわけではない。計算違いの出来事で購入が早すぎたりすれば完全に失敗。運良く開始直前に買うことに成功。しかし、諸事情によりレースの開始が5分遅れるかもしれない。そうなればこれまた失敗。

 しかも、これは一度行ってしまえばやり直しは出来ないとくれば及び腰になっても仕方ないと言える。


 一応解決方法としてネットでの競馬の馬券が買えることまでは調べた和徒であったが、いまいちやり方がわからず、まぁいいかと諦めたりしてるところがこの男クオリティてあった。


 そんなこんなで、和徒が実際に行うことを決めたのは宝くじであった。それもその場で当たりハズレが判断されるスクラッチ。これならば早々問題も起こらないだろうと考えたのであった。


 問題はないと考えた訳だが、最悪の場合がある。

 それは、販売している店頭を選んだ時点で当たりハズレは確定してしまう事。もし、その店頭に最低の当たりしかなければその店で買う限り『一番』はその最低の当たり。この場合は5等の300円が『一番』になってしまう。

 その可能性はそう低くはないだろう。そういう『仕様』のスキルだったと後悔することになる。


 しかし、その一方で素晴らしい可能性も秘めている。

 そういう『仕様』であったとしてもその店にもしかしたら『一等』があるかもしれないし、こんな不可思議な力で行使するのだから強制的に『一等』が当たるかもしれない。


 博打には違いない。


 それは解っていたが、どうしてもワクワクとドキドキが押さえられない和徒であった。


 ◇◆◇◆◇◆


 和徒は焦りながらもトイレの個室で削り終え、そのスクラッチカードを震える手で持ち凝視していた。


 和徒が焦ったのは時間。

 宝くじ売り場でぼそりと呟き、スキル【僕(私)が!1番!】を使用。

 そのまま店頭にてたったの一枚。それだけを購入するために店員に頼んだのだが、店員が取り出したスクラッチのカードは不自然とも言える突風に煽られ2度(・・)も店員の方へ突き返すように舞った。


 2度起こったそれは2度とも店員が取るのを諦める隙間に入り込み、和徒へと別のカードでも良いか?と訪ねる。

 和徒は和徒で何でも良いから早くと店員を急かした。


 3度目に漸く一枚のスクラッチカードを受け取ることに成功し、素早く店頭から離れ、トイレの個室へと駆け込んだ。

 和徒の感覚では最早10分など目前に迫っているかの様に感じた結果の行動であったのだが、ここでは未だに5分も経過していない。はっきり言ってまだ焦るような時間ではなかったのだが、『時間制限』と言うのはその時間を気にすれば気にするほど人はその感覚を狂わされる。


 そんな不確かな感覚に踊らされ行動した和徒は周辺から多少変に思われていたりするが、本人はそれに気づいておらず、周囲も直ぐに忘れ去るだろう。


 一心不乱にトイレの個室へと駆け込んだあとは、これまた一心不乱に小銭を使ってスクラッチカードを削った。


 その結果。


「あ、あたっとる・・・・・・・・・」


 震える手。震える体。震える声。


 今和徒の体中を歓喜が駆け巡っていた。


 当選はスキルの効果を見事に受け―――――――1等。


 三千万円。


 大金を手に入れる切符を手に入れた和徒であった。


 そんな切符を大事にほぼ空であるリュックのチャック付きのサイドポケットへと入れ、しっかりとチャックをする。

 不自然に思われないよう、尚且つ誰にも取られぬように確りとリュックを背負い、浮き足たったまま手も洗うことなくトイレを出ていった。


 一人の青年が手も洗わずに出ていった和徒へ不快な視線を送っていた。


 ◇◆◇◆◇◆


 宝くじは一万円を越えるお金を換金する場合は宝くじ売り場ではなく、銀行で換金しなければならない。


 それを事前にネットでの情報収集にて知っていた和徒は当然ながら銀行へと向かった。


 最大限に警戒しながら換金を行うため銀行を目指し、銀行でなんやかんやとやり取りを行い。

 換金を担当した銀行員の注意を頑なに拒み、全額を現金のまま受け取った。


 そのまま銀行を出ていこうとする和徒を銀行員が必死に宥め、せめてタクシーを呼び、それで帰宅するように言い聞かせる。全く他人である和徒のためにも関わらず親切な銀行員であった。


 家へと帰りついた和徒はすぐに完全脱力。

 玄関でへたり込んでしまう。ただ歩いただけにも関わらずその呼吸は荒々しく、落ち着かせるのに数分を要した。その原因は言わずもがな、リュックに詰め込まれた大金だった。

 和徒は自分のリュックが何時、誰に盗まれるかを常に気にしていた。銀行員にすらもその疑いの疑念を向け、銀行員が気を効かせて呼んだタクシーにも同じく疑いの視線を向けていた。


 タクシーでの移動中、常に運転手を警戒し、正しく自分の家へと向かう道なのかをマップアプリで監視しながらの帰路。


 我が家であるアパートのすぐ下に横付けされたタクシーを降り、どれだけゆっくりと移動しようとも数分もかからない部屋までの間も気が休まらない。


 そんな限界まで気を張り詰めた状態での帰宅。

 その途端に張り詰めた糸が切れるように和徒の精神がダウン。それと同時に脚の力も抜け玄関口にてへたり込んだのであった。


 最後に深く息をゆっくりと吸い、ゆっくりと吐き出し、ノロノロと立ち上がり何時もの如く風呂場へと移動を開始。未だ大金の入ったリュックは背負ったまま。


「ふぅー」


 シャワーを浴び終え、何時もの定位置。ソファーへと沈み混み深々と息を1つ。


 シャワーを浴びながらもリュックの所在が気になり、何時もよりかなりお座なりにシャワーを浴び、そそくさと浴室から出てリュックを視界に納め、中身までも確認して安堵の息を1つ。


 そんな何時もと違うルーチンをこなし、漸くと言って良いくらいに長い警戒を緩めた。


 しかし、問題はまだまだ解決などしていない。


「あーーーーーー。このお金どうしよ?」


 銀行員からの注意。

 口座に預ける様にこんこんと言われたが、和徒の「我が家でこの大金を眺めたい」と言う浅はかな考えによって一蹴したのは良かった。


 テーブルに積み上げた大金を前に言い知れぬ高揚と感動がその身を包んだのだから、文句はない。


 しかし、この先この大金を家に置いたまま外出ができるのか?


 それは無理だ。


 宝くじが当たってからの和徒は、臆病でどうしようもない小心者であった。そんな人物が家に大金を置いておくなどどう考えても無理である。

 しかし、またこの大金を背負って外出し、警戒しながら銀行へと向かうなど先ほど経験した和徒からすればそれはまさに拷問と等しかった。


 だから預けろ。と注意をされたのに。


 そんな声がどこらかともなく聞こえた気がした和徒であった。


 嬉しい大金の困った事情。


 この大金の使い道は主に【ゲッター】でのガチャ。

 その他生活で多少は使うだろうが、割合で言うならば微々たるもの。だったらアプリにPとしてブチコムか?そんな方法があるのか甚だ疑問のある答えを弾き出した彼は徐にスマホを取り出し、【ゲッター】を起動。アイテム一覧を開き、アイテムを取り出すときのイラストをタップ。


 数回使ったとき同様に画面が暗転。

 その画面へ向かって、和徒は右手を動かす。1つの札束を持ったまま。


 ギュルリ。


 音は何も鳴っていない。

 しかし、そんな音が思わず聞こえてきそうな光景と共に和徒が掴んでいた100万円の札束は消え失せてしまった。


 その事態に和徒は固まる。

 何かしらの好転を求めての行動であったのだが、今の出来事は好転なのかどうかもわからなかった。


 取り敢えず『何か』が起こった。

 そのこと事態に驚き、固まってしまった。何せ、和徒自身『何か』が起こるとは思っていなかった。


『何も起こらない』。


 それが和徒の予想だったのだ。

 それ以外の結果は予想していない。


 しかし、起こってしまった出来事は100万円の消失。それも、物理的に理解できないスマホに吸い込まれると言う事態なのだから驚くのも当然である。最近はそのスマホを中心にファンタジーな出来事が起こっていたとしても予想ができないのは当たり前だろう。


 たっぷり数秒。目を点にして固まった和徒は次第に事態を飲み込み。


「・・・・・・はぁ!?」


 驚きの声を上げた。


「え?ちょ!?100万どこ消えた!?」


 慌てふためき急ぎアイテム一覧に戻っていたスマホの画面を確認する。

 名称がリスト表示された画面をスクロールしていく。

 ガチャで手に入れたは良いが、まだ活用していないものの名が並ぶ中【現金100万】の文字を発見。

 思わず漏れ出た安堵の息と共に全身の力が抜けてしまいより一層ソファーに沈み込んだ。


「つまり、このアプリは【アイテムボックス】としても使えるって事か。便利だな」


 アプリの利便性を思い、嬉しそうに口許を緩める。

 しかし、


「要領は『25』。重複したモノも纏められないから、容量としてはかなり少ない。増やす方法は・・・・・・」


 およそ5分程『容量の増加方法』を探してみるものの、そんな項目は無かった。


「これが最大値・・・・・・。便利だけど、これだけしかないんじゃ【アイテムボックス】とは言えない、か。・・・・・もしかしてガチャで増やすのか?・・・・・いや、だったら普通に『アイテムボックス』的な【スキル】か【アイテム】がある方が普通かな?」


【アイテムボックス】と言うには微妙な性能のアプリ内保管庫。しかし、微妙な性能であろうともその性能は現代で言えばかなりのもので、『チート』と言っても過言ではない。


 その事に気付き、ニヤリと笑みを浮かべるその様は、まるでどこぞの悪代官の様である。


 そんな笑みを笑顔に張り付けたまま、取り敢えず【現金100万円】を取りだし、その他の札束と一緒にもう一度リュックへ。そのままリュックをアプリの保管庫に収納する。


 和徒の思惑通り【リュック】が保管庫に追加される。

 自動で纏めてくれないならば、手動で纏めれば良い。と言う理論から行った行動は成功を納めた。


 確認のために一度【リュック】を取り出す。

 その際に新たな機能を確認。重量がそこそこにある現金三千万の入ったリュックであるが、取り出した際、その重さを感じることがなかった。


 またも驚きの機能に嬉しくにやつく頬を直すことなく、床に下ろし、中身が無事なことを確認。

 もう一度持とうとすれば当然普通に重さを感じる。


 保管庫に入れ、再び取り出し、今度は床に置かずに持ったまま時間を計る。


 それで判明したのは、10秒間の間は重さを感じることなく軽々と持つことが出来ると言うことだった。

 10秒とは短く感じるが、取り出すものは予め置く場所を決めていればその10秒で十分な時間だろう。


「今日と言う日は実に素晴らしい!」


 やや芝居がかった口調に身振りを加え、ご満悦の笑い声が部屋に響いた。


 ついでにちょうど帰宅したお隣さんの部屋にも響いていた。

 お隣から出迎えの如く響いてきた笑い声に困惑するお隣さんであった。



 ◇◆◇◆◇◆


「問題はすべてクリアされた!」


 このとき和徒が問題にしたのは主に二つ。


 一つ。

 大金の保管場所。


 これはアプリ内保管庫に入れることができた。そのため問題は解決され、お隣さんの帰宅を出迎える笑い声を響かせた。


 リュックごと纏めての保管で保管枠の圧縮に成功した。これはこのアイテムボックスと言いたくなる保管庫を有効的に使える方法だ。お金だけではなくその他のモノも何かしらに纏めて収納し、保管すれば良い。

 欠点はささやかな手間。それを考えたときに若干面倒に感じ、憂鬱になるのは和徒らしさであった。


 そして、二つ目の問題である課金方法。


 これもすんなりと解決に至った。


 金銭を裸のまま保管するとその時に保管した金額がアイテム名になる。

 それをタップしてみると『課金』の項目が現れ、それを選択すれば呆気なくアイテムは消え去り、変わりに課金項目であるPが増えたのだった。


 多少面倒を感じた課金を済ませ、キッチリ1千万Pに合わせ終わると、ニヤニヤとしながらガチャのページに移行させる。


 一千万P。

 11連ガチャ100回分。


 それだけあればきっと悠々自適な生活が遅れるようになる素敵アイテムが手に入る。

 何の疑いもなくそう信じながら開いたガチャのページ。


 そのページを見て思わず固まる和徒。


 写し出されたページには――――――――


 ≡≡≡≡≡≡≡≡


 1回ガチャする     100,000P


 11回ガチャする    1,000,000P


 ≡≡≡≡≡≡≡≡


 何故かガチャに必要なPが一桁増えていた。


「・・・・・・・は?はぁ!?」


 前回のガチャは間違いなく10万だった。

 それは間違いようがなく、また予めボーナス的なPがあったわけでもない。


 つまるところ初回は完全無料で1回だけガチャを回すことができて、2回目である前回は1回1万、11連で10万。

 今回で3回目。1回10万、11連で100万。


 驚愕の10倍の増加。

 和徒でなくても声をあらげるだろう。


「いやいやいや。・・・・・・・いやいやいやいや。は?バカなの?一気に10倍?・・・・・・いや、でも前回がサービスで90%OFFだっと考えれば・・・・・・いやたけぇよ」


 無理矢理納得しようとするも失敗。

 だが、普通に考えて未だこの世で聞いたこともない品々が手に入るのである。それ相応の代価が必要なのは当然。逆にその代価がいくらギャンブル性があろうとも1回のチャンスが一万円で済むはずがない。

 理知的には和徒もわかっている。しかし、やはり一度あの金額で済んでしまったため、今の正規の値段に憤りを感じるのは器が小さいからか、当然の反応なのかは判断に困るところ。


「はぁーー。いや、まぁ文句を言ったところで仕方ない。『問い合わせ』なんて機能は見た覚えもないし、例えあったところで・・・・・」


 意味はない。


 バクでない限りこの金額が変更されることはない。

 それに、こんな超常のアイテムやら力を排出するアプリがバグ?そんなお粗末な作りはしていないだろうと予想できた。


「仕方ない。幸いにもこのアプリの力で大金を手に入れたんだ。多少還元したところで別に良いや」


 開き直った。と言っても良い発言ではあったが、多少は前向きな思考へと落ち着き、そのまま躊躇いなく画面を叩いた。


 すぐに画面はガチャの演出が始まり、画面を注視する和徒。演出が進み、11連の中での最高レアが判る演出で眉をひそめた。


 現れた光は黒と金色。混ざりきれていない様に見えるその二色は初めて見る色で、最高レアの虹色と違い重い印象を受ける。


「何この色?レア度いくつ???」


 ≡≡≡≡≡≡≡≡



【不屈の精神】

 分類 :スキル

 レア :SR


 諦めない心の強さに応じて身体能力を強化する。


【勝負ダイス】

 分類 :アイテム

 レア :R


 六面のダイス。

 四面が不運を、二面が幸運を表すダイス。

 ダイスをふり、出た面の効果を次の行動に反映させる。


【洗剤要らずのスポンジ】

 分類 :アイテム

 レア :N


 一度擦ればあらゆる汚れ、錆び等を分解する万能スポンジ。

『使用可能時間1時間』


【完璧完全自動洗濯機】

 分類 :アイテム

 レア :SR+


 あらゆる布製品を全くのダメージ無しで洗濯する事が可能。

 洗い、脱水、乾燥に加え、畳みまで完備した究極の洗濯機。


【燃えたろ?】

 分類 :スキル

 レア :R+


 人差し指に小さな火をおこす。左右は意識により切り替わる。


【洗剤要らずのスポンジ】

 分類 :アイテム

 レア :N


 一度擦ればあらゆる汚れ、錆び等を分解する万能スポンジ。

『使用可能時間1時間』


【冥土さん隷属契約書】

 分類 :アイテム

 レア :GR


 冥土さんを喚び隷属させることができる契約書。

 契約書に契約する者の名を記入することで効果が発動する。


【除虫香(小)】

 分類 :アイテム

 レア :N+


 虫類を完全に遮断し、遠ざけるお香。

 その他生物には完全無効。尚、完全無臭。

『使用可能時間:360時間』


【眼球回復薬】

 分類 :アイテム

 レア :N+


 眼球に一滴点すことで眼球機能を回復させる。


【ば~ん!】

 分類 :スキル

 レア :N


 ピストルの形を模したものから弱小の空気の塊を撃つ。


【10,000P】


 ≡≡≡≡≡≡≡≡


 結果。初めて見るレア度は『GR』。


「『GR』?・・・・・good rea ?んーこれはどうなんだ?」


 効果を見ればそれは人一人の人生を縛る危険な匂いのするアイテム。

 内容的には重め。


 そんなアイテムが『good』なレア物なのか?

 疑問を浮かべ、他のGと頭につく単語を思い浮かべる。


 和徒にとってすぐに思い付くのは既に口にしたgood。

 他には――――――――


「・・・・・・・まさか、『god』?神??」


 頭に残る数少ない英単語で出てきたのは『god』。即ち『神』。


 神様級のレア物。

 最高のレアと言えるその響き。しかし、和徒は半信半疑。


 だが、これは和徒が予想したように『god rea』で、その価値は計り知れないものである。


「使えば判るかな?」


 説明を見る限り和徒自身に被害が無さそう。そんな判断のもと躊躇いなくスマホを操作してアイテムを取り出した。


 ≡≡≡≡≡≡≡≡


 契約書


 ①呼び出された者はメイドとして服従する。

 ②呼び出された者は、主人となった者に対する敵対行動の全て、不利益になり得る全ての行動を強制的に封じられる。

 ③この契約は如何なる理由があろうとも、如何なる方法であろうとも破棄することは出来ない。


 以上の項目に不備、不満が無いものとする。


 不備、不満が主従関係において発生した場合は迅速に解決、解消を試み、従事者は主人に報告、相談を行う。


 主人となったものは報告、相談のもと解決、解消の策を決定する。


 隷属者【ケイリシュオン】

 契約者【 】


 ≡≡≡≡≡≡≡≡


 取り出してみれば古めかしいと言える見た目のTHE・契約書。

 書かれた内容は和徒にとってデメリットと言えるものが見当たらず、少しばかり悩んではみたもののさして躊躇うことなく契約者の空欄部分にペンを走らせた。


「今更警戒したところでどうにもーーならん!よし・・・・・・であとはどうすれば良いんだ?」


 既に怪しいアプリを使用していて、課金して、スキルビスケットなる怪しいものを口にして、スキルと言う超常の力まで使っている。遅かれ早かれ何かしらのデメリットが来たとしても不思議ではない。

 そんな考えを持ち、開き直った結果、自らの名前を書き上げた。


 書き上げたは良いが、その後に何をしたら良いのかわからず、首をかしげる。―――――――よりも早く事は起きた。

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