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自分、やる気じゃないんです。本当です。

さて、領地での結婚式も終わり、いよいよ初夜である。

侍女たちに身体を洗われ、白絹の夜着を着せられ、大きな寝台の片隅に

腰かけている。


えええ!今まで、流されるままにうなずいたり、指示された通りに

動いてきたが、どうしたらいいのだろう。

ふむ、伯爵様の指示の通り、動けばいいよね・・・って、すごく高度な技を

要求されたらどうするんだよおぉぉぉ!こちとら、やったことねえっつの。


というか、見知らぬ人となんかするの?えええ、ハードル高い。

みんなすごいよなあ。こういうのもスマートに済ませているんだろうなあ。

変な顔したらどうしよう。というか脱ぐのがイヤすぎる。

夜着のひも、ガッチリ結んでおこうかなあ。そうだ、そうしよう!


うう、ひもが細くてシュルシュルしていて、結びにくい、逆にほどけそうだぞ。


ガチャ!


え、伯爵様が入ってきた。わ、顔初めてよくよく見たわ。

おおう、後ろでひとつに結んでいた栗色の髪をおろしていらっしゃいますね。

ストレートでいいなあ。私はくるくるで、いつも朝、侍女たちがきれいに

直してくれて・・・、その侍女はいない。メイ、私がいなくなってどうしてるのかな。


って、伯爵様は近づいてきて、手を伸ばしてきた~!!ん?


「姫、お気持ちはうれしく思いますが、今はまだ・・・」


見下ろすと夜着のひもがほどけて、胸が見えそう。もちろん夜着の下は

何も身に着けていません。パンツもです。夜パンツを履かないで寝るのなんて

初めてです。


って!お気持ち・・・。チッチッチッ・・・ドカーン!!

わああ~!夜着のひも、早くもほどいてる、やる気まんまんダヨ(ハート)って

受け取られたあ~!な訳ない!ちゃうねん、ちゃうんだって~!!


伯爵様はそっと手を伸ばしてきて、器用にちょうちょ結びにしてくれた。

器用ですね。


恥ずかしさのあまり、硬直していたが、夜着のひも結ぶの器用、結び慣れてる

つまり脱がし慣れてる、やる事たくさんやってる、ガバチョとこないって

ことはアレかあ!

愛人いるってことね。オーケー、オーケー。


そもそもは伯爵様にとっては、仕える主である王からの突然の政略結婚。

しかも、相手は格上の侯爵家令嬢。煙たい相手である。

断ることはできないが、貴族のたしなみとして、正室として迎え入れ、

お飾りとして一応置いておくということか。

愛人いるんだったら、嫡子はその人が産むのかね。お父様みたく男の子生め~

とプレッシャーかけられるよりはいいかも。

あ、なんか気が楽になってきた。ということはご挨拶だけして寝てもいいかな。


高速でそんな考えが流れていき、顔を上げると伯爵様が跪いていた。

びっくりして立ち上がりかけると、そっと手を握られた。

おお!やるんかい!やっちまうのかい!と頭の中で叫ぶと、伯爵様は


「姫、どうぞ無体なまねはいたしません。今宵はお話だけさせていただいても?」


またですよ。こう自分がやる気まんまんみたいじゃないですか~。

恥ずかし~!

でも顔には出ていないようだ。お姉さま達のしつけ、厳しかったからなあ。

上姉さま、鞭がよくお似合いでした。下姉さま、演技だからといいつつ、

いじめる令嬢役、すごかったなあ。最初はおしっこ漏らしそうなくらい

怖かったけど、貴族令嬢らしく薄い表情を保つのができるようになりました。

なんかこう微笑んでいるような、無表情のような、うっすら睥睨するような、ね。


でも貴族令嬢って睥睨するの必要なのかね。ニコニコしてちゃダメなの?と

思った私に、姉さま達は、


「微笑むだけでも、すり寄ってくる者たちは了承と受け取るものよ。油断はダメ」

「私たちは有力貴族。常に利用してやろうとたくらむ者たちがいるもの。

戦場において、心許してはダメよ」


と現場で申し渡された。


その現場って、上姉さまの結婚が決まり、王妃様や王女様、その取り巻きの

ご夫人、ご令嬢が集まるお茶会だったけど。

え、お姉さま達、薄い表情のままですけど?ここも戦場なの?


よくよく見ると、他の方々も完璧な貴族スマイルだった。貴族こえー。

やっぱり、フフフ、オホホの世界はないんだ。痛感しつつ、下を向いたのだった。


なんて事を思い出していると「姫?」と声をかけられた。


いけない、いけない、正直、伯爵様と話すことなぞないと思っていたので、

素にもどっていたが、姫っぽくしないと。


「お話とはなんですの?」


薄い貴族顔を保って、言い放ってしまった。うわ、感じ悪いかも。

あせっていたから。


伯爵様は、くしゃと顔を歪められた。わわ、ごめんよ~。

貴族顔と貴族言葉は連動しちゃうんだよ~ごめんねと思っていると、


「姫、私達は一度お会いしているのですが、覚えていらっしゃいますか?」


なんですと?



睥睨=へいげい 人を睨みつけて威圧することという意味で使っています。

違う言葉のほうがいいかな?と思っていますが、リリアナさんだし。

勿論、リリアナさんには、人をにらみつけるなんぞできていません(笑)。

そうするとどう見られているのでしょうか?次話ご期待!


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