表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せを願って  作者: 宮原叶映
5/24

再会

 俺は、さなから渡された手紙を何度も読み返していた。

 

 俺のことを理解して、心配してくれる心友。遼は、俺のことを何でもお見通しなんだと思った。

 また、そんな人に、出会えたらいいと思う。

 

手紙を渡された日から、数日たったある日のこと。俺は、昔ながらの喫茶店に、行った。


「さな、来たぞ」


「隼兄、いらっしゃいませ!」


 カウンター席に座り、さなと話していた、一人の女性が振り返った。なぜか、驚いた顔をしていた。


「あっ!久しぶり、成瀬君。うちのことを覚えてる?」


「小学校から高校まで、一緒で、同じクラスだった。灰崎(はいざき)みやこ?」


「そう!覚えていてくれたんだ。嬉しいな。最後に、会ったのいつだっけ?」


「最後に、会ったのは高校卒業のときだったな」


「それじゃ、あれから九年たったんだね」


「そうだな。横に、座っていいか?」


「どうぞ。なんだか、懐かしいね」


「あぁ、そうだな。灰崎は、県外の大学だったよな。元気にし

てたのか?」


「うん、元気だったよ。最近こっちに、戻ってきたの。それで、楠木君の実家が昔ながらの喫茶店をしてるのを思い出して、ふたりに会ってみたいなって、思って来てみたっていうわけだよ」


「そうなのか。でも、遼は…」


「うん、知ってるよ。さっき、奥さんに…妹さんに聞いて驚いた

よ。一年前に、肺炎になって、亡くなったんだよね」


「そうだ」


「うちね。後悔してるんだ。だって、楠木君、中学校の卒業から、会ってなかったから。楠木君とも久しぶりに話してみたかったんだ。あっ、でも、一度だけ会ったことがあるな。楠木君が、亡くなる二年前だったかな」


「「えっ」」


 さっきまで、黙って話を聞いていた、さなも驚いた声を出していた。


「すみません。驚いてしまって…」



「大丈夫ですよ。妹さんも、知らなかったんですね」


「妹さんじゃなくて、さなえで、大丈夫ですよ。私より、歳上

なんですから、敬語ものけてください」


「それじゃ、さなえちゃんって、呼ぶね。私のことは、みやこ

でいいよ」


「はい!みやこさん!」

 

 

 うちが、たまたまこっちに帰ってきたときでね。近くにあるスーパーに行ったら、そこにいた楠木君に、思わず声をかけたと、灰崎が前置きをしてから話始めた。



「こんにちは、楠木遼(くすのきりょう)君だよね?」


「はい、楠木です」


「うちのことを覚えてる?」


 楠木君は、最初はいきなりのことで、きょとんとしていた。


「え~と」


「小学校~中学校一緒で、同じクラスだったよ。あとは、学級委員をしていたよ!」


「あっ、灰崎みやこさん?」


「そう!覚えてたんだね。良かった」


「それは、学級委員だからって、過保護の隼咲と一緒に、俺が休んでだ時にプリントとかノートのコピーの準備をしてくれたって聞いたよ。それで、覚えてたんだ」


「なるほどね!」


「それに、感謝してるよ」


「えっ?」


「それは、隼咲が無理しないようにしてくれたんだろう?」


「えっ、バレてた?」


「うん。バレバレだった」


「なんだか、恥ずかしい」


「俺は、よく入院してたから。授業が、どんどん進む。追い付けるように、隼咲は、詳しく書いてくれるんだ。それを一人でしたら大変だし、隼咲は絶対無理をするから。不安だったんだ。そう思ってたら、時々、女の子の字が混じってたんだ。それで、隼咲に聞いてみたら」


『学級委員の灰崎みやこが、学級委員だからって手伝ってくれたんだ。俺は、別に、手伝ってくれなくてもいいと言ったのに、どうしてもって聞かないんだ。それで、時々、手伝ってもらうことにしたんだ』


「って、言ってたよ。隼咲が、気を使わないように、わざと強

気で言って断れにくくしたんだろう?」


「おっしゃる通りで。それは、一旦置いておいて。さっきから、気になってたけど。左手の薬指に光る指輪は、もしかして?」


「そのもしかしてだよ。結婚したんだ!灰崎さんも知ってる人の妹。誰だと思う?」


「えっ?誰だろう?この話の流れからしたら。まさか、成瀬君

の妹さん?」


「正解!実は、子供もいるんだ」


 そう言って、ふたりが写ってる写真を見せてくれた。写真を見せてくれた、楠木君は、とても幸せそうに微笑んでいた。


「とても、かわいい奥さんと息子さんだね」


「そうなんだよ!さなえちゃんは、とても優しくて、かわいい

んだ。叶翔は、今三才で、だんだん言葉を覚えてるだ!その様子がとてもかわいいんだ」


 とても、嬉しそうに話していた。そして、ハッとなって、我に返ったようで顔が真っ赤で、恥ずかしいそうにしていた。咳払いをしてから、


「隼咲は、早く()い人を見つけて結婚したらいいのにね。まだ、独身なんだ。昔から、俺達に過保護で、周りをみてないんだ。誰か、好い人いないかな。隼咲のことを理解してくれる人がいると、思うんだ。俺にも、いたみたいにね」

 


 って、いう感じの話をしたと言って話すのをやめた。


「あれは、そういうことだったのか。でも、遼のやつ、余計なことまで言いやがって…」


「さなえちゃん、大丈夫?」


 さなは、涙を流していた。


「すみません…。嬉しくて。確かに、二年前に遼さんが買い出しから帰ったときに、嬉しそうにしたの。だから、どうしたのって、聞いたら」


『懐かしい人に、会ったんだ』


「それ以外にしか、答えてくれなかったの。だから、物語以外

で、遼さんのことを知れて嬉しくて…」


「物語?」


「後で、説明する」


「うん、分かった。それで、うちが後悔してることっていうのは、別れ際に楠木君と約束してたことなの」

 

 灰崎は、切なそうな顔をしていた。


『灰崎さん、この近くで、昔ながらの喫茶店を営んでいるから。もし、良かったら、来てください。ドリンクをサービスするよ。そして、今度は、隼咲も呼んで三人で話をしましょう!俺の家族も紹介しますから』


「そうね。今日はこのあと用事があるからまたこっちに来たときに、絶対行くね!」


『ありがとうございます。楽しみにしてます!俺も、楽しみにしてる』

 

 灰崎は、そう話をしたあとに、辛そうな顔をした。


「うちは、そのあと忙しくて、なかなかこっちに来れなかった。落ち着いてきて、やっと約束を守れると思ったのに。間に合わなかった。だから、後悔してるんだ」


「そうだったんですね。でも、遼さんは、怒ってないと思います。こうして来てくださったじゃないですか」


「ありがとう。さなえちゃん。楠木君には、会えなかったけど。さなえちゃんと成瀬君に会えて良かった!」


 さなに、言われて、灰崎は、ホッとしていた。そして、俺とさなに、会えたことを喜んでいた。


「もし、良かったら。お仏壇に手を合わせてもいい?楠木君に、約束を守れなかったことと、来たってことを報告したいの」


「はい、どうぞ!遼さんもきっと、喜んでくれていると思います」


 そのときの俺は、何も言えなかった。ただ、涙が零れ落ちるの必死に抑えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ