表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せを願って  作者: 宮原叶映
3/24

手紙

 さなが、立ちあがり、棚に何かを取り出して、それを机においた。


「隼兄、遼さんの遺品を整理してたらね。()()を見つけたの」


 そう言って、さなが、俺に()()を渡した。


「『過保護の心友へ』?」


「うん。遼さんが、隼兄に宛てた手紙だよ」


「えっ?」


「読んで見て」


「さなは、中身を見たのか?」


「見てないよ。遼さんは、私に物語を遺してくれた。立ち直れるようにって。遼さんは、分かってたんじゃないかな。遼さんが、亡くなったら、隼兄が立ち直れてないことを。笑顔が、作られてるのを。遼さんは、隼兄が、過保護って知ってるから。私を心配して、無理して平気なフリをしているんじゃないかって…」


「そんなこと、してないぞ!」


「してるよ!私だって、分かるよ!だから、私と同じように遺してくれたんだよ。立ち直れるようにって。いいから、この手紙を読んで!」

 

 さなは、俺に手紙を無理やり押し付けるようにして、


「買い物してくる…」


 と、言って部屋を出ていった。その瞳には、涙を浮かべていた。

 そのときの俺は、どんな顔をしていたのだろうか。

 


 俺は、封筒から手紙を取り出した。


『過保護の心友へ

 隼咲(しゅんさく)が、これを読んでいる時、俺が死んでいるってことだね。隼咲は、過保護で、いつも俺のことを気遣ってくれる心友だ。

 でも、俺は、隼咲のことを、縛り付けて知るかもしれない。いや、俺は、隼咲の足枷だと思うんだ。隼咲は、必ず俺のことを優先するんだ。そう感じる度に、俺は、隼咲自身を(いたわ)って、欲しいって、思うよ。


 隼咲は、モテるのに、損をしてるよ。隼咲のことを、好きな人は、絶対にいるよ。隼咲のことを理解してくれる人は必ずいるから。隼咲には、見えてなくても、見てくれている人はいるから。それに、結婚して、家族をもつのは、いいよ。とても、暖かいんだ。


 俺が、死んだら、俺のことを忘れて、前に進んでいいんだよ。本当は、忘れて欲しくないけど。隼咲には、それぐらいがちょうどいいかもしれない。


 だから、心配なんだ。

 今の隼咲は、立ち直れてないと、思うんだ。

 偽りの笑顔で、さなえちゃんに気遣って、無理をしてるんじゃないかな?

 こんなこと、いきなり、言われて困るかもしれないけど。

 隼咲は、隼咲自身の人生を歩んでいいんだよ。

 隼咲の人生は、隼咲はだけのものだからね。


 だから、言うよ。

 俺は、もう過去の人間だ。

 だから、過去に縛られずに今を生きろ!

 過去に、いてはいけないんだ!

 過去じゃなく今、ないんだ!

 人生は、今しかないんだ!

 人生は、一度きりなんだよ!

 

 だから、聞くよ。

 今の隼咲は、幸せなのか?

 お願いだ。

 隼咲、今を自分のために生きてくれないか。

                      

                   遼』


 その手紙は、何度も書き直された跡とがあった。

そして、インクが何ヵ所も、にじんでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ