幸せな男と諦めない女
僕は待ち合わせの時間より10分前についた。先輩は5分前に来て、僕を見た瞬間またあの花の咲いたような笑顔になった。
「成田君ごめんね。待った?」
「まだ5分前ですよ。行きましょう。」
僕は桜先輩の手を握りそのまま手をつないだ。先輩はまた赤くなっている。水族館の最寄り駅で待ち合わせたので歩いて5分で着いた。
水族館に着くととりあえず順路に沿って行こうかということになった。
大水槽からゆっくりじっくりまわる。先輩はやっぱり子供っぽくてたまにえらくはしゃぐ。それが愛おしくて僕は強く手を握った。初めて抱く感情に戸惑いながら1日中先輩を目に焼き付けた。お昼は簡単に水族館のカフェでとったので、夜はイタリア料理を予約しておいた。
「成田君ってなんだか慣れてるんだね。」
なんだかとんでもないことを言われた気がする。
「なんですか?僕おかしかったですか?」
「ああ、ううん違うの。ただエスコートが上手だなって。」
「ああ、びっくりした。嫌われたくないんです。」
「でも、無理はしてほしくないな。どんな成田君でも好きだよ。」
「先輩って案外、素直なんですね。」
「成田君ってやっぱり酷くない?」
「先輩、可愛いってことですよ。」
僕は笑ってごまかした。これでごまかされてくれるのだから先輩は大人なのかもしれない。
「先輩のためなら地獄に堕ちても構いませんよ。」
冗談で言ったつもりなのに先輩は今までで1番びっくりした顔をして、ただありがとうとだけ言った。そして黙ったまま、僕のことを真剣な眼差しで見つめている。なぜか口に出てしまった言葉だったが深く先輩の胸に残ったようだった。
「成田君、帰ろうか。」
なんだか、先輩はそわそわとし始め何か言いたげだ。僕は歩きながら、
「先輩、何かありましたか?気になることとか?」
「いや、あの、面倒臭い女って思うかもだけど、なんで私が好きなの?板谷先輩は本当に憧れなの?」
そりゃそうだ僕は桜先輩に板谷さんの相談をしていたのだから。
「先輩、ごめんなさい。つい最近まで相談していたのに、そりゃそう思いますよね。」
「ごめんね。それだけではないんだけど。ちょっとだけ思っちゃって。」
「僕、板谷さんに本当に好きな人を考えなさいって言われた時、桜先輩が浮かんだんです。それに先輩が休みの会社は全然楽しくなくて。午後休んでやろうかと思う程でした。」
「成田君。」
「桜先輩、これからは言葉だけじゃなくてちゃんと行動で表します。好きだということ、守ってあげたいと思っていること。それではだめ?」
「ありがとう。お願い。」
先輩は少しほっとした表情になった。僕が知らない不安になる理由があるようだが、先輩が言ってくれないので仕方なくこれ以上は追求せずただ家に帰った。
桜先輩の家の前に着いた時、先輩はやっと口を開いた。
「私諦めないって決めたの。だから成田君、覚悟しててね。」
そう言った桜先輩はやっぱり可愛い笑顔で僕も絶対に先輩を諦めたくないと思った。
「先輩、僕を幸せにしてくださいね。」
「私は成田君といるだけで幸せよ。」
そう言ったウエディングドレス姿の先輩はとても綺麗で僕はこの笑顔を一生忘れないと思う。この日世界で1番幸せな男になった。
完全に自己満足で書きました。すみません。