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心から好きな人


「あのね、桜と何があったの?」


「えっ?」


「部署の皆気にしてるの。桜はいい子でしょ?あなたに対してだけ優しいわけじゃないの。入社してから皆に優しくていつも周りを気づかってくれてるの。それで部署の子達が、あんなにいつも一緒にいた2人が今は一緒のとこを見ないし。あなた何を聞かれても拒否してるって。しかも質問も教育係の桜ではなくて別の人に聞きに行くでしょ。桜がその都度悲しい笑顔になるって。部署の子達は皆桜が好きなのよ。いい加減にしないとあなた部署を変わることになるわよ。」


 あれは悲しい笑顔だったのか。僕いつも桜先輩に悲しい気持ちにさせていたんだ。それに僕は桜先輩の特別でもなんでもなかった。そう思うとなんだか桜先輩を遠く感じたいつも綺麗だし、しっかりしてるしたまに子供っぽいのは演技なのかな?僕が子供だからあわせてくれているんだろうか。駄目だどんどん自信がなくなる。


「ちょっと話を聞いているの?あなたのせいで桜の仕事に支障がでたらあなたを許さないわ。」


「僕、桜先輩が好きなんです。多分。」


「ええ、そうね分かってた。ちなみに誕生日は来週の月曜日よ。」


 今日は木曜日だから今日を入れて4日しかない。


「板谷さん!今日プレゼント買いに行くのついてきてください!お願いします!」


「嫌よ。あなたが選んでくれたら桜は喜ぶんじゃない?」


「最初のプレゼントから失敗したくないんです。お願いします!」


 そう言って深く頭を下げた。


「分かった。仲直りしなさいよ。」


 その日は板谷さんと相談してネックレスを選んだ。人生で初めて自分で選んだプレゼントだった。

 金曜日、桜先輩は来なかった。休みの連絡が入ったそうだ。桜先輩がいない会社は全然楽しくなくて、見られるだけで癒やされていた事に気付いて桜先輩が好きだと心の中で反芻した。


 土曜日、朝から美術館に出かけた。今まで全く興味がなかったけど仕事のためにと、色んなものを吸収しようと心がけていた。そういえばこのきっかけだって桜先輩だ。昔の彼女が置いていった美術史の教科書を、昼休み適当にめくってたら、


「成田君、勉強して偉いね!努力の人だ。」


 と優しく微笑んでくれた。それから桜先輩に褒めてほしくて、昼休みにインテリアの雑誌をひろげたり博物館に行ったと話したり、その都度笑顔で桜先輩は褒めてくれて、あれ僕もうとっくの昔に好きになってたんだ。そう気付いて少し笑ってしまった。

 美術館をゆっくりまわってお昼はカフェでとった。そのまま映画館へ行き今話題のアクション映画を見に行った。そういえばあのおすすめの映画桜先輩見たのかな?最近桜先輩のことばかり考えているな。

 夜はコンビニで弁当を買い、そのままふと思いついてDVDをレンタルすることにした。いつも行くレンタルショップは品揃えが多くて、新作も揃っている。店内を一通りまわっていると、そこに桜先輩がいた。髪の毛が短くなっていて、化粧も服装も会社とは違ってより一層可愛らしい。僕は嬉しくなって声をかけた。そして失敗した。浮かれていたんだ、金曜日は会えなかったし会社の外で、しかもいつもより気取らない先輩を見て、でもラッキーなんて…。僕のがらじゃない今まで彼女がどれ程着飾ったって興味も沸かなかった僕がラッキーなんて。髪を切ったのを見ただけで。

 桜先輩と別れてからも先輩のあの嬉しそうな声と表情を思い出していた。月曜日に告白しようと決意し僕は早足で家に帰った。


 

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