初恋だから実らない
それから昼休みや、終業後いつも桜先輩は僕に付き合ってくれた。急に言っても相談に乗ってくれた。僕は自分で思うよりも女々しい男で、板谷さんに嫌われたくなくて話す内容を相談することもあった。それでも桜先輩は嫌な顔一つもせず、ずっと聞いてくれた。
「成田君は格好いいから大丈夫だよ。」
「仕事も頑張ってるって前に板谷先輩言ってくれてたよ。良かったね。」
桜先輩はどんな時にも優しくて、時々あの笑顔を見せた。数ヶ月経っても僕は未だにそれがどういう感情なのか分からなかった。そして板谷さんに告白する為の作戦会議が終盤を迎えつつあった。僕は桜先輩にお礼のプレゼントを何か贈ろうと考えた。デパートへきたはいいものの分からず、女性の店員さんに聞いてしまった。僕の悪い癖だ。失敗したくなくて何でも聞いてしまうのだ。結局、ボールペンを包んでもらった。
次の日の昼休みに板谷さんに告白する事を伝えボールペンを渡した。僕は告白するその時まで桜先輩に背中を押してもらったのだった。そしてもうこうして会うことはないのかなとふと寂しくなった。板谷さんは時間通りにきてくれていた。
「板谷さん!」
「成田君どうしたの?」
「ずっと好きでした。面接の時から仕事のできる格好いい人という雰囲気で、部長にも臆せず話されるところとか!いつも絶対にこちらの条件で営業に話を通すところとか!」
「ありがとう。それって憧れの好きね。」
「えっ?」
「だってそれって仕事仲間なら誰にでも言えることじゃない?守ってあげたいとか、甘やかせてあげたいとか。そういう感情はないでしょ?」
「…そう…ですね。」
「それでも嬉しいけど。後、私結婚してるのよ!」
「ああそうなんですか。」
「あなた全然ショック受けてないし。仕事を頑張って私みたいになりなさい。」
「はい!お時間ありがとうございます。」
「ああ後、本当は誰が好きか考えてみなさい。」
そう言って板谷さんは立ち去った。本当に好きな人そう言われて出てきたのは桜先輩だった。気付くと僕は脱力してしゃがんでしまった。どうして今になって気付いてしまったのだろう。好きな人に恋の相談をしてたなんて。もしかして僕の恋って絶望的なんじゃ?好きだと気が付くとまた女々しい僕が出てきて、その後から桜先輩と上手く話すことが出来なくなった。
「成田君、先輩が話をきいてあげようか。」
「先輩!今はすみません。」
僕は最低だ。こんなことが増えてしまった。でも急に話すことが怖くなって、それに今告白しても板谷さんについてあんな相談していたから、ふられたからこっちにきたのねって思われるのも嫌だった。
避け続けること数週間、板谷さんに呼び出しをくらった。