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生首と迷子  作者: 木枯雪
第1章
18/36

18.迷子と半覚醒

周りの怒号で目が覚めた。

目覚めたばかりなのになんだか頭がスッキリしている。

スッとするような匂いがしているからかもしれない。

子供の頃に山登りをしたのを思い出した。


「『マルラ ィシュナ ヘルベル』」


「『マルラ ィシュナ ヘルベル』」


「まだです!お前たちは封印を重ねなさい!『ウヴォラ ボルテ ネイエ』」


「『マルラ ィシュナ ヘルベル』」


…一体何が起きているんだろうか。

目を開けようにも髪が瞼に重なっている感覚があって開けられない。

払いのけようと力を込めても、拘束されているのか手が動かない。


(嘘でしょ、なんで!?)


パニックになって手も足もむちゃくちゃに動かそうとしたのに、全然、動かない。

怖い、なんで、どうして、だれか!


「んんーっ!!!」


声からしてすぐそばに人がいる、そう思って声を張り上げたけど、塞がれた口からはくぐもった声しか出ない。

しばらく叫んだけど拘束は緩まないし、喉が痛くなって咳き込んだ。

でも咳すらまともにできなくて、閉じた目から涙が滲み出た。

体に何かが巻き付いている、何本もの糸のようなものが、びっしりと。

気持ち悪い!気持ち悪い!


『ーーーーー』


不意に両掌の間にある何かがもぞりと動いた。

掌に触れる、毛と冷たく肉感のある…まるで皮膚のような…そう、まるで人間の頭部のようなもの。


「っひ…ーーー!!!」


誰、何!?

なんで私、人間の頭を持ってるの!?

恐怖が身体中を駆け回る。

気持ち悪い!気持ち悪い!

捨ててしまいたいのに腕に巻き付いた何かのせいで手放せない。

嫌だ、だれか、気持ち悪い、助けてーーー!


『ーーーーー』


極力遠ざけようと渾身の力を込める手の中で、また人間の頭部のようなものがもぞりと動いた。

周りからの耳が痛くなるような奇妙な言葉の羅列も相まって、拘束され押さえつけられた腹部から胃液までがせり上がってきた。

するとそんな気配を感じ取ったかのように、ずるりと口を塞いでいた糸のようなものが離れた。


「っ…は……!!?」


突然の解放に驚き喘いだ途端に、大きな掌のようなもので口を押さえ込まれた。


「んんーーーッ!!?」


何これ…何これ!!?

冷たい皮膚の大きな…大人の男の手が、口を塞いで離さない。

しかも口の中に何かが入ってきた。

歪な形の小さいものが、そう、いくつも。

得体の知れないものを口に入れられ、気持ち悪さと恐怖がピークに達する。

舌で押し出し吐き出そうにもまるで機械のように力尽くで押さえ込まれて叶わない。


「んんっ、ンー!!!」


口の中に入っていた何かを舌で潰してしまった。

じゅわりと滲む液体に吐き気と嫌悪が溢れかえりそうになったけど、それは思いのほか甘く、酸っぱく、芳しい香りがして。

ベリーのジュースを思い出す味に唾液が出てきて、果汁が口いっぱいに広がって鼻から吹き出したり溺れそうになって。

つい、飲み込んでしまった。


「ーーー……?あれ?私…」


さっきまでの機械のような力が嘘のように、掌がするりと遠ざかった。

今まで、私、何をしていたんだろう。




生首と迷子 18




するりするりと目や手を拘束していたものが外れて、視界が開ける。

私は目が痛いぐらいの眩い白と金の建物にいた。


『ーーーーー』


「おっと、王さま…?ここは…」


手放しそうになった王さまの生首をしっかりと掴んで胸に引き寄せる。

なんか、手汗がすごい。


『ーーーーー』


「……わぁ…」


王さまの髪が持ち上がって、さらさらと頬を撫でられる。

いつになく優しい髪使いも気になったけど、王さまの表情に目が釘付けになった。

王さまが無表情でなく目を細めて穏やかな顔をしているなんて…初めて見た。


「王さま」


『ーーーーー』


「ふへへ…」


視界いっぱいの王さまは相変わらずの美人な上に本当に生きてるような表情をしていて。

なんだか照れてしまった。

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