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生首と迷子  作者: 木枯雪
第1章
14/36

14.迷子の手遊び

王さまはまた歩き出した。

今度は森で苔むしていた巨大な骨に髪を巻きつけて、蛇になっている。

もちろん髪で骨に肉付けした、鱗の代わりに見事なキューティクルが艶やかに輝く大蛇だ。

しかも頭が巨体に見合わない人間サイズの超美形生首。

そしてまたその背中に髪でくくりつけられて仰向け固定の私。

プラス、ゲットした右腕。

これぞ蛇足、竜頭蛇尾ならぬ…?


「蛇腕に…人頭蛇尾ってか」


乗ってる私には見えないけれど、これって普通の人が見かけたら思わず念仏唱えちゃうレベルで怖いんじゃなかろうか。

みなさーん、違いますよー、私は髪の毛ヘビの背中で日光浴してるんじゃないですよー。

王さまに固定されてるだけですからーぁ。

いつの間にかできてたお腹の傷をこうやってギプスよろしく固定してもらえるのはいいんだけど。


「王さまー。ヒマー」


『ーーーーー』


これで我慢なさい、とばかりに右腕が頭に乗ってきた。

ねえ、なんか雑くない?




生首と迷子 14




視界にはまた木々の葉っぱと空だけ。

変化といえば移動時に上下運動から左右に体が振られるようになったことと、手に触れるものが髪だけから右腕もプラスされたってだけ。

でもこの右腕がなかなかイイ。

骨張った長い指や大きな手のひらを揉んだり手を繋いだりと遊べるし、時々動いて私の頭をもしゃもしゃ撫でてくる。

力加減は下手だけど、スキンシップが結構楽しい。


「王さまの右腕、面白い」


なかなか満足しているのを知っているからか、王さまの生首がこっちにこなくなったけど。

それは寂しいなぁ。


「王さまー王さまー」


右腕を抱え込んだまま王さまを呼ぶとしばらくして仕方なさそうに王さまの生首がずるりと移動してきた。

もちろん無表情のまま。

動物がするように頬と頬をぐりぐり擦り付けて右手で宥めるようにぽんぽん叩いてきた。

完全に子どもor動物扱いだ。

なんとなく王さまの右手を開かせて、手のひらに文字を書いた。


『ーーーーー』


「これね、王さま、って書いたんだよ」


『ーーーーー』


「で、これが私の名前」


『ーーーーー』


王さまが目をぱちくりしてる。

美形能面顔だけどこうしてると可愛い。


「王さまも文字、分かるのかなぁ。おしゃべりできなくても、せめて文通とかできたらいいのに」


王さまの右腕が見つかっても、相変わらず意思疎通ができていない。

それが寂しくて、悲しかった。

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