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生首と迷子  作者: 木枯雪
第1章
10/36

10.迷子と誰か

数日が経ったある日、突然青空か曇り空ばかりが続いた空にワサッと何かが入り込んだ。

ぼんやりと仰向けのまま揺られていたせいで、視界の変化に派手に驚いてしまった。

よくよく落ち着いて見てみればただの木の葉だったのだが、気が緩みっぱなしだったからか驚きすぎて心臓まで痛いぐらいだ。


「え、なに、ここどこ?どこ?」




生首と迷子 10




体を固定されていて空しか見えない。

いや、今は木の葉もだ。

若葉の淡い色、新緑の瑞々しい色、深緑のどっしりとした色、そして枝の茶色。

日の光と木の葉の影が交互にチラチラしてる。

しかも結構長い距離のようだ。

もしかして、王さまってば山にでも入ったのだろうか。

いやいや、体感としてはまだ平地っぽいから林か。


「王さま、ここどこ?」


『ーーーーー』


相変わらず王さまの口は動くのに声はでないし口の動きからなんとなく読み取ることもできない。

慣れたっちゃ慣れたけど……けど、連れられる立場としては説明くらしいてほしいものだ。

花の化精さんは胴を求めてるとかなんとか言ってたけど。

そういえば王さまの今の体って髪でできてるんだよね?

じゃあやっぱり王さまの胴って8頭身モデル体型のやつ?

うわーテンション上がるわー。

でもガチバケモノ体型だったらどうしよう…。

うわーテンション下がるわー。

ああ、花の化精さんにもっと色々通訳してもらっておけばよかったなぁ。

そろそろ考えることも尽きてきたなと思った頃だ。

うわぁ、と間抜けな声が下から聞こえてきた。


「ば、バケモノ!こっち来んなぁ!」


声が、聞こえる。

ちゃんと意味の分かる声だ。

人間だ!


「王さま、王さま!そこに誰かいるの!?」


人間がいる、そのことにテンションが急上昇した。

人間に会うのが久々すぎてテンション上げ上げだ。


「誰か…いんのか?人か!?」


下から問いかけられた。

多分これって私に話しかけてきてる。

わー、人間だ!

普通に聞こえるし会話できてる!

不思議なことも言ってこない!


「私は人ですー!あのー、ここどこですかー?」


「メナンの西の森だ!お前、どこにいる!?」


「王さまの背中の上ですー。ってちょっと王さま少しは止まろうよ!」


王さまは私が誰かさんと会話している間も変わらずマイペースに歩き続けている。

おかげで誰かさんからの声に少しずつ息切れが混ざってきた。

声からして私と同年代の、声変わり終わった男の子っぽいんだけど。

でもメナンってどこ?地名?建物名?


「お前、ちょっと、待ってろ!」


「え?何て?おーい。もしもーし?」


元気いっぱいの声が遠のいていった。

あーあ、せっかく久々に人間と会話できたのになぁ。


「王さまは王さまでガン無視だもんねー」


ちょっとは相手してあげればいいのに、と非難も込めて文句を言うと、まるで宥めるように王さまの髪が伸びてきて私の体をキュッと締め直した。

はいはい、もう文句言わないって。

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