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VOL.99 命の輪
武志は、ずっと後悔していた。
なぜ、あの時、拾ってやらなかったのか。
冬の寒い晩、弱々しく路上に蹲る、痩せこけた仔猫。
その姿を見た時、迷わず連れて帰ればよかった。
誰かが、助けてくれるだろう。
そう思い、後ろ髪を引かれる思いを振り切り、仔猫から目を逸らしてしまった。
翌朝、そのままの姿で冷たくなっている仔猫を見た時、武志の胸は締め付けられ、激しい後悔に苛まれた。
その夜から、毎晩夢を見、うなされるようになった。
枕許に、あの仔猫が座り、悲しそうな目でじっと武志を見ている。
武志は、眠りながらも、呻き声をあげて、激しくもがいた。
その光景を、武志は上から俯瞰している。
一週間も経った頃、武志の頬はげっそりとこけ、別人のようになっていた。
精神的にも参っており、肉体も精神も崩壊寸前だった。
もう駄目だ。明日は、心療内科に行ってみよう。
そう思っての帰り道だった。
この間と同じ場所で、やはり痩せこけた黒い仔猫が蹲っていた。
武志は、迷わず仔猫を連れて帰り、付っきりで看病した。
その甲斐あってか、仔猫はみるみる元気を取戻し、三日も経つと、武志にじゃれつくようになった。
その日から、武志の悪夢は消えた。




