90/440
VOL.90 ある朝の目覚め
「ここは、どこだ」
目覚めた輝幸は戸惑った。
ゆうべ、確か自分の部屋で寝たはずなのに、起きてみると、なんと森の中だった。
森は、霧に包まれており、幻想的な光景を醸し出している。
まるで、絵画の中にいるようだ。
輝幸は、我が身に付けているものに驚いた。
スエットを着て寝ていたはずなのに、なぜか甲冑を着けている。
「若君、お城はもうそこですぞ」
呆然としている輝幸に声が掛けられる。
声のした方を向くと、声の主は、身に数本の矢を突き立てた老武者だった。
「身共はここまででございまする。若君は、はやお城目指して向かいなされ。城には、まだまだ兵力がございまするに、再起を賭けてご一戦のほどを」
途切れ途切れに言うと、老武者は目を閉じた。
輝幸が揺すっても、目覚めることはなかった。
つい昨夜まで、大学生活を謳歌していた自分の身に、一体、なにが起こったというのだろう?
現状を受け入れられない輝幸の耳に、四方から鬨の声が聞こえてきた。
なにがなんだかわからないが、このままここにいては殺られる。
輝幸の本能だけが、輝幸を突き動かした。
わけがわからないながらも、輝幸は立ち上がり、雄叫びを上げながら、老武者が指さした城の方へと、全速力で走っていった。




