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VOL.89 傷心
いつものように、夜が明けた。
だが、俺は、いつものようにとはいかなかった。
ゆうべ、三年も同棲していた彼女が、置手紙だけして、突然出ていってしまったのだ。
手紙には、「もう耐えられません。さようなら」とだけしか書かれていない。
なにが耐えられないのか、俺にはさっぱりわからない。
俺は、なんとか連絡をつけようとした。
このままでは、納得がいかないからだ。
LINEはいつまで経っても未読のままだし、電話にも出ない。
なんなんだ?
腑に落ちる理由があるのなら、俺は納得もできただろうし、諦めもついて、切り替えもできただろう。
しかし、こんな状態では中途半端過ぎて、もやもやのしっぱなしだ。
俺の心は、最大限に傷ついていた。
いろいろ考えてみたが、どんなに考えても、なにが悪かったのか、思い当たることはなにもない。
わけがわからないとは、まさにこのことだ。
考えれば考えるほど、俺の心はずたずたになっていく。
三日も経つと、傷心を通り越して、俺は無性に腹が立ってき、その気持ちが抑えられなくなった。
こんなとき、彼女が居てくれたらとつくづく思う。
俺は、改めて彼女の存在の大きさを知った。
彼女さえいてくれたら、俺の心は満たされるのに。
そう、彼女を殴ったり蹴ったりすれば。




