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VOL.71 なんだかなぁ
「やってられねえ、もう、おまえとはお終いだ」
雅彦が、秋江を前に、憤然とした顔で言う。
「好きにすれば。私は止めはしないわ」
秋江は、涼しい顔をして、雅彦の怒りを受け流した。
「こんだけ、家庭に尽くしてしてきたのに、なんて言い草だ」
雅彦の声が、一段と大きくなった。
「なにが、こんだけよ。あなた、主婦の苦労なんて、これっぽっちもわかっていないくせに」
秋江の顔も、少し怒りを帯びてきた。
「おまえは、外で働く男の苦労なんてわかってないだろう。仕事をしながら、家庭の手伝いをすることが、どんなに大変か。考えたことがあるか」
「そんなことを言うのだったら、もっと稼いできてよ」
秋江も負けじと、大きな声で反論する。
「おい、あれはなんだ?」
休日で、疲れた身体を午睡で癒していた洋介が、隣の庭先から聞こえてくる大きな声で目を覚ますと、妻の信子に尋ねる。
「おままごとよ。まーちゃんのとこに、秋江ちゃんが遊びに来てるの」
何事もないように、信子が答える。
「おままごとねぇ」
日本の将来が案じられた洋介は、なんともやりきれない口調で呟いた。
雅彦と秋絵は、まだ年少組なのだ。




