VOL.7 雲
将太は、小さな頃から、空を見上げるのが好きだった。
空を見上げていると、なにか吸い込まれるような感覚に陥る。
特に、雲が好きだ。
雲は、様々な形をみせてくれる。
形の大きな変化は季節毎だが、同じ季節であっても、毎日同じ形ということはない。
想像力の豊かな将太は、雲を見つめ、いろんなことを頭に描いていた。
食べ物、洋服、動物。
雲を見つめていると、時間が経つのも忘れてしまう。
ともすれば、日が落ちても、雲を眺めていた。
いつも、公園のブランコに揺られながら眺めているので、夜遅くに家に帰って、よく親に怒られたりもした。
それでも将太は、毎日、飽きることなく空を眺め続けた。
この子は、どこかおかしいんじゃないかしら。
将太の、雲への憧れは、親が心配するほどだった。
いつか、あの雲を、この手に掴んでみたい。
いつしか、将太はそう思うようになっていた。
そんな将太に、人生を左右する出来事が起きた。
小学5年生になったとき、初めて、縁日というものに連れていってもらった。
大人になった将太は、テキヤになって、綿飴を売っている。
毎日、雲を作り出し、子供たちにも夢を見させて、幸せな生活を送っている。