VOL.6 希望
利治は、この世に絶望していた。
幼い頃から、一流の大学に通って、一流の会社に入社する。
それが、人生の幸せだと、親に教えられてきた。
幼稚園から塾に通い、テレビもマンガも見させてもらえず、ただ、勉強だけの青春時代を過ごしたお蔭で、超一流の大学に受かり、超一流の企業に就職した。
人生が、バラ色に見えた。
ところが、勉強で詰め込んできた知識が、あまり役立たないということを、利治は就職して間もなく知った。
仕事をする上では、成績の良しあしではなく、頭の回転と機転、それに、人間関係の構築が求められる。
そんなことは、親は教えてくれなかった。
ただ勉強さえしていれば幸せになれると、そう教えられてきたのだ。
もうひとつ、高学歴で仕事ができないと、普通の人以上に馬鹿にされ、疎んじられる。
それも、親は教えてくれなかった。
バラ色の人生が砕け散った利治は、親と会社の当てつけのつもりで、死のうと思った。
どうせ死ぬなら、これまでで出来なかったことを、思う存分やり尽くしてから死のうと思った。
が、これまで、勉強一筋に生きてきた利治は、なにをしてよいかわからなかった。
まずは、それを見つけることだ。
利治の胸に、生きる希望が湧いた。