VOL.43 引き寄せの法則(ハッピー編)
北条は、身も心も疲れ切った様子で、満員電車に揺られていた。
毎日、毎日、家と会社の往復だけで、飲みに行くこともない。
年々給与が下げる一方なので、飲みに行きたくても、金銭的な余裕がないのだ。
北条は、一体なんのために生きているのか、この頃そればかりを考えていた。
今日も、疲れた身体を通勤電車の座席に預けて、家路へと着いていた。
途中で小学生中学年の塾帰りの団体が乗り込んできて、北条の前に固まった。
彼らの話し声が、北条の眠りを遮る。
北条は舌打ちしたい気分で、彼らを見た。
顔はあどけないが、言っていることは大人びている。
テストの成績、中学受験、果ては大学受験や就職のことまで話している。
野球やサッカーやテレビのことなど、子供らしい話はまったく出てこない。
よく見ると、誰もが疲れている顔をし、殆どの子供が分厚い眼鏡をかけている。
こんな小さな頃から、大変だな。
さきほどのイラつきも忘れて、北条は子供達に同情心が湧いた。
こんな子供の頃から、将来を見据えて頑張っているのに、俺は何をやっているんだろう。
ふと、北条の心に疑問が浮かんだ。
もう一度、北条は子供達の顔を見た。
俺たち大人は、こいつらの頑張りを無駄にしないようにしなきゃ。
子供達が、北条の疲れた心に活を入れてくれた。
北条は心の瘧が取れたように、足取り軽くホームに降り立った。




