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20行ショート  作者: 冬月やまと
34/440

VOL.34 歴史

「新撰組副長、土方歳三」

 大音声で吠えて、歳三は馬腹を蹴った。

 刹那、官軍の銃口から、一斉に火花が散った。

 馬上で刀を振りかざしたまま、歳三は息絶えた。

 と、ここまでが小説で有名な話である。

 しかし、事実は小説より奇なりという。

 事実は、歳三の気迫にのまれ、誰も銃を撃つことすらできなかった。

 驚き、慌てふためく官軍を尻目に、歳三は総督府まで迫っていった。

 総督府に詰めていた参謀に、歳三は切りかかった。

 銃を構えていた一人が、歳三の気迫の凄まじさに、銃を取り落とした。

 落ちた衝撃で、銃が暴発した。

 その弾が、運悪く歳三に命中し、歳三は落命した。

 切りかかられた参謀は、腰を抜かしていたという。

 そのことについて、即座に箝口令が敷かれた。

 戊辰戦争終結後、明治政府により、このことは闇に葬られた。

 歳三は斬り込みなどせず、もっと前に流れ弾に当たって死んだことにしてしまった。

 歴史は、時の権力者により、都合の良いように塗り替えられる。

 それが、歴史というものだ。

 だが、少しバツが悪かったのか、真実を書こうとした作者に圧力をかけきれず、今の話で妥協してしまった。


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