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VOL.34 歴史
「新撰組副長、土方歳三」
大音声で吠えて、歳三は馬腹を蹴った。
刹那、官軍の銃口から、一斉に火花が散った。
馬上で刀を振りかざしたまま、歳三は息絶えた。
と、ここまでが小説で有名な話である。
しかし、事実は小説より奇なりという。
事実は、歳三の気迫にのまれ、誰も銃を撃つことすらできなかった。
驚き、慌てふためく官軍を尻目に、歳三は総督府まで迫っていった。
総督府に詰めていた参謀に、歳三は切りかかった。
銃を構えていた一人が、歳三の気迫の凄まじさに、銃を取り落とした。
落ちた衝撃で、銃が暴発した。
その弾が、運悪く歳三に命中し、歳三は落命した。
切りかかられた参謀は、腰を抜かしていたという。
そのことについて、即座に箝口令が敷かれた。
戊辰戦争終結後、明治政府により、このことは闇に葬られた。
歳三は斬り込みなどせず、もっと前に流れ弾に当たって死んだことにしてしまった。
歴史は、時の権力者により、都合の良いように塗り替えられる。
それが、歴史というものだ。
だが、少しバツが悪かったのか、真実を書こうとした作者に圧力をかけきれず、今の話で妥協してしまった。




