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第8記

「全体止まれ!」


「「「はっ!」」」


 ダンジョンの入り口に10人の兵隊がやってきた。隊長らしき人が先頭に立ち、魔法で明かりを灯して中へ進んでいく。




「情報と入り口の場所が少し違っていたようだが…中は情報通り迷路になっているようだな。」


「まったく子供だましもいいところですね、隊長。」


 何度目かの行き止まりにイライラしているみたい。引き返して次の道へ進んでいく。



「霧の部屋か。風魔法で霧を晴らせ!」


「はっ!」


 兵の一人が風魔法を使う。けれど霧は晴れない。


「む。情報より霧が濃いようだな。仕方があるまい、探知魔法で確認しながら進むぞ!」


 隊長が先頭に立って霧の中を進み、霧の中をぐるりと一周する。


「何もない?行き止まりか?…別の道を進むか。」


 そう言って来た道を戻って別の道へと進む。




「草が増えてきたな…。草陰にモンスターが隠れていないか気を付けろ。」


 進む道に草が増えてきたことでモンスターへの警戒を始める。



「塔の中に森林か…。難易度が上がっているのかもしれんな。」


 森になっている部屋を見て隊長がつぶやく。


「やはり成長している塔なのでしょうか。」


「その可能性が高いな。悪魔の魂も大きなものになっているかもしれない。」


 隊長を先頭に森になった部屋の中を進んでいく。けれど先程と同じように何も見つけられずに部屋の入り口に戻ってくる。


「…木の陰に道が隠れているかもしれないな。まずは別の道をすべて確認し、奥へ続く道がなければまた戻ってきて木の陰に道がないか探すとしよう。」


 そう言って先に別の道へ進んでいく。




「…また森の部屋か。」


 別の道を進んだ先で再び森になった部屋に辿り着く。


「マッピングでは前の部屋と同じ部屋の位置になります。」


「なに?木で隔たれていたのか…。」


「いえ。先の探索で通った位置と重なります。木の位置が動いたのではないでしょうか。」


「む。すると植物や土を操るモンスターがいるかもしれんな。皆、十分に気を付けよ!」


 隊長を先頭に再び森となった部屋の中を探索し始める。




「うわああぁぁ…!」


「っ!落とし穴か!」


 後ろを歩いていた3人の兵が落とし穴に落ちていく。そして穴はすぐさま伸びてきた木によって塞がれてしまう。


「くっ!モンスターの仕業か…。探知魔法で見つけられなかったということはモンスターが地面を操ったのだろう。」


「どうしますか、隊長。」


「やむを得ん。この森を焼き払う!炎と煙に気を付けろ!」


 そう言うと残った7人で炎魔法を使い、次々と森を焼き払っていく。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 



「ここは…?」


 穴に落ちてしまった3人の兵が魔法で明かりを灯して辺りを見渡す。周りは先程と同じ森になっている。


「うわっ!?」


「大丈夫か!?」


 兵の1人が大きな矢で吹き飛ばされる。残りの2人がすかさず剣を構えて周囲を警戒する。



「はっ!」


 兵の一人が飛んできた大きな矢を剣で叩きつけながら体を横にずらして躱す。吹き飛ばされていた兵も既に体勢を整えて剣を構えている。


「きたな!」


 木の陰から飛び出てきた人影が少し細身の剣を振るう。狙われた兵はそれを剣で受け止めようとして。


「なっ!?ぐあっ!」


 狙われた兵は剣を吹き飛ばされ、次の一撃で離れた木まで体を吹き飛ばされる。流れるように2人目、3人目と同じように吹き飛ばされる。


「うっ…。」


 最初に吹き飛ばされた兵が起き上がろうとして重い衝撃を受ける。目の前には吹き飛ばした張本人が立っている。鎧は砕け、衝撃を受けた兵はそのまま意識を失った。


「「なっ…!?」」


 それを見ていた残りの兵2人が驚く。そして逃げる間もなくその2人も同じ結末を辿った。




「矢を防がれた、か。」


 転送陣に向かいながらエルちゃんがぽつりとそうつぶやく。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 



「お疲れ、エルちゃん。」


「まだ7人残っているよ、マスター。」


 主の部屋に転送陣で戻ってきたエルちゃんが険しい顔で答える。それはまあ、そうなんだけど…。



「あんなに燃やされたら妖精さん、危ないんじゃないでしょうか…?」


 リュウちゃんが燃える森の部屋を見て心配そうにしている。


「直接攻撃されているわけじゃないから大丈夫だよ。あの部屋、結構広いからね。」


 あの部屋には土が盛られているのだけど、植物は妖精さんが魔法で生み出している。目的は足止め役であり、さっきはうまく兵隊さんを分断してくれてエルちゃんが倒してきたところ。意識を失った兵隊さんは妖精さんの1人が植物を操ってダンジョンの外へ運び出している。残り2人の妖精さんは燃え盛る森の中で残る7人の兵を足止めしている。



「火力が強すぎるねぇ。木の再生が間に合ってないよ。」


「これ以上の分断は難しそうだ。マスター、サキュとシバを連れて倒してくる。」


「わ、わたしもいきます!」


「リュウちゃんは大きいからねぇ。いい的になっちゃうかなー。」


「そういうこと。じゃあ行ってくるよ、マスター。」


「わかった。気を付けてね。」


 私が見送る中、エルちゃんとサキュちゃん、そしてシバが転送陣で移動する。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 



「意外と広いようですね、隊長。」


「ああ。だが、だいぶ開けてきたようだな。」


 兵たちが周りの木をあっという間に灰に変えて行く。



「うっ!?」


「ガルルルッ!!」


「っ!モンスターが出たぞ!」


 シバが兵の1人の右腕に噛み付く。既に3m以上ある体になったシバは軽々とその兵を振り回して遠くに飛ばす。


 そのシバの突撃と少しタイミングをずらしてエルちゃんとサキュちゃんが突撃する。エルちゃんが剣を横に振り、それを脇腹に受けた兵が砕けた鎧をその場に残して吹き飛んでいく。



 サキュちゃんは隊長に近寄り、右手に闇を纏って殴り掛かる。隊長はそれを剣で受け止めて躱し、すぐさま反撃の一撃を繰り出す。


「はああああ!」


 隊長の放った一撃がサキュちゃんの右脇腹にめり込む。


「いったーい!」


 そう言ってサキュちゃんはいまだに闇を纏まっている右手で隊長の手首を掴もうとする。けれど隊長はすぐさま剣から手を離してサキュちゃんと距離を取る。


「痛たた。」


 サキュちゃんがわざとらしく痛がりながら右脇腹にめり込んだ剣を手に取って構える。すると剣が闇を纏う。


「ちっ!フレイムプリズン!」


 隊長が両手を前に出して魔法を使う。両手の先から炎が飛び出してサキュちゃんを囲むように広がる。


「燃え尽きろ、マグマボール!」


 今度は両手の先から溶岩のような丸い塊が現れ、グツグツと音を立てながらサキュちゃんに向かって飛んでいく。



 狙われているサキュちゃんはと言うと。



「あたしの綺麗な肌が焼けちゃうじゃんかー。」


 炎の囲いをものともせずに隊長に向かって歩き進み、溶岩の塊も真正面から受ける。それでも歩みを止めることなく進む。


「ばかな…!?」


 呆気に取られる隊長の背後からエルちゃんが強烈な一撃を入れる。


「ぐはあっ!」


「隊長っ!?」


 残っていた兵が叫ぶも虚しく、隊長はその場に倒れて意識を失う。その後、残った兵も意識を失わせて全員ダンジョンの外へ運び出す。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 



********


サキュ

レベル:1

HP:25556 / 30000


********


「ね?結構ダメージ受けてるでしょ?」


「随分残ってるように思うけど…。」


「いやいや!?あの剣の1撃と炎魔法を2発受けただけだからね、マスター!」


 サキュちゃんが本当は痛かったんだって訴えてくる。余裕があるように見せかけて油断を誘ったんだって。別に避けて余裕を見せてもいいんじゃないかな。


「あまり無理をするものではないよ、サキュ。ボクたちの中では一番強いけど今回は相手が強かったんだから。」


「クゥウン…。」


 シバが心配そうにサキュに顔を寄せる。



 …私だっていつものがなければ心配してあげなくもないんだからね!




 MP枯渇でサキュちゃんは強化しきれていません。ちなみにサキュちゃんは一定レベル以上になって進化したので、レベル1になっています。

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