第15記
「ふふ〜ん♪ 綺麗にしましょうね〜。」
リュウちゃんがお風呂で子供たちを洗ってあげている。裸になってるからヴァイスには席を外してっもらってるよ!
子供たちは主の部屋とは繋がっていない別の部屋に入ってもらっている。一応、私の身の安全のために。移動は転送陣で制限を掛けているので子供たちがこちらに来ることは出来ないようになってる。
リュウちゃんの要請で子供たちの部屋にお風呂を作ったわけだけど…リュウちゃんが体を洗ってあげに行ったらお腹すいたって言うもんだから先に食事を作ってあげたんだ。ダンジョンコアで、ね。
パンだけじゃどうかと思って肉と野菜とって考えたらハンバーガーが出来上がっちゃった。すごく美味しそうに食べてたけどまずいと思うんだよね。お腹すいてたからなのかな…。
「美味しそうだねぇ。」
「実際はまずいと思うよ。サキュちゃん。」
「あ、いやそっちの意味じゃなくてね?マスター。」
「どういうこと?」
「それ以上は聞くな。」
「あ、ヴァイス…って、わあああああ!?まだリュウちゃん裸だから!!」
「…そのディスプレイだけ別の方向に向けるなり別の場所に設置するなりしてくれ。」
「あ、そっか。」
「なぜ目を閉じてるんだい?ヴァイス。」
リュウちゃんの裸を見ないためだよっ、エルちゃん!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「第2回家族会議です!あの子たちはどうしましょう?」
「守りに使うんじゃないのかい?マスター。」
「いや、さすがにまだ幼すぎるかなって思って…。」
「あ、でも大きい子は結構強そうでしたよ?」
「そうなの?リュウちゃん。」
「髪を乾かしたりするのに普通に魔法使ってましたし、ファイアボールとかも使えるみたいです。」
「へぇ…。あんなに幼くても使えるんだ。ファイアボールってアイオス君並みじゃないよね?」
「まだ見てないので分からないですけど、あれはないと思います。」
なんかアイオス君に厳しくないかな?リュウちゃん。
「じゃあ、まずは子供たちの実力を見てみよっか?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ファイアボール!」
ある男の子がサッカーボールくらいの大きさの火の玉を作り出して、広い部屋に的用として作り出したカカシを炎に包み込む。…私より強くない?
「エアステップ!」
ある女の子が足元に風を巻き上げたかと思うと物凄い勢いで横に移動した。風を利用した高速移動の魔法みたい。
「あいすふぃーると!」
まだ言葉もたどたどしい小さな女の子がカカシの体をところどころ凍らせる。こんなちっちゃな子まで魔法を…でも私よりちょっと威力弱いね、ふふ♪
「わぁ!みなさん強いんですね!」
「まあな!リュウ姉ちゃんより強いかもしれないぜ!」
「そんなことないよ!リュウお姉ちゃんはきっとすっごく強いんだよ!」
やんちゃそうな男の子が自慢げに答えるとまじめそうな女の子がリュウちゃんの方が強いと主張する。
あらあら、喧嘩しだしちゃった。
「わ、分かりました!わたしも実力をみせますから落ち着いてください!」
リュウちゃんがそう言うとカカシに向かって口から激しい炎を吐き出す。カカシどころか部屋を包み込めそうな炎が広がり、カカシは見るも無残に灰となってしまった。…人の姿でもブレス使うんだ。
あ、泣き出した子が居る。
「え?ど、どうしたんですか?」
「ごめん、俺が間違ってた…。」
「ほら言ったでしょ!」
喧嘩してたあの子たちは大丈夫そうだけど他の子は怯えてる子が多いなぁ。リュウちゃん、もうちょっと抑えめで良かったんじゃないかな…。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はい、実戦投入しましょう!」
「いやー微妙じゃない?魔法は確かにそれなりの威力かもしれないけどさ。動きが全体的に鈍すぎると思うんだよね。」
「鍛えれば何とかなるだろう。」
「私もヴァイスに教えてもらって魔法使えるようになったしね!ね、ヴァイス?」
「あまりうまくはならなかったがな。」
しょぼーん。
「じゃ、じゃあわたしあの子たちの面倒みます。」
「リュウちゃん一人に任せるわけにはいかないよ。サキュちゃん、エルちゃん、手伝ってあげて?」
「喜んで!マスター!ふへへ♪」
「りょうかい、マスター。」
「ワンワンッ!」
「うん?シバも手伝ってくれるの?」
「ワンッ!」
「分かった!じゃあシバもよろしくね!」
「…サキュ、おまえは調子に乗りすぎるな。場合によっては鉄槌を下すことになる。」
「あ、あたし何か怒らせちゃった、かな?」
「アヤのためだ。」
「あー…はい。気を付けます…。」
「サキュがここまで大人しくなるなんて驚いたな。」
「いやいやエルさんや。ヴァイスには逆らっちゃいけないよ。エルだってヴァイスの実力はなんとなく分かるでしょ?」
「ヴァイスの戦ってるところって見たことあったかな?サキュは見たことあるのかい?」
「いやいやいや!?感覚的に分かるっしょ!?魔力量とか桁違いどころの話じゃないじゃん!?」
へぇ、そんなに強いんだ。さすがヴァイス!
それにしてもサキュちゃんは分かって、エルちゃんは分からないんだ?
とりあえず子供たちを鍛えてどれくらい活躍できるか様子見かな〜。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「最近すっかり寂れてきちまったなぁ。」
「台座も消えたまま復活してないみたいだしね。」
だいぶ数が減ってきたもののたまにこうやって冒険者が来ることがある。光水晶が出現してないか確認しに来てるみたい。
「しっかしこう道が複雑だと探索も大変だぜ。」
「どこに台座が現れるか分からないのだから仕方がないよ。」
あー、こういう何気ない通路とかにエクリプサーを設置するのも…ないか〜。一度分かっちゃえば次から迷わないもんね。
「うわっ!?なんだぁ!?」
「あっ!腰のナイフ取られてるよ!」
「あ?うおっ!?ほんとにねぇぞ!」
「くっ!取り返そう!」
黒いローブに黒い仮面の子供がうまく持ち物を盗めたみたい。
「ぬあっ!?」
「どうしたの!?って今度は剣を取られたの!?」
「他にもいやがったか!凍りつきやがれ!」
別の同じ格好をした子供が今度は冒険者が背中に持っていた剣を盗む。そしてそれに気付いた冒険者が氷魔法を使ってきた。
「エアステップ!」
狙われた子供がすかさず風魔法を使って冒険者たちから離れる。そしてそのまま近くにある転送陣に入って自分たちの部屋に帰っていく。
今日の戦利品はナイフと剣かー。…別に使い道ないんだけどね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うむうむ。地味すぎじゃないかなー?マスター。」
「微妙だと思う。マスター。」
「あ、あの子たちもあれで頑張ってますから。」
「うーん。でもエルちゃんが武器壊すのと同じわけだから結構効果的なんじゃないかな。」
「そうだな。常に物を盗まれることを警戒しなければならなくなるだけでも効果があるといえるだろう。」
「ほら、ヴァイスもこう言ってるよ!」
「ま、そういうことなら引き続き鍛えてあげよっかなー。たぶん何人かは攻撃もかなりの威力出せそうなんだよねぇ。」
「…そういうことならボクはお役御免でいいかな。」
「エルさん、子供苦手そうでしたしね。」
「ほほー。エルちゃんは子供苦手なんだ?」
「べっ、別にそういうわけではない…よ。」
「顔そむけちゃってー。まぁ別に無理しなくていいよ、エルちゃん。誰にだって得意不得意ってあるわけだしね?」
「うぅ…。マスターがボクをいじめる。」
「よしよし〜♪ あたしの胸を貸してあげようじゃないかー。」
「サキュ、胸ないじゃないか。」
ごきっ。
「あああああ!?エルちゃん!?首!?直角に曲がってるー!?」
「わわわっ!さ、サキュさん!落ち着いて、離してあげてください〜〜!!」
「あははー。なんのことかなー。」
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エル
レベル:13
HP:17535 / 22400
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うわっ!?一撃で5000も減ってるよ!?