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ネス・レギール ー制御不能の魔導士ー  作者: 斎木リコ


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16/42

四-五 現場 二

 ぱちん、ころん、ぱちん、ころん。先程からネスが奏でている規則正しい音は、彼女の周囲に響いていた。気まずい雰囲気から目を反らす意味も含めて、ネスは単純作業に勤しんでいる。

 村の結界付近でもまだ動きはないようで、後方のこちらには何の指示も来ていない。ニアとキーリアも暇そうだ。

「さっきからずーっとやってるわね、それ。何なの?」

 ずっとこちらを見ていたキーリアに問われ、ネスは正直に答えた。

「あ、はい。魔力を抽出して結晶化しているんです。レガさんから、なるべく集めてほしいって言われてていて」

 例の結晶を作る装置は制服に取り付けっぱなしだ。結晶は装置から外さない限り消える事はないし、新しい結晶が作られる事もない。

 なので結晶化が終わったものから順次装置から外して袋に入れているのだ。その外す音と袋に入れた結晶のたてる音が、先程の音の正体だった。

「その手袋は?」

「結晶に直接触れると吸収してしまうので、その防止用です」

「ふーん」

 魔力遮断布の手袋と袋も、常時持ち歩いている。袋の中には取り外した魔力結晶がごろごろと入っていて、そろそろ新しい袋を用意した方がいいくらいにはたまっている。

「その結晶、出来上がるのが速いのね」

 ニアも興味津々といった様子で、ネスの制服に取り付けた結晶化装置を眺めている。たった今外した箇所も、既に結晶化した魔力で半分が埋まっていた。

 他の人の魔力で結晶を作る所を見た事がないので、ネスにはこれが速いか遅いかの違いがわからない。ニアはどこかで見た事があるのだろうか。

 それを聞く前に、キーリアの疑問が耳に入った。

「レガさんは、それを集めてどうしようっていうのかね?」

「さあ……教えてくれなかったので、わかりません」

 集めるように言われはしたが、何に使うかは聞いていないのだ。もっとも、聞いたところで内容を理解出来るとも思わないが。

 ――ああ、でもアイドーニさんがいれば、丁寧に解説してくれるかも。

 戻ったら渡すついでに何に使うか聞いてみよう。それまではちゃんと結晶を作って集めておかなくては。キーリアとニアとのおしゃべりの間も、手を止めずに結晶を集めるネスだった。


 軽妙な音を立てながらも、ネスはキーリア、ニアと他愛もないおしゃべりに興じていた。そこにやたらと尖った声が乱入してくる。

「ちょっと、そんなところで無駄なおしゃべりするの、やめてくれる? うるさいんだけど」

 声の方を見ると、ジュンゲル班の女性班員が目をつり上げてこちらを見ている。そんなに大声で喋っていたつもりはないのだが、何かが気に障ったらしい。

 最初に注意してきた女性班員とは別の女性班員も、ここぞとばかりに文句を言い出す。

「掃きだめは掃きだめらしく、もっと端の方に行ってほしいわね」

「目障りよねえ」

「うちの班長持って行っちゃって図々しい」

 掃きだめとは、ドミナード班の事を言っているのだろうか。ネスはそっとニアとキーリアの様子を窺うが、彼女達の表情は固い。

 彼女達の行動はジュンゲル班長に心酔している結果なのだろうが、お門違いな八つ当たりはやめてほしいものだ。

 ジュンゲル班長がドミナード班と行動を共にしたのは、本人の意向が大きい。多分、お気に入りだという三馬鹿と一緒に道中を楽しみたかったのだろう。

 ――あれのどこが楽しいのかさっぱりだけど。

 車の中でも列車の中でも、あの四人は笑うジュンゲル班長と吠える三馬鹿という図式で、正直何故ジュンゲル班長があれだけ笑っていたのかネスには理解出来ないでいた。

 もっとも、理解出来ずとも制服の件で恨みがある三馬鹿が嫌な思いをするのなら、それはそれでいいという暗い思いがあるのだが。

 それよりも、今は目の前の事だ。いくら八つ当たりとはいえ、他班の人間にこうもあからさまな嫌みを言うなど、いいのだろうか。

 どうすればいいのか、とニア達を見れば、キーリアが既に臨戦態勢だった。彼女はふっと鼻で笑うと、いかにもあざ笑うという表現がぴったりの顔で言い放つ。

「あらあ、自分とこの班長に声もかけてもらえない雑魚が何かわめいているわよ、ニア」

 あくまで隣に立つニアに対して言った風を装っているが、目線はあちらの女性班員に向けられていた。

「よしなさいよ、キーリア。ジュンゲル班はうちと違って大所帯なんだから」

「そうよねえ、雑魚も数揃えればそれなりに使い道もあるものねえ」

 臨戦態勢なのはキーリアだけかと思ったら、いつもの微笑みのままニアもしっかり応戦している。彼女も腹に据えかねたらしい。

 まさか言い返されると思っていなかったのか、ジュンゲル班の女性班員達はわなわなと震えている。怒りでか羞恥でか、顔も真っ赤だ。

「あ、あんた達ねえ!」

「何かしら? 言っておくけど、先に喧嘩売ってきたのはそっちだからね」

 ジュンゲル班の女性班員に対して、キーリアは負けていない。

「掃きだめを掃きだめと呼んで何が悪いのよ! 本当の事じゃない!」

「本当の事なら何を言ってもいいんだ? じゃああんた達が一山いくらの雑魚だっていうのも本当じゃない」

「何ですってえ!?」

 ネスの内心は、どうしてこうなったんだろうという疑問で一杯だった。興奮している双方を止める手立ては、新人に毛が生えた程度のネスにある訳がない。

 この場でキーリアを止められるのはニアだけだろうが、彼女も積極的に参加している訳ではないが、この言い争いを止めるつもりはないらしい。

 そんな場に、雷のような怒号が響いた。

「そこ! 何を遊んでいる! 仕事中だぞ!!」

 ドミナード班長である。さすがのキーリアも班長に怒られてしまっては、これ以上無意味な口喧嘩を続ける気にもなれないらしい。小さく「はーい」と言って対峙していた女性班員に背を向けた。

 女性班員も、他班とはいえ班長に怒られたのがこたえたのか、悔しそうな表情をしているが口は噤んでいる。

 班長という存在は、どちらの班にとっても大きいようだ。

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