始
―― 推 定 A 値 、4 の オ キ ュ ロ フ ィ リ ア が
現 在 西 区 を 逃 走 中 .
近 辺 に い る 者 は
全 員 確 保 に 迎 え .
繰り返す
推 定 A 値 、4 の … …
綺麗な色すら生み出せない、この汚く滲んだ灰色の世界は、僕にとって退屈で平凡で、息をするのすら飽きてしまう様な、迚もツマラナイ世界だった。 男ウケを狙ったのか、やけに濃ゆいメイクをした赤リップが目立つ女性も、派手なアイシャドウで眼力の強い女性も、ピアスホールを拡張した男性も、この世界では何の変哲もない只の灰色。
『 やあ、少年。 』
僕はそれらを無心に見詰めながら、特に何を思う事もなく自室の部屋の窓枠に足を掛ける。滲んだ灰色の中の一色が消えるだけ、別になんてことは無い。 パレットに出された絵の具が、水で流されるのと同じ事なんだから。
『 自殺でもする心算( つもり )かい ? …… 嗚呼、全く勿体無いったら。 そんなに素敵な眼を持っているのに、死んで開く事をやめるなんて、見過ごせないねえ。 』
背後から肩に手を置かれ、初めて "彼" の存在に気付いた。 心地よく耳に残る声。 その声に釣られて、窓から乗り出していた身体を引っ込める。 ゆっくり後ろを振り向けば
『 あ …… 綺麗な色 』
全てが灰色に見えていたこの世界で、唯一、色を見た気がした。 爛々と輝く黄金色の瞳は、今まで寂しく孤独な色を見て来た僕には、眩し過ぎて、それでいて羨ましくて。 目を奪われる、というのはこの事だろうと言わんばかりに、目を離せずにいた。
『 嗚呼 …… 少年も "僕達" と一緒か。 おいで、どうせ死ぬ予定しか無いんだろう ? 君が欲しているモノ、きっと見せてあげられると思うよ。 さあ、行こうか。 』
少しだけ、もう少しだけ
生きてみても良いと思った。