オソロシ沼のおそろし様第九話
早速、優は村へ戻り村長の勤治郎の元を訪ねた。
『村長…おそろし様は快く承知してくれたぞ。』
『なんと!?おそろし様は神様じゃのに、我らに水の心配迄してくれるのか?』
『村長…心配してくれるんじゃねぇ…
村のみんなが喜ぶ顔が見たいからだと…』
『おそろし様はなんと有難い神様じゃ…
早速棟上げで隣村からお祝いで貰った酒の四斗樽を村の入り口に運ぶように
若い衆に優よ伝えておくれ…』
優はこれでまた一つ村の役にたてる。とニコリと笑い覚束ない足取りで言伝てを伝えに行った。
若い衆の留吉と吾作は、漁で使った網を手入れしていた。
そこへ覚束ない足取りで優がやって来た。
留吉が、
『優…港の側に来てはなんねぇ。
お前は目が見えぬ。
もし間違えて海にでも落っこちでもしたら…
お前の父ちゃんに顔向けが出来ねぇ。』
『留吉っつぁん…心配掛けて済まない。
でも…おそろし様が山の水を汲んでくれるって言うから…
四斗樽を村の入り口に置いておいてくれんか?』
留吉と吾作は気持ちよく『『わかった。わかったから港には近づくなよ。
良いな…優…』
と言い残すと二人は網の手入れを放り出し
上棟式が終わった家の空の四斗樽を担いで村の入り口に運んでくれた。