オソロシ沼のおそろし様第五話
次の日の朝…
今日も、オソロシ沼から村を見下ろしていた。
なんと!!
優が今日もオソロシ沼に登ってくる。
見えぬ目で、足元を探るように、山道を登ってくる。
おそろし様は立ち上がり、優の元に駆け寄った。
『優?今日もオソロシ沼に来たのか?
そうか…そうか…
今日もワシを罵りに来てくれたのか?
ワシは優に罵られれば少しは心が晴れる。
今日もオソロシ沼へ来てくれて有り難う。』
『おそろし様は、オレに罵られれば、心が晴れるのか?
ならば罵ってなどやらん…じゃが…オレはこの通り目が見えん。
村の復興には、只の役たたずだ。
手伝い処か人の手を借りねばならぬ。
日が沈むまで…
オレはジッとしとかねばならん…
そこで…村長の勤治郎が、オレはおそろし様の姿は見えない。
だから…
おそろし様との連絡係を、頼まれた。
ほれ…これは…おそろし様へのお供え物だ…』
と優が風呂敷に包まれたお供え物をおそろし様の目の前に差し出した。
『優よ…ワシは何にも欲しくない。
ただ…村人が無事なら、コツコツと暮らして行けるならそれだけで良い。』
『それじゃオレが困る。
折角村の為に何か出来ると喜んだのに、またオレを役たたずに戻すつもりか?』
『とんでもねぇ!!
優の仕事をワシが取り上げる訳はねぇ!!
有り難く頂く!!』
『そっか?なら良い。
オソロシ沼の畔まで行け
して…有り難く食べろ。』
二人はオソロシ沼の畔で
風呂敷を開いた。
中身は竹皮にくるまれたお結びだった。
津波に襲われてまだ間がないこの時に、お結びとは、村人の感謝の程が伺える。
おそろし様は三つあるお結びの内ひとつを手に取り、残りを優に手渡した。
明日もお楽しみに