オソロシ沼のおそろし様第三話
おそろし様は少女に何度も、何度も許しを請います。決して許される事ではないとわかっているのに
何度も許しを請います。
何故に少女はおそろし様に詰め寄るのか?…
少女は、覚束ない足取りでオソロシ沼の所までやって来た。
そして…オソロシ沼の向こうに向かって
『おそろし様!!
なして、おそろし様は、オレのおっとうを石に変えてしまっただ!!
確かにおそろし様は村を救ってくれた!!
でも…なして、オレのおっとうだけが石にならなければならんのだ!!
オレはどうにも納得が行かねぇ!!
なして!!オレのおっとうは、石にならなければいけなかったのか?
教えてくれ!!』と叫んだ。
オソロシ沼の奥の藪がカサカサと音を立て、小さな小さな声で、おそろし様の声がする。
あまりにも声が小さいので少女は藪へ近寄って行った。
すると、急におそろし様の声が大きくなる。
『娘よ!!近寄ってはいけない!!
お前まで石にしてしまっては、ワシは涙が枯れてしまうかもしれん。
ワシはワザとに人を変えるのではないのじゃ。
ただ、ワシのこの恐ろしい姿を見てしまえば
その恐怖のあまり、石に変わって仕舞うのじゃ。
お前のおっとうの事は本当に済まないと思う。
ワシが馬鹿だから、お前のおっとうを石に変えてしもうた。
ワシがお前の家の戸を叩く前に
ワシはオソロシ沼のおそろしじゃと名乗れば良かった。
ホンにワシが馬鹿じゃった。
いくら謝っても、許され無いのはわかる。
じゃが…ワシには謝る事しか出来ん。
娘よワシを許しておくれ…』
『じゃが?おそろし様は神様じゃろ?
おっとうを生き返らせてくれよ。』
『済まない…ワシは神と言っても、位は低く神通力は使えぬ。
ワシはもののけの類いと変わらん。
じゃから…
頭を下げて謝る事しか出来ん。
娘よ。本当に済まなかった。』
『オレを娘と呼ぶな!!
ちゃんと、おっとうが付けてくれた優と言う名前がある。』
『そうか…優と言うのか…
では…優…
改めてワシは頭を下げる。
ホンッに済まなかった。』
頭を下げっぱなしのおそろし様は
優が盲目の少女だという事に気付かなかった。
優と名乗る少女と
モノノケ程の力しか持たない、おそろし様の、交流が始まります。