いらっしゃいませ
今日も変わらぬ朝が来る。
店の中を軽く掃除して、来客を待つ。
こちらが行かなくても客が来るのだ。
こちらが出向くのは滅多にない。
しばらくするとドアに着いている鈴がカランとなった。
「いらっしゃいませ」
入ってきたのは子どものゴブリンが十数匹と大人のゴブリンが数匹。
「グギィ?」
大人のゴブリンが僕に声をかける。
彼はこのゴブリンたちの集落の長だ。
子どものゴブリンは店が珍しいのかキョロキョロとしている。
「こんにちは」
「グギャ、ググゥ」
「はい、ではお支払いはいつも通りでよろしいですか?」
「ギュウ、グルゥ」
長が一緒に来た他のゴブリンに声を掛けると彼らはドアを押さえて外にいるゴブリンを呼び込んだ。
入ってきたゴブリンたちは毛皮を運び込む。
それをカウンターに置いて彼らは出て行く。
僕は毛皮の状態を確認して問題がないことを伝える。
「はい、大丈夫ですね。
じゃあ子どもたちはあちらの部屋に入ってくださいね」
僕が示したのは玄関ではない店内の奥にあるドア。
店員のリール君がドアを開けてこっちですよ、と案内している。
子どものゴブリンたちはわいわい言いながらそちらに並んでいく。
順番に入っていき、出てきた子どもはこん棒を持っていた。
無事に武器を持てたようだ。
全てのゴブリンが出てきて全員がこん棒を持っているのを確認し、長は子どもたちに外に行っていいと指示する。
僕の方を振り返り一言挨拶して彼も出て行く。
「またのお越しをお待ちしております」
出て行く彼にそう声をかけた。
ここはモンスター専門の武具店。
お客はほとんどモンスターだ。
ありとあらゆるところに店の空間が繋がっているので時たま人間も来る時がある。
まぁモンスターにはそれぞれに合う武器や防具を具現化するだけだ。元手は技術料だけ。
あ、普通の物も作れるよ。職人としての腕もちゃんとあるよ。
だからちゃんとした武器や防具などもいくつか置いてある。
人間はそれを買っていくよ。
ちなみにかなりの業物になるから値段はそれ相応だ。
支払いは物々交換も可能だからお金を持たないモンスターも安心して買える。
もちろんオーダーメイドも承っている。
具現化したものではなく、普通の物を欲しがるモンスターもいるからね。
具現化は魂の一部を使うから死んだら消える。
時たま固定化されて残る場合もある。
モンスターがドロップするのはほぼこれだね。
カランと鈴がなりまた新たな客が訪れる。
「いらっしゃいませ」
全てのモンスターを相手にしているので閑古鳥が鳴くことはない。
さぁ今日も働こう。