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閑話その2 とある少女の運命

一つ前の話が短かったので、もう1話投稿しておきます。

各話の長さはかなり適当です・・・

ガタンッ


馬車が大きく揺れて、その振動で深い眠りにあった意識が覚醒した。

足元からは金属の冷たい感触が伝わってくる。

ここは檻の中。

そして、私は奴隷。


奴隷になったのはもう何年前だっただろうか、

あれだけ優しくしてくれた両親の顔ももう思い出せない。


隠れ里に奴隷商人たちがやってきたとき、

幸せだった私の生活はもうなくなってしまった。


村の人たちは、多勢に無勢で一人また一人と殺されてしまった。

父も殺されてしまい、かたきを討とうとした母も目の前で殺されてしまった。


男女問わず容姿が美しく、また死ぬまでその美貌を失うことのないエルフ。

そのエルフを奴隷としようとする者は後を絶たず、

一人の奴隷にそれこそ一つの城を変えるほどの資金が動くことがあるともいう。


魔法の力に優れている私たちエルフには、

人間が扱うような隷属の魔法はどのような状態でも通用がしない。


そのエルフを唯一奴隷にする方法、

それは、

魔法抵抗力がまだ弱い子供を捕まえて隷属の印をその体に埋め込むことだ。


その寿命も長命なエルフの子供が生まれることは稀だ、

人に比べてその数が少ないエルフは子供が生まれるとその一族皆で子供を隠し育てる。


それでも、人間はそのあくなき欲望でエルフの子供を追い求める。


「もっとスピードはでないのか、もっと飛ばせ!!」


「これ以上は無理です!」


私を運んでいた奴隷商達の声が聞こえてくる。


そちらの方を見やってみても、もう私の目は光を映さない。

15歳、奴隷として販売をすることができるようになったその日に私の売却先が決まり。

客先から逃げ出すことがないに薬を飲まされた。

そして、それから2月後の今日、売却先に向けて馬車で運ばれている最中が、今だった。


15歳の誕生日にも、救いはなくあるのは絶望だけで、

この先の生活にも絶望しかない。


奴隷の印で自ら命を絶つことすらできない。


神を恨んだこともあった、

出会ったらなぜこのような仕打ちを私に与えたのか問い詰めたいと思っていた。


でも、今はそんなことももう諦めて、

ただこの身体からその命が失われることだけを望んでいた。


「護衛もやられちまった、もうおれらも死ぬんだ」


何が近づいているんだろう、何かが大きな音を立てて近づいてきている音が聞こえる。

それらは私を殺してくれるだろうか?


子供のころは、屋敷の中に閉じ込められ、外に出ることもなかった。

その人生のなかで唯一よかったこと。

それは、金持ちに買われることのわかりきっている私の教養を高めるための教育と、

昔に警備をしていた傭兵から聞く街の話や、冒険の話だけだった。


それらだけが私の宝物で、言われたことを何一つ忘れないように、

夜眠るときも一言一句頭のなかで繰り返していた。


頭の中だけで、私はどこにでもいくことができた。


また馬車が大きく揺れた、今度は何かがぶつかったみたいだ。


「・・・・・・檻を捨てろ。」


絞り出すような声が聞こえた。


「そんな、おれたち殺されちまいますよ!!」


「今死ぬのと、どっちがいい!!逃げ切って国境を超えるぞ、

国を超えちまえばそうそう捕まるもんじゃねえ!」


檻が、少しずつ動かされていくのがわかる。


ふと、私の望みが叶ったのがわかった。


一歩ずつ待ちわびた死が目の前に。


馬車から檻が押し出されていく。


檻がその水平を失って地に落ちるとき、一瞬子供のころ夢見た冒険の日を思い、

すぐに痛みなく死ねればいいなと思い直した。


光を失った目には、わずかな涙が浮かんでいた。


少女の願いがかなったのか、檻が地面に落ちた後に鋼鉄で作られた床に頭を打ち付け、

少女は、苦しむことなしにわずか15歳の人生に幕を閉じた。


馬車を追いかけていた地竜は檻を追い越すと、

馬車を引く荷馬、そしてそこにいる人間を食べた。


その後、檻の中のデザートへを食べようと先ほど落ちた檻の方へと向かう。


竜族の中でも最も下位に位置する地竜ではあるが、

彼の中に獲物を逃がすという選択肢はなかったようだ。


彼が最後の獲物を味わっているとき、

彼の背後からいまだかつて経験したことのないような脅威が迫ってきた。

基本的に暗い話はきらいなので、きっと最後はハッピーエンドです。


5/6

竜族の中でも最も下流に位置する地竜ではあるが

⇒「最も下位」

に直しました!


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