第57話 大和司と主なしの迷宮 その6
3年寝太郎でした。
「一体こんなものを誰が作ったんだ」
荘厳な扉を目にして誰に対してでもなく一人呟く。
大きな迷宮というわけではないが、さすがに地下5階まで進んでくるとすでにかなりの距離を歩いてきている。
何処までも続く石造りの迷宮。目の前の不思議な金属製の豪華な彫刻が入った扉。地上から運んでくるのはもはや現実的ではないし、魔法で造ったにしても、それこそ神のような存在だろう。まあ、神には知り合いがいたりするのだが……
この世界の構造に思いをはせながらも、その扉に手をかける。少し力をかけるとその大きな扉がゆっくりと動いていく。
聞いた話によるとボス部屋で誰かが戦闘を行っていると、その間は扉は開かないらしいので今は誰も中にいないということだろう。
リエルたちの方をみると、リエルからはしっかりとした頷きがかえってきたが、ナーシャは相変わらず眠そうにしていた。つまりは大丈夫ということだ。
半分ほど開いた扉はその後自ら開いていき、まるでおれたちを迎え入れるようだった。
部屋の中は大きな円形の形をしており、まるで卒業旅行でみたことのある海外の闘技場のようだった。壁面はある程度の高さから階段状に段差が出来ており、多くの観客が冒険者とボスとの戦いを観戦出きるような構造になっていた。
もちろんそこに観客など一人もいないのであるが、この空間を造った者の悪趣味さを感じる。
部屋の中央には3つの円が描かれており、そこからボスが現れるということなんだろう。
背後で大きな音を立ててドアが閉まった音がする。
後ろを振り向く間もなく、目の前の円に白い煙が立ち上がり、その煙がはれると黒い鎧に身を包んだゴブリンが三体現れた。
5階層のボスについて事前に調べた情報によると、組み合わせは都度変わるものの上級のゴブリンが三体出現するらしい。
「で、デカいな」
そこに現れたのは見たこともない大柄な黒ずくめのゴブリン三体だった。身体のサイズが大きいだけでなく、手足は太く重心も低く、力士のような体型をしている。こんなゴブリンが出たというのは聞いたことがない。
しかし、なんだどこかで見覚えがあるような……
「ツカサ様、来ます!」
リエルの声で我に返る。黒いゴブリン達をみるとこちらに気付いたようで戦闘体制に入っている。
「なんだ……?」
ゴブリン達は息を合わせるように同調した動きを取りだした。こちらも剣を構えて待ちかまえるが、動きがシンクロしたゴブリン達はやがて僕に向かって一列に並ぶ。その姿は三体いたにも関わらずおれからは一体しか見ることができない。
「こ、これは複数体が直線的に並んで波状攻撃をかける……まさか、ジェッ……」
言い終わるまでもなく黒いゴブリンたちが突っ込んできた。
一体目が手にしていた斧でおれに切りかかってくる。
おれは一歩後ろに下がって斧を空振りさせてやり過ごすと、一体目が左手へと通り抜けると同時に目の前に現れた2体目が手斧をこちらに向かって投擲する。
慌てて身を屈めて手斧を交わすと、2体目が右手へと通り抜ける、さらに現れた三体目が動きのとれなくなったおれに目掛けて肩から突っ込んでくる。
ガードを固めて受けるしかなかったが、黒ゴブリンのがたいと勢いの良さに吹き飛ばされてしまった。
「ツカサ様!?」
飛ばされたおれに向かってリエルが慌てた声をかけるが、鎧のお陰で怪我などは全くない。
「大丈夫、任せておけ」
体制を立て直しながら力強く返事をする。さっきは突然だったがこの技の攻略法をおれは知っている。
黒ゴブリン達は定位置に戻るとおれの姿勢が完全に戻る前に追撃をかけてくる。三体が一体に、そうまるで3つの星が一つに連なるように。
「甘いっ」
おれはそう言うと身体を宙に投げ、こちらに突っ込んでくる黒ゴブリンの頭の上に着地してさらに飛び上がる。上がってきたレベルとステータスのボーナスでもうかなりの身体能力が身についており、これまでに繰り返したゴブリンとの戦闘でその身体能力は完全に自分のものになっていた。
一体目の黒ゴブリンが呆然とした顔でこちらをみやる。まるで自分が踏み台にされたことを驚くように……
おれはジャンプした勢いですぐ後ろにつけていた2体目を飛び越すと突進の準備に入っていた三体目を一刀両断で切り捨てる。
すかさず返す刀で態勢のまだ戻らない2体目を下から斜めに切り捨てる。
これであとは一体だ。
仲間をやられたことに怒ったのか一体目の黒ゴブリンがこちらに突っ込んでくるが、もはや脅威でもない。
武器のリーチの長さを生かし、武器を持っている右手を落とすと、足をなぎ、倒れる身体を苦しまないように一刀で切り捨てる。
「ふっ、つまらぬものを切ってしまった。安らかなに眠れ、オル○ガ、マ○シュ、○イア」
決めゼリフをいっていると、
「ツカサ様、さすがです!!」
リエルも掛け値なしに喜んでくれた。
これで、見直してくれて過保護が治ればよいのだが……
「ツカサ、あそこに何かあるぞ」
一方、ナーシャは出来て当然といった感じで、おれの決めゼリフを見向きもせずに声をかけてくる。
がんばったのにな……とは思いながらナーシャの指す方をみると、部屋の中央に箱みたいなものが現れていた。
こんな小説(しかも放置してた)でも楽しみにしていただいて本当にありがとうございます!
プライベートでいろいろあり(というか、また仕事でまた違う国に・・・)、仕事もあり正直放置しておりました。
当時書き始めたころからは、実に6年たっており、作者もすっかりおっさんになりました、
文体の変化もあるかと思いますし、昔とは同じとはいかないと思いますが、その辺はご容赦ください。
こちらも気負わずに書いていければと思いますので、皆さんも気負わずに若干の暇つぶし程度に気楽に読んでもらえれば幸いです。
そして、続きが読みたいと最近感想をいただいた方へ
ありがとうございます。
久しぶりにログインしたページで、その感想を見て、
今でも読んでもらえる人がいるんだ、書かないといけないなという気持ちを強く感じました。
気負わず休んだり書いたりしながら、ぼちぼちやっていきたいと思います。
Nolaっていう小説作成アプリを作っていただいた方にもSpecial Thanksを
(あ、たぶん誤記は相変わらず多いと思い、突っ込みたくなるかと思いますが、結構なおすのたいへんなのでそのまま進めちゃうと思いますが、そこもご容赦をば)