第53話 大和司と主なしの迷宮 その2
そういえば、護衛のクエストで出てくる敵の処理をほとんどリエルに任せていた。それが原因だろうか?それにしても、さっきの短刀の使い方といい、成長が著しすぎるだろう……
とにかく、ここにはレベル上げにきたわけだし、追いつけばいいだけさ……うん。
リエルが倒したモンスターはその後黒色靄のようなものを出して消えていき後には豆粒程の黒色の石が残されていた。
「これが魔石か……なんだかショボイな……」
「まだ一層じゃしな、深く潜れば大きいものも取れよう。どうじゃ、あの女たちに連れて行って貰えばよいではないか……」
「足手まといになっちまうよ。まずはレベル上げからだな。あ、リエルさん次から一匹だけ残してもらっていいですか」
思わずリエルに敬語が出る。
「次は二匹てすね」
リエルが次の部屋を覗いて報告をしてくる。エルフたとわからないよう、狩人という一般的な職業にさせたのだが、偵察もこなしてくれるわ、弓は使えるわ、精霊魔法、さらには近接も出来るなんて、この子優秀すぎます……
「おーけー、じゃあ左をもらう……」
ドスッ
「どうぞ」
右のゴブリンはもうお亡くなりになっていた。
残りのゴブリンが慌てたようにこちらにやってくる。1対1なら、おれだって!
初めての人型のモンスターとの戦いではあったが、何よりこれ以上格好の悪い思いはしたくない。
そんなプレッシャーからか、久しぶりの戦闘にも関わらず腰が引けるような思いはどこかにいっていた。
「オラァ」
かけ声とともにゴブリンがかわせない横軌道のスイングで一気にゴブリンの身体を刈り取る。
ザシュッ
小気味よい音とともにゴブリンの身体が真っ二つになり、地面に倒れるまでに霧になって消えていく。
「さすがです、ツカサさま」
「うん、思ったより弱いな……」
リエルが誉めてはくれたが、あの動きを見せられた後にはなんだか素直に喜べないな……
「われは帰ってよいかの?」
そんなおれたちを見ながら、ナーシャが後ろから言ってくる。うん、これはナーシャいらないかも……
Tears of Dragonの感覚共有を使った気配感知だが、なんだかこの迷宮の中では部屋の中でしか機能せず、隣の部屋までは届かなかった。
気配感知と、いざという時のためにナーシャをつれてきてたのだが、この敵の弱さといい、もう少し深く入るまでは必要ないだろう。
「そうだな。リエルもそれでいいか?」
「はい、私がツカサさまをお守りいたします」
できれば、女の子を守るのはおれでありたいが、そのためにはちょっと時間がかかりそうだ……
「夕飯をあんまり待たせるなよ」
そう言ってナーシャは悠々と1人でキャンプまで帰っていった。なんというか、王者の風格である。たぶんこの迷宮にいるようなモンスターなら、なんでも一捻りなんだろう。
「じゃあ、リエル、次にいくか?」
それからは、ゴブリンとひたすら戯れた。
一部屋にいるゴブリンは多くても5匹くらいだったが、余り強くないということで問題はなかった。というかリエル一人に任せておいても、精霊魔法で容赦なく倒してしまう。
精霊の力を行使して魔法を使うらしく、MPもほぼ使わないらしい。威力も高く、ゴブリン相手だと完全にオーバーキルである。
さり気にこの子チートじゃねぇか?
普段エルフであることを悟らせないために精霊魔法は使わないようにさせているが、迷宮の中では他のパーティーと狩り場がおなじになることはほぼなく使いたい放題である。
とはいえ、リエルひとりにモンスターを倒させていると、さらにレベルを離されることになるので、なるべくおれがモンスターを倒せるように戦っている。
まずは1対1から、1対2、そして、今なら3体くらいならうまく捌けるようになってきていた。
2体くらいなら強引にまとめて切り捨ててもいいが、3体ともなるとそうはいかない。向かってくるゴブリンに瞬時に優先順位をつけて、コンパクトな動きで処理を行っていく。
「3体行きます」
今回も3匹だ。一列に並んで順番にやってくる。
「ふっ」
ザシュッ
息を吐き、素早く先頭の1体を切り捨てと、2体目が思ったより近くまでやってきていた。
「はっ」
ドカッ
「ギャッ」
距離を詰められた時には、キックで弾き飛ばすのも有効だ。おれは体格差にものを言わせて蹴り飛ばす。目の前の仲間がいなくなって無防備になった3体目のゴブリンを余裕をもって切り捨てる。最後に地面に倒れて起き上がってこれない残りの一匹にとどめをさした。
「ふう」
「さすがです」
なんとか3体までならうまく処理できるようになったか。だが、これが4体となると全く攻撃を受けずに倒すのはむずかしい気がするな。
うーん、飛道具でも考えた方がいいか。もしくは、魔法か……どちらにしろ今後の課題だな。
この日はレベルが一つあがるまで、一層で狩りをしてキャンプへと戻った。
そして、今日のお相手はユミルさんだった。
「よろしくだよ、ツカサ君」
ユミルさんは健康的で、シーフであるがその職業とはちがって、オードソックスな感じがお好きなようだった。
短い夢でした(ランキング)
ですが、今日も間に合ったので更新します!
お気に入りや評価いただいた方、ありがとうございます!
いつかのランク入りを目指して引き続きがんばります!