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第42話 大和司と寝不足の幸運

「ふぁああぁぁ」


 欠伸が止まらない。結局昨日はナーシャに起こされて、夜明けまで会話につき合わされた。

 地平線から上がってくる朝日が目に眩しいぜ……

 

 どこかへ旅する際には、暗闇の中で移動することは非常に危険である、夜行性の魔物にあうような恐れもあるし、道を間違える、また崖などを見落としてしまう可能性もある。

 そのため、朝、日が昇るとともに移動を始めて、日が落ちるとともにキャンプを開始する。


 つまり何を言いたいかというと……


「おはようございます、ツカサさま」

「よお、兄ちゃん、今朝は早いな」

「今日はちゃんと起きてるのね」


 そう、みんなが起きてくる時間だったのだった……

 

 ガタッガタッ、ガクッ


 馬車の揺れに合わせてたまにおれの頭が大きく揺れる。

 

 し、死にそうだ……

 さっきから、気が付くと意識が飛んでいる。


 そして、意識が飛ぶたびに、向かいに座っているマリアローズの表情が厳しくなっているのがわかる。とはいえ、こちらは本当に限界だった。

 おれの膝の上では、ナーシャが気持ちよさそうに寝ている。なんというか、こいつ自由でうらやましいよな。なんだか、もうずいぶん前になってしまった気がするが、サラリーマン時代を思い出す。なんで、おれは異世界まできて、こんな眠気に耐えて働いているんだろうか……


「ヤマトツカサ、あなた、たるんでいるわよ!」 


 全く持ってマリアローズの言うとおりだ……おれは、ちゃんと働かないと……にしても、こんなに怒ってばかりだと……もったい……


「そんな眉間にしわを寄せてると……きれいな顔が台無し……」


 あまりにも眠いせいだろう、思わず本音がでてしまったような気がするが……もうなにもわからない……


 目の前で真っ赤になっていくマリアローズをおいて、おれは意識を手放した。


 


 ガヤガヤ


 あたりから喧噪が聞こえてくる。


「おい、司。授業始まるぞ」

「おう、悪い」


 そういって、自分の机から立ち上がる。慌てて立ち上がったので、座ってた椅子が後ろに倒れて大きな音を立てる。

 懐かしい教室で、みんなが笑ってる、窓際をみると彼女が笑っていた。彼女はいつも控えめに笑う。彼女の傍を通ると甘いようななんだかいい匂いがしたのを覚えている。

 桔梗のような花の匂い……彼女は元気にしているだろうか……

 懐かしい匂いに、昔の記憶がよみがえる。


「花の匂い?」


 そういって目を覚ますと自分の置かれている状況が目に入った。

 

「オハヨウゴザイマス」


 そういつも声をかけてくるリエルの声がなんだか無機質な気がする。


「おはようございます、ツカサ様。マリアローズ様」


 顔を上げると、おれの頭の上で閉じた目を開けて、伸びをしているマリアローズが目に入った。


「重いからそろそろどいてくれる?」


 思いがけず、男の夢を達成したような気がする。文句は言いながらも、膝枕をしてくれたマリアローズのやさしさと、その身体のやわらかさを感じることができた。


 なんだか、久しぶりにゆっくりと眠ることができた。


「マリアローズ」

「なによ」

「ありがとう」

「なっ……いい加減に起きなさい!」


 そういったマリアローズに突き飛ばされたのはきっと照れ隠しに違いない……と信じたい。




 それからまたしばらく馬車の旅はつついたが、先ほどまで、馬に乗った異国の兵士と話していた御者が車内へ振り返って言う。


「マリアローズ様。もうじき到着するそうです」


 その声を聴いて頷きあうおれたち。これでようやくベッドで眠れそうだ。




 それから1時間ほどたっただろうか、おれたちの前には、いま、カンプスの街が広がっていた。


短くてすみません……

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