第40話 大和司と龍の眷属 その2
少し飛んだ意識がもどると、目の前は真っ暗闇だった。鼻のあたりに鈍い痛みを感じる、これは鼻血も出てしまっているかもしれない……
起き上がろうと思って身体を動かそうとすると、何かに嵌ったようで自由に動かない。どうやら、龍のおっさんに弾き飛ばされて裏にあった崖か何かに埋まりこんだということなのだろう。
[*いしのなかにいる*]
その時、目の前にこれみよがしに、メッセージが表示された。
げっ、「Malor」使える魔法使いもいないし、、、これは全ロストか……ってちがーう!!
ノリ突っ込みの後、おれは全力を振り絞ってあたりの石を弾き飛ばした。
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ドカァ
ツカサが飛ばされた、崖の部分が爆発でもしたように煙が上がって大きな穴が開いた。少し遅れてその穴からツカサが姿をゆっくりと現した。
どうやら怪我などはしてないようだが、着ている服などがボロボロになっている。何とも情けない顔で服についた汚れを叩いて取ろうとしている。
「やれやれ、ツカサよ、ボロボロではないか情けない」
からかうようにそう言うと、こちらを向いたツカサは今まで見たことのないような変な顔を浮かべていた。
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穴からようやくはい出してみると、月明かりで見える自分の姿はひどいものだった。
レベルのおかげだろうか顔以外にはダメージというダメージはなかったが、ピエールの店で買ったお気に入りの一張羅が見事にボロボロになっていて、大きな穴が開いている。
これ気に入っていたのに……そんなことを思っていると、ナーシャに声をかけられた。
「やれやれ、ツカサよ、ボロボロではないか情けない」
いつもどおりのナーシャの軽口に何か言い返そうとしてナーシャの方を見ると、ナーシャの着ているワンピースには穴が開き、肩紐も片方なくなってしまっていた。
肩のあたりにはおっさんの攻撃をもらったのか痣のようにもなってしまっていた。
「む、人間。なぜ生きている……」
「うるさい」
何か言おうとしているおっさんを無視して、おれはバスタードソードを鞘から抜くと地面を蹴った。
「なっ」
一瞬でおっさんとの距離を詰めると思いっきり頭めがけてバスタードソードを振り下ろす。
バキーン
バスタードソードを振り下ろすとその衝撃に耐えることができずにバスタードソードが根元からへし折れた。
おっさんは驚愕を顔に浮かべているが、その身体には傷一つついていない。
「さすがに硬い……バリアか」
おれは、もう柄だけになってしまった剣を見つめて、地面へと捨てる。
「ははっ、ドランボス貴様もいい恰好だな」
そういって、ナーシャが指さす、おっさん(ドランボスというらしい)の頭部当たりを見て……
「ブハッ」
思わず噴き出した。
おっさんの撫で付けていた髪が乱れて、髪があった場所が月明かりを受けて輝いている。つまりおっさんは禿だったのだ。
ナーシャと二人で大笑いしていると、少し青っぽく顔色の悪いおっさんの顔がどんどん赤くなっていく。
「き、きさまらー、高貴なシルバードラゴンのわしを笑うとは、許さん」
笑い続けるおれたちに堪忍袋の緒が切れたのか、おっさんが叫ぶとその身体が再び光に包まれた。
光が晴れると、先ほどみた巨大なドラゴンが目を赤くしてこちらを睨んでいた。
「あ、やべ」
思わずそんな声がでる。おれをかばうようにナーシャが目の前に立った。
おっさん改め、ドランボスが大きく息を吸い込むと口元が銀色の肌よりも明るく光る。手を広げておれを守ろうとしていたナーシャの肩を左手で引くと、前に出た。
ドランボスの口元の光が今にも溢れそうになっている。
こいっ
そう意思を込めると、右手に重みを感じる。その時、ドランボスがこちらに向かってブレスを吐き出してくる。
あたりに光が包まれ、ドランボスの足元から扇状に地面が焼け焦げている。その焼け跡は、おれの立っていた場所から二股に分かれて広がっている。
「ブレスを切るだと……な、なんだ……まて、そ、その剣は……」
「よく、この我に向かって生意気な態度をとってくれたな。ツカサ、許す、やってしまうのじゃ」
そんなナーシャの声を受けてじりじりとドランボスとの距離をつめる。
同じ龍族ということで、ナーシャの力の源であるTears of Dragonの力を感じるのだろう。
「ま、まあ、なんだ、私も大人げなかったかもしれんな、話し合おうじゃないか、人間」
おれは、無言でTears of Dragonを振りかぶる。
「くっ」
バサァ
ドランボスが羽を広げて飛び上がった。
「あっ」
どうやら逃げようとしているようだ。
「待ちやがれー!」
そういってTears of Dragonを振りおろすと、刀身が光って、衝撃波が大気を切り裂く。その衝撃波は逃げているドランボスを捉える寸前で、ドランボスが身体をひねった。しかし完全には躱せなかったようで、尻尾が真っ二つになって地上に落ちる。
相当痛かったのだろうドランボスが大きな叫び声をあげるが、そのまま逃げていってしまった。
Tears of Dragonが紫色の靄のようなものに包まれる。
「よくやったなツカサよ、奴とて龍族の端くれ、なかなかの収穫じゃ。そうじゃな……龍族を狩るというのも……」
ナーシャが何か言っているが、聞かなかったことにしておこう。地面に落ちたドランボスの尻尾を回収してアイテムボックスに入れると、キャンプへ戻ろうとナーシャに提案する。さっき衝撃波を出した反動だろうか、どうにも身体が重かった。ちなみに、切れた尻尾であるが、ほおっておくとまた生えてくるらしい……やっぱりこいつらトカゲだな、そんなことを思いながらキャンプへの帰路へとついた。
その時、遠く離れた木の陰に、おれたちの姿を見ている人影があったことにおれは気付いていなかった。
…
……サさま
誰かに揺すられて目を覚ます。
「ツカサさま、そろそろ出発ですよ」
「うー、あと5分……」
「そんなこと言ってないで、起きて顔を洗ってくださいね」
リエルに抵抗しながらも、眠い目をこすりながら目を覚ます。夜中の騒動で全く寝れた気がしてなかった……ちなみにナーシャはトカゲの姿になって丸まって眠っていた。ズルい……
途中で書いてたデータが飛んでしまって心が折れかけました……
もうちょっと推敲をしたほうがいいことが我ながら感じますが……とりあえずは話を進めることを優先に……
ちなみにWizardryはあまりやったことはなかったりします(笑)
3/10 次話(スキをみて鋭意執筆中)を書いていて、一文書き忘れたのを思い出して追記したりしました。
「その時、遠く離れた木の陰に、おれたちの姿を見ている人影があったことにおれは気付いていなかった。」