第34話 大和司と、変わった訪問者
こっそりと
適当な屋台で昼ご飯を済ませた後、ナーシャをつれて竜の息吹亭にもどった。
「よし、では、我がよいというまでは、決して中を覗いてはならんぞ・・・・・・」
部屋のドアを閉める前に、スマートフォンを手にして満面の笑顔を浮かべたナーシャの台詞に、いやいや、おまえは何かの恩返しでもするのかよと心の中でツッコミをいれてから、おれは、リエルを連れて、冒険者ギルドへと向かった。
こちらの世界に来てから、最初に知り合ったのがリエルだった、二人になったとおもったら、すぐクロもといナーシャが現れて、あまりこうして二人っきりで歩くことはなかったな。リエルと並んで歩きながら、時折フードから覗くその綺麗な横顔を見ながら考えていると
「ツカサ様。 こうして、二人っきりで歩くのも久しぶりですね」
急にリエルに話しかけられた。
「え、あ、ああ、そうだね」
考えてみると、こんなにかわいいこと街を二人で歩くことなんて、(悲しいことに)これまでの人生で一度もなかったかもしれない。なんだか、急にそんなことを意識してしまって、おれの心臓は少し早く鼓動していた。
そうして、なんだか、数秒ほど二人で見つめ合った後、リエルの視線がふと下にさがった。どうしたのだろうと、リエルの視線を追うと、ぼくの手をみているようだ。
ちょっと手を伸ばせば届くところに、リエルの小さく華奢な手が見える。
「あの・・・・・・リエル、よかったら・・・・・・」
「あのあのあの、ちょっといいですか、すみません!!」
意を決しようとしたところで、急に後ろから声をかけられた。
なんだか、決心をそがれてしまった。なんだろうと思い、声のした方へと振り返る。
「わ?」
思わず声がでてしまった、決して声をかけてきた子がかわいかったからではない。いや、それも多少あるかもしれないけど。おれが、振り返った先にいたのは、なんというのか、変わった衣装に身を包んだ、少し幼く見えるけれども身体は成熟している、でも、その頭の上のアホ毛がよく目立つ女の子がそこには立っていた。
女の子は、自分の左右の手の指を交差させて揉むようにしていたかと思うと、あたりをきょろきょろと見渡したかと思ったら、いきなり抱き付いてきた。
リエルからは感じることのない、発育のいい身体の感触が伝わる。
「やっと見つけました、もう逃がさないですよ! あれがないと困るんです。 なんでもしますから返してください」
あれって何だろう、そして、横から突き刺さるリエルの視線が痛い。このまま、なにとはいわないけれど、その感触を楽しみたかったが、心で泣いて、平然とした顔で、おれの身体を抱きしめて離さない女の子を両手で押して距離を取った。
「ちょっと離れて……」
女の子は、さっきよりはちょっとマシになったようだけれども、相変わらず少し落ち着かない様子で、そわそわとしている。どこかであったかと思うけれど、そもそも、おれの知り合いは多くないし、こんなにかわいい子を簡単に忘れるともあまり思わない。
「アレって言われてもよくわからないんだけど、人違いじゃない?」
「絶対、合ってます。匂いでわかりますもん。昨日会ったじゃないですか」
「ツカサさま?」
リエルの目がさらに冷たくなっている。
「いやいや、知らない人だよ?」
ぼくはなにを必死に言い訳しているのだろうか、といっても本当に心当たりがないのである。
改めて、彼女のことをじっくりとみてみるけれど、少しぶかぶかのタンクトップにショートパンツを履いて、脚もとは、網タイツをはいている、うん、いいな。背中には小さな羽のようなアクセサリがついていて、天使のコスプレみたいなものだろうか、かわいいけれどやはり奇抜なファッションセンスだというほかない。
「ちょっと確認したいんだけど、一体何を探してるの?」
「これくらいの」
そう言って、彼女は両手で拳大の形を示して見せる。
「角です」
「え!?」
角?角といわれると、先日のあれか?
確かにぼくは、いま、角といわれるものを持っていた、先日、兎鳥クイーンにあったときのアレである。
「アレがないと、みんな言うことを聞いてくれなくて、こまるんです!!」
「ええ!?」
「かえしてくださいー!」
そういって、また飛びかかってこようとした彼女を、リエルが後ろから肩を押さえてそうさせないようにしていた。
「あなた、ひょっとして、この前の、兎鳥クイーンですか?」
「えええっ!?」
そんな、まさか、とおもったが、リエルが、彼女をなだめながら聞き出した話によると、彼女は、本当に先日の兎鳥クイーンで、今は、人の姿に変身をしているらしい。先日の戦いで、魔力の源である角を折られてしまった彼女は、同じ種族である兎鳥たちにこれまでと同じように十分な命令ができなくなってしまっているらしい。
兎鳥クイーンの話を解釈すると、なんでもテレパシーのようなもので、数多くいる兎鳥たちを制御していたらしい。ちなみに、なにも考えて居ないように見える、兎鳥たちであるが、なにやらいろいろと役割が分担されているらしく、思ったより複雑な生活をしているらしい。
一度、折れたものがまた使えるのかと思ったけれど、その辺りは、角に蓄えられた魔力を吸収したらなんとでもなるらしい。
「なんでもしますから返して下さい!」
あらためて、彼女がおれに頭を下げてくる。
リエルは、おれの顔を伺うだけで、おれに任せるということなんだろう。
個人的には、無条件で返してしまってもいいのだが、正直お金が惜しい気がするし、これだけかわいい子がなんでもするっていっている申し出を振るのはもったいないというか、男が立たない。
「えっと、君・・・・・・名前はなんなんだっけ?」
「クイーンはクイーンです、私たちに名前はないです」
「うーん、まあいいか」
にしても、改めてクイーンを見ていると、人の姿をしているときは、おれより少し背が低いわけで、何度も頭をさげているのを、こう斜め上の方から見ると、タンクトップの隙間からですね・・・・・・据え膳食わずはというし・・・・・・
キッ
なんだか、そのとき、リエルの視線が一瞬鋭くなったような気がした。
「えーっと、クイーン・・・・・・やっぱり名前がないのはやりにくいな・・・・・・」
「好きに呼んでもらって大丈夫です!」
「じゃー、ココ。うん、いいよ、返してあげ・・・・・・」「ホントですか!!!ありがとー!!」
そういって、また、クイーンあらためて、ココがおれに飛びついてくる。しばらくたって、リエルに再び引きはがされたところで、あらためて告げる。
「でも、そのためには一つ条件がある」
「ツカサ様?」
ただで返してあげそうな流れを断ち切るおれの声に、小声で話しかけてきた。
そのリエルに、目で大丈夫だからと返す。
「・・・・・・というわけなんだけど、どうかな?」
「そんなことならいくらでも大丈夫、この私・・・・・・えーっと、ココに任せてよ!ツカサ大好き!!」
「ちょっ・・・・・・」
うーん、なんて人なつっこい鳥類(?)なんだろうか・・・・・・
そうして、冒険者ギルドに向かっていた、おれとリエルはいまココをつれて、竜の息吹亭に再び戻ってきていた。
「・・・・・・というわけだから、おっさん。 今日からこの子が手伝ってくれるって」
「お、ちょうど人が足りなかったところに悪いなー! しかも、こんなかわいい子で、兎鳥クイーンなんだってか? クールだな!!」
おっさんは、分かっているのか分かっていないのだかよくわからないけど、大らかに軽~い感じで、了承してくれた。
おれが、ココに交換条件として出したのは、人不足で手伝いを探していた、竜の息吹亭のアルバイトをすることだった。
飛んだ乱入者がやってきたものだ、おれとリエルは、遅くなってしまったけど、再び冒険者ギルドへと向けて、竜の息吹亭を後にした。
「それにしても、びっくりしたね」
「そうですね、クイーンはいろいろな魔法が使えるとも聞きましたが、まさか人に変身できるなんて・・・・・・」
「そうだねー、それで、リエルは、冒険者ギルドになんの用事なわけ?」
「えっと、それは・・・・・・」
いつも冷静なリエルが少し言いよどんでいる、何か話しづらいことでもあるのだろうか・・・・・・?そう思ったとき
「ちょっと、そこの者、よろしいだろうか?」
後ろから声をかけられた、おれが振り返ると。
「アレがないと大変困るのだ!」
そこにいたのは、お尻から柔らかそうなしっぽを生やして、頭はまるで耳のような髪型に結われた、赤髪ロングの女の子が立っていた・・・・・・
なんかどこかであったぞ、この展開・・・・・・
その日以降、竜の息吹亭には、看板娘となる二人のウェイトレス、ココとルルが見られるようになったらしい。
なお、その日結局リエルが冒険者ギルドに行けなかったことについては、いうまでもない。
ちょっと時間ができて、気分が乗ったので、久方ぶりの更新をば。
久しぶりすぎて、いろいろ忘れていて、微妙に雰囲気とか合わなくなっていたらすみません。
なにせ、なぜ、リエルを冒険者ギルドに行かせようとしてたのが、書いていた本人も忘れていますしね・・・・・・どこかにメモがあったハズなんですが・・・・・・^^;
今後、しばらくは不定期更新ということで、気が向いて時間があるときに更新していきますので、あまり期待をなさらずにじっくりとお待ちいただければ幸いですm(_ _)m
別作品の、とある~は、1章終了までほぼ、毎日更新予定です。
相変らずの誤記ぷりにへこみつつ、誤記すみません(><)ツッコミありがとうございます!
【アリエル】>リエル
【兎鳥クイーン】達>【兎鳥】たち
【宿屋】に用事>【冒険者ギルド】に用事
あたりを修正しました。
名前なんですが、ネーミングセンスない上に、
こちらのカレナリエル、別作のアリエルなんですが、とあるエルフの名前のサンプルを提供して下さっているサイトから、適当に良さそうなものを使わせていただいているもので同じ人間が選ぶものということで、すごい似たようなものとなってしまってます・・・・・・(忘れてて意識せずに選んだんですけどね・・・・・・)
誤記とか、いろいろ至らないところはありますが、ご容赦いただき、気長に読んでいただければ、うれしいです!
誤記をさらに修正しました。
三点リーダーについては把握してますが、なんか使ってるword(英語版)のせいか、うまく変換できてないので、その辺りは大目に見てやってください!




