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第2話 大和司は、取説をあまり読まない。

さて、どなたかに発見して読んでもらえるのでしょうか?

2話目です。

 世の中には、二種類の人間がいる。

 ゲームを始めるときに、説明書をじっくり読んでから始める人と、説明書を読まずに始める人だ。


 このおれ、大和司は、説明書を流し読みして始める人だ!


 2種類じゃねーじゃねぇか? うっせうっせ、しらね~!


 と、誰にかわからない逆切れのようなことをしつつ広辞苑のような厚さを持つ『異世界取扱説明書』(以下、取説)を流し読む。


 ちょっと中を見ただけでも、なにやら一つ一つの項目が無駄に細かく書いてあり、情報が膨大すぎて逆にわかりにくいという、親切を通り越した不親切に誰しも読む気をなくすに違いない。


 なんてことを思いつつ、その説明書の概要をまとめるとこうだ。


○ この世界では、人の能力は、魔法や剣術等のスキルを含めLvで管理されており、ステータスで確認することができる。

○ 神が召喚したものには、チートな能力、常人の2倍のステータスと好きなスキルのLvを10個まで上げることができる。

○ この世界では、勇者になるなり魔王になるなに好きなことをしていいが、週に1回報告書を神宛てに提出すること、報告書を提出していれば、元の世界との連絡手段、年1度の帰世きせいが許される。


「……仕事かよ、帰省を帰世とか書いてるのを初めてみたわ……」


 このまま、野原に放置されていても、いずれ行き倒れそうなので説明書に書いてあることの検証を行う。


「ステータスボード オープン」


 なんで英語なんだと思ったが、普段日常的に会話しないように、母国語とは違う言葉に設定をされているらしい。


 ちなみに、異世界だけあってその言語も文字も異なるものであるが、

『ご都合主義で翻訳をされて困らないようになっているから無問題by神』

 らしい、死ねばいいのに。


 起動の言葉を受けて、左手の手のひらが輝くと、真っ黒な板が飛び出してきた。


「うおっ」


 思わず声がでて、空いている右手で心臓を抑える。


 自分の身体の中から異物が飛び出してくる経験は、この23年間で一度もなかったので無理もないだろう。


 そのまま深呼吸を繰り返す。

 段々と心拍数が落ち着いてきたので、その黒い板に目をやる。


 真っ黒ではあるのだが、モニターに表示された黒い画面のような色合いといえばいいんだろうか、手のひらからスマートフォンが生えたというのが一番適切な表現だろう。

 恐る恐る触ってみると・・・なんというか、プラスチックのような触感。


「うん、スマフォだわこれ・・・」


 ステータスボードの表面をなでるとその黒地の面に白抜きの文字が表示された。


--------------------------------

名前:ヤマト ツカサ

年齢:23

性別:男性

職業:村人

Lv:1【表示】


能力 【表示】

HP:40×2

MP:30×2

力:15×2

知力:18×2

精神:13×2

器用:17×2

敏捷:20×2

体力:14×2

運:3


スキル 【表示】

なし

(スキルポイント:残10)

称号 【表示】

神の暇つぶし(ステータス2倍)


【カスタマイズ】

--------------------------------


 どこかで見たことがあるようなステータス画面だ、上から順に目をやると、ステータスの×2という文字が目についた。


 なるほど、今のステータスが高いか低いかはわからないが、能力値そのものが2倍にされるわけか、ベースが上がるとその分も全部2倍になるってことだろう。

 現状の能力値が高いか低いかはよくわからないが、常人の2倍っていうことだから、まずまず高い値なんだろうとあたりをつける。


「って、おいっ、運!!」


 果てしなく不安になる……


 これまでの23年の人生を思い返せば、確かに幸運な人生ではなかった。

 だが、改めて数値で自分の運のなさを示されるともう、なんだかね、この世界には神も仏もないのかと思うよ。(実際にいるんだが)


 ステータスボードの表示の部分を触ると、該当する部分が非表示に変わる。


 ステータスボードは人にも見せれるようだが、名前や職業以外の項目については、非表示にできるらしい。

 称号など、きっと普通ではないことが容易にわかるので、隠せるのは地味に重要な気がする。


 最後にカスタマイズボタンを押すと、職業の選択、スキルポイントの分配(あまりに多く表示されるので、あとで改めて操作することとする。)、称号の個別の非表示等の選択ができるようだ。

 また、コンフィグでおよそゲームにありそうな、レベルアップの通知の有無など、いろんな項目が設定できるようである(こちらも後回し)。


 今度は、自分の世界への連絡方法を検証してみる。

 取説に書いてあった説明をみると、世間的には、辻褄を合うように調整をしているらしい。


 急に辞めると本来職場とゴタゴタするものだが、ご都合的な神の力とやらで、おれより優秀な人材を会社に送り込み、おれが抜けた穴は埋まるどころか会社の業績が向上していて、おれはというと海外にあるゲーム会社、Another world Ltd.にヘットハンティングされたことになっており、日本には年数回しか帰れないということで、家族も納得済みだそう。


 しかも、実家にもスカウトの契約金といってお金を振り込んであって、家族は両手を挙げて喜んだそうだ。


 そんな、情報はあまり知りたくはなかったが……


 そうそう、肝心の連絡先だが、アイテムボックスの中に、スマフォなるものが登録されてあった。


「アイテムボックス オープン」


 目の前の空間に突如四角い箱というよりは、板が現れた。

 左上にスマートフォンが見えるので。手を突っ込んでみると何もない空間に手が沈んでいく。


 うーん、不思議世界だ……


 取り出してみると、おれが使っていたスマートフォンそのまんまで、なぜか電波も常にMAXという気配り仕様だった。


 取説によると、インターネット等にも普通にアクセスできて、電池が切れたとしても、アイテムボックスに入れておけば、勝手に充電されるようになっているらしい。


 試しに、スマフォを触ってみると、メールが2件入っていた。


「母さん、あなたがこんなに立派になって、実家にも仕送りしてくれるようになるなんて思ってなかったわ。 おかげで、家も建て直すことにしたのよ」


 といった感じで、慣れ親しんだ実家が土台になっている写真が添付されていた。


 おい実家……金ももう使ったのか……って、おれの荷物ーーー!!


 実家の秘蔵のお宝たちにはもう会えないのか……ほほを涙がつたう。

 秘蔵のお宝がどのようなものかは、個人の名誉のために伏せさせていただく。


 なお、もう1つのメールは、神からで


「PCの中身は、部下の女神に検証させた上で処分させておいた、君もいい趣味だねー(マジ顔)by理解ある神」


 というメッセージ……あいつ、いつか殺す……


 というか、スマフォだけでもインターネットに普通にアクセスできるのは嬉しいな。


 夜に人さみしくなったとしても、日本の優秀な映像コンテンツのお世話になることができるだろうなどと思ったとか思わなかったとか。


 なんとなく、ステータスボードの使い方などもわかってきたので、メインイベントのスキルの選定を始めようと、おれはステータスボードを操作しだした。


 この後のスキルの選定が与える影響をこの時のおれは知らなかった。

 取説をしっかり読んでいたら回避できたかもしれなかったのに。

とりあえず、定番の失敗フラグを立てておきました。


*速攻で誤記を発見したので修正しました。

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