表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

そのままの貴方に。

作者: アルファン

この作品はフィクションです。

資料等を見ずに書いたためおかしな部分もあると思いますが

地球によく似た星の物語と思ってもらったほうがあれこれ考えずに済むかと。

ウィリアム「嫌ですね」

先ほどまできっちりと礼儀正しく立っていた一人の紳士が

ふてくされるように、横を向きこう言い放った。


アーサー「なら誰か当てがいるのか?」

ふぅとため息をつきながら実の息子をじろりと睨む


ウィリアム「父上、私はダイヤを好みません」


アーサー「誰が宝石の話をしている」

ウィリアムは顔を歪ませ、笑いをこらえながら


ウィリアム「父上、女性は宝石のはずです、我々男から見れば

      同じ人間とは思えません。愛し、慈しみ、愛でる

      女性は宝石よりも価値があるはずです。」


アーサー「確かに。ならばダイヤを好まぬとは?」

ウィリアムは相手を威圧するかのように体を大きく使い

熱をこもった声でこう言った。


ウィリアム「私には、社交界で出会う女性は皆等しくダイヤだと

      言っているのです。整えられた髪、素晴らしいドレス

      気品ある態度、声、全てが素晴らしいでしょう。

      しかし、私はもう飽き飽きです。皆が皆同じにみえる

      等しく光るダイヤを並べられて好きなものを選べと

      言われても、私にはその場から逃げ出す事しか

      選べないでしょう。」


アーサーはため息をつき、

アーサー「ならば、お前が選ぶ女性はどんな人がいいのだ?」


ウィリアム「私は、ダイヤの原石を見た時、心を奪われました

      社交界にいる女性がダイヤならきっといる筈です

      原石となる女性が!私はその人を選びます。」


アーサー「わかった。もう行って良い。」


ウィリアム「では」

ウィリアムが出ていった後、アーサーは机に伏せ沈痛な面持ち

を浮かべていた。


アーサー「もう22にもなるのに、嫁の貰い手にグダグダ言う

     男がいるか。 訳の解らん事を言いおって」




ウィリアムは鉱業を生業とするロスト家の長男であった。

幼い頃に家庭教師の元に預けられ、成人になる前に家に

帰ってきた。帰ってきた頃のウィリアムは誰の目に見ても

立派な紳士でありかつ勉学にも長けて企業家としての才も

評価される素晴らしき好青年であった。

しかし、彼の元にいくら正式な誘いがあってもそれを

拒否していた。しつこく食い下がってきた令嬢とも

数回あっただけで、表面上でしか意味をなさなくなった。


アーサーもウィリアムの手腕に大いに助けられており

この事について強くは言ってこなかったが、さっさと

家督を継がしたいために、今日のように声がかかった令嬢を

押している。しかしこれもウィリアムは全て断っている


アーサー「あいつにも困ったものだ・・・」

酒を少し飲み交わしながら談話をする。

アーサー夫婦は寝る前にいつもしていた。

エレノア「でも、本人にその気が無ければ婚姻など

     とても無理なことですわ。」

アーサー「わかっている。だがしてもらわなければ困る

     このままではウィリアムの評価に傷がつく

     それだけは避けたい。」

エレノア「私たちみたいに両家が決めてしまったことでも

     こうして幸せに暮らしているのだから

     婚約者でも作ってしまいますか?」

アーサー「無理を言って出ていかれても困るのは私なんだよ・・」


アーサーとエレノアは政略結婚ではあったが

お互いが思いあった暮らしを心掛けた為

夫婦仲は円満である。



その日、ウィリアムは新しく出来た鉱山に視察に来ていた

責任者からの説明を聞き流しながら一人の女性に目を向けていた

その子は、髪が黒く 肌色は褐色で現地のものではないのは

明らかだった。


ウィリアム「あそこにいる女性は?」

たまらず尋ねた。

責任者「ああ、ここが動き始めたぐらいに来て

    働きたいと言い出しまして。人手も足りてなかったし

    ちょうどいいと思ったんですが、まずかったですかね?」


本来ならまずいのだが、ウィリアムはその事に触れず

彼女のことが気になってしょうがなかった。

その日は、帰らずに女性の仕事が終わるのを今かと待ちわびた

主任に話したいと伝え、小屋でウィリアムは待っていた。

そして扉は開き、彼女が入ってきた。


彼女「あ、あのー私と話したいって・・・」

おずおずと入りながらそう尋ねる彼女にウィリアムは興奮した。

ウィリアム「突然失礼いました。お疲れの所申し訳ありません」

そういって、女性に振る舞う一通りの礼を尽くした。


彼女「それであの、私に何か?」

ウィリアムが促したイスに腰を下し、そうつぶやいた

ウィリアム「いえ、ただあなたとお話したかっただけです。

      本当にそれだけなのでどうぞもっと楽に。」

それから、夜が深けるまで話し合った。

と言っても、私が質問攻めをしただけだが・・


彼女には名前がなかった。気づけば一人だったという

彼女は道に寝る生活の中でこの国の常識を少しずつ

手に入れたという。それから仕事を捜しながらさまよい

ここに着いたという。そして、自分が奴隷の子だろう

というのも彼女は知っていた。

この国で肌の色が違う人は日陰者になるしかない。

いやでも、その事だけは知ったはずだろう。


彼女「だから、不思議です。なぜ私なんかと話したいなんて

   思ったのですか?」

ウィリアム「そう思ったのだからしょうがない。一目惚れだ」

ウィリアムはそれまで彼女に向けた笑顔とは違う、無邪気な

笑顔を彼女に向けながらそう言った。


それから彼女とは別れ、別れ際にまた来ることを伝えた。

最後に彼女に名を上げた

「エーデル」と



それからの私は、エーデルのところに通い詰めていた。

彼女の部屋はとても人が住めるようなところではなかったが

私の心はそんなことすら気にしなかった。


アーサー「最近、社交の誘いを蹴っているみたいだな。」

アーサーはジロリとたたずむ息子を睨む

が、次第にほほがゆるみニヤつきながら付け加えた

アーサー「原石でも見つけたのか?」


ウィリアム「決意が固まり、相手の都合がついたら

      お話しします。」



エレノア「やっと相手が見つかったのね」

渡されたワインを手に取りホッとした表情でそう言った。

アーサー「ああ、これで家督を継がせられる。あいつなら

     どんなお嬢さんでも、ロスト家を盛り上げられるだろう

     これでロスト家は安泰だ。」



さっそくウィリアムはエーデルに頼みに行った。

エーデル「わ、私がウィリアム様のお屋敷に!?」

ウィリアム「そうだ。父に紹介し、そのまま結婚式を上げよう」

エーデルは、ワタワタと手を振りながら

エーデル「無茶です!私なんかじゃお許しがでるわけありません!」

そんなものどうとでもするとウィリアムは言い

エーデルを連れ出した。

馬車は田舎道を走りぬけ、あっという間に都会にでた。

エーデル「せめて服を着替えさせてください!

     作業服なんかじゃとても顔向けできません!」

ウィリアム「そういえばそうだな。よし服を買いに行こう」


そして一番大きな服屋につき、中に入った。

ウィリアム「この人に合ったドレスがほしい」

「かしこまりました」と店員は言うが

エーデルをまじまじと見つめて、正気なのか?といった

視線を投げかけていた。

ウィリアム「早くしてくれ、時間がもったいない」


明らかに嫌そうに、店員がドレスを持ってきて

エーデルを見立てていた。

しかし、どれもエーデルには似あっておらず

たまらず、ウィリアムが怒鳴り他の店員に変えさせた。


「失礼ですが、どういった目的でドレスを?」

幾ばくか歳老いた女性がこう聞いてきた。

ウィリアム「この人を父に合わす。そのまま結婚式もやる予定だ」

「あなたはどこかの名家様で?」

ウィリアム「ロスト家の長男だ。」


あたりがざわつく。

「ならばこちらもメンツがあります。仕上げて見せましょう」

奥から2人の店員を呼び、せっせとエーデルを仕立てた。

その間、エーデルは一言も話せずにいた。



ウィリアム「これは・・・」

「どうでしょうか?服よりも荒れ放題のお顔のほうが難しかった

 ですわ。それに無駄についた筋肉も邪魔でしたが。」

そこには確かに荒削りだが、一つの宝石が出来上がっていた。

ウィリアム「素晴らしい・・・見違えたよ。」

エーデル「は、恥ずかしいです。それに苦しくて

     動きずらいし、でもこれでなんとか失礼はせずに

     済むでしょうか?」

ウィリアムはもちろんだともといい、軽い口づけをした後

馬車に乗り込んだ。



「おかえりなさいませ、おぼっちゃ・・・ま・・。」

ウィリアム「父はいるね?」

仰天するメイドにそう聞き一目散に駆け出した。


ウィリアム「父上!お連れしました!」

勢い良く扉を開け、叫んだ。

アーサー「おお、待っていた・・・。」

アーサーの顔がみるみる変わっていく

ウィリアム「さぁエーデル挨拶を」

ぎごちなく少し前に出て頭を下げる

エーデル「初めまして、エーデルと申します」


アーサーは固まっていた。どんなお嬢さんでもいいと思っていたが

まさか、肌の色が違う女性を連れてくるとは思ってもみなかった。

確かに、社交界にはいない女性だ。美しいと思えるかもしれない

しかし、そんなことは問題じゃなかった。それ以前の問題だった


ウィリアム「父上?」

固まる父に問う

アーサー「ウィリアム、冗談はよせ。」

怒りを震わせながらアーサーは噛み潰しながら言った

ウィリアム「冗談?なにを言われる私はこの人と

      結婚する。美しいでしょう?」


アーサー「ふざけるのもいい加減にしろ!!」

机を叩き、肩を震わせていた。アーサーは

息子に初めてここまでの怒りを見せた。


エーデルはすくみ、泣きそうに肩を丸めていた。

アーサー「一体いくらで買ってきたのだその奴隷は

     神聖なるロスト家の屋敷にあげるとは

     どういうつもりだ!!」

ウィリアム「エーデルは奴隷ではない!!」


ウィリアムも少々怯んでいたが、アーサーの

「奴隷」という発言に頭にきていた。

ウィリアム「この人は我々ロスト家の従業員です。

      決して奴隷などではありません!!

      彼女の気持ちも考えてください!

      いつも紳士な父上はどこに行かれた!?」


アーサー「まさか、異人だとは・・せいぜいメイドとかだと

     思っていたが。」

ウィリアム「彼女を見てください、どこが不満ですか!?

      ドレスも着せ、最低限の礼はしているはずです!」

アーサー「お前はトコトンわかってない!

     そいつをこの場に連れてきただけで失礼に値する!

     それほど異人はこの社交界では嫌われるのだ!

     お前はロスト家を守っていくために

     まだまだ紹介せねばならない方達が大勢いる

     その場にそいつを連れていってみろ!

     その場で縁を切られるぞ!!

     お前はロスト家を滅ぼす気か!?

     寝る間も惜しんで、お前もよそに預け

     必死に!必死に築いてきたこのロスト家を!

     お前は無かったことにすると言うのかぁぁぁぁあ!?」

そう言い終わった後、アーサーは苦しみ倒れた。

すぐに、病院に連れていきアーサーは入院生活となった。


屋敷に戻った後、エーデルはひたすら謝り続けた。

エーデル「ごめんなさい、ごめんなさい」

涙がドレスを濡らしていくさまはとても耐えられなかった。

私はエーデルを抱きしめ続けその日は終えた。



次の日は、母と話した。

母は、穏やかだが諭すように話した。

エレノア「私は、ひとまず貴方に愛せる心があることを

     母として嬉しく思います。

     ただ、あなたが追い求める愛は

     私たちが生きてる世界では障害にしかなりません

     あなたは、彼女の気持ちを考えてと言ったみたいですが

     アーサーの気持ちも考えてあげてほしい。

     それがアーサーの妻である私の気持ちよ。」


いつもなら日差しが程よく入り、のどかな雰囲気を作る

この空間は、どこか沈んでいた。主人を失った悲しみを

屋敷が出しているようだった。


ウィリアム「ならば母さんもエーデルを諦めろとおっしゃるか?」

エレノアは、エーデルの方をちらりと見て、

エレノア「この子のことは悪くいうつもりはありません。

     悪く言う道理がありません。

     ただ、先程も言った通り我々の世界では

     残念だけど障害にしかなりえないの

     それはあなたの宿命でもあるのよウィリアム」

私が諦めてしまえば、エーデルのことだ

すぐにでも、行方をくらましてしまうだろう。

しかし、どうしてもその気にはなれなかった。

いま彼女を離してしまえば、二度と会えなくなる予感がした

そして、二度と誰かを愛することも。


ウィリアム「必ず、エーデルを娶り尚且つロスト家も守る

      これを約束します。そうすれば母さんは認めてくれる

      のだろう?」

エレノア「ええ、そうね。ただ口だけでは信じられないわ。

     そして、その許しをこうのは私ではなくアーサーよ」



病院へ行く途中、エーデルが何度も「ここで降ろしてほしい」と

私に言ってきた。その怯えきった表情を見ていると

私がやっていることはやっていいことなのかと不安になる。

だが、私はエーデルを降ろさず着くまで手を繋いでいた。


ウィリアム「父上、入ります」

そう言い病室の扉を開けた。

アーサー「また来たか、親不孝者が」

皮肉をきかされながら、体を起こし、窓を開けるように頼まれた

アーサー「気持ちは変わらないのか?」

ウィリアム「ええ」



ウィリアム「ただ、やりようはあるんじゃないでしょうか?」


アーサー「お前が二人になるようなものだ。」


ウィリアム「しかし、そうするしかありません。」


アーサー「とっくに、気づいているだろう。

     両方取ればお前自身がいつか壊れることを」


ウィリアム「私は、この恋を終わらせたくありません

      そして、親不孝者と呼ばれながら

      人生を謳歌できるとも思いません」


二人の考えはすでに決まっており、一致していた。


ウィリアム「父上の口からお聞かせください

      私からはとても言えません。」

アーサー「父としてそして、長としてか。」

ウィリアムは静かにうなずき

エーデルを近くに呼び寄せた。


アーサー「では、まず結婚するにしても

     籍はいれられん。そしてそのように

     振る舞うことさえ許されん。

     それに二人は耐えられるのか?」


ウィリアムは気まずそうにエーデルを見た。

エーデルはしっかりと頷いた。


アーサー「二人は別々に住み、会うことも月に一回が

     限度だろう。それでもか?」

エーデルはすぐに頷いた。


アーサー「強いお嬢さんだ。」

アーサーは初めてエーデルをまっすぐ見つめ

かすかに微笑んだ。これが最初で最後のエーデルに対する

アーサーの好意的な行動だった。



それから、私はカルナック家の次女と結婚し家督を継いだ。

もちろん、形としてだがそれは私の心だけが知ることだった。

エーデルは郊外に住まいを作り、絶対に贅沢できない生活を

送っていた。月に一回会う時に金を渡していたが

会うたびにもっと少なくしてほしいと彼女にせがまれ

今では本当に最低限の金しか渡していない。

しかし、私の愛は変わらずむしろ増大していった。

一回だけ、月に二回行ったことがあるが

エーデルに門前払いを食らったこともあった。


時代は工業が主流になりつつあり、ロスト家も

積極的に取り行っていたが、私は抵抗を感じていた。

労働者を馬車馬のように働かせねばほかの企業に出し抜かれる

この状況にほとほとウンザリしていた。

そんな時、大規模な労働者デモが起き上流階級は大幅に

強制的に数を減らしていった。私はこの事をいの一番に気づき

労働者にボーナスをやり、妻と子に財産を与え信頼の置ける

友人に引き取ってもらった。そして私は・・・



エーデル「おかえりなさい」


ウィリアム「ただいま」


そして私は、エーデルと共に小さな牧場を作り

貧しくも幸せな家庭を満喫していた。

エーデルにやっと子供を作らせてあげることもでき

私は人生を謳歌していた。


ウィリアム「長かったなぁ・・・」

エーデル「でも、こうしてあなたと生活できる日が来るなんて

     思いませんでしたもの。そう感じて当然」

ウィリアム「いやはや、こうして生活を共にすると

      君に掛けた苦労がよくわかってしまうよ」

エーデル「あら、あなたの苦労と比べるとずいぶんと

     小さな苦労でしょう?」

ウィリアム「まぁ確かにノビノビできているよ。」

エーデル「私も、そのままの貴方に会えてよかった・・」


ウィリアム「いつから気づいていたんだ?」

エーデル「最初からです!」


                                 ~終~






 




読んでいただきありがとうございます。

エーデルの意味ですが、「原石」としています。

ドイツ語から拝借しましたが、発音が全然違います。

EdelsteinのEdelの部分を英語読みした感じでエーデルと付けさせてもらいました

余談ですが、エーデルは鉱夫達にアウバーと呼ばれてるようにしようかなと。

Aubergineこちらも頭を英語読みで意味はナスです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ