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vs魔王 ひと月前 part3(side 聖女)

私は、その方へのお礼もそこそこに走り出しました。


(たしかに、私たちはそういうことに疎いから気づかなかったけど、魔王城に近づくにつれ、村は疲弊してる……そんな場所あるはずもない……。じゃあ今まで彼はどこへ?)


しばらく走っていると、人だかりができているのを見つけました。



「おい、兄ちゃん大丈夫か?」

「びくともしねえぞ……おい、生きてるか?」



「すみません!通してください!」



人ごみをかき分けると、そこには彼が倒れていました。

顔は真っ青を通り越して白くなり、今にも呼吸が止まってしまいそうな彼が。



「ゼ…ゼム……さん……?」

彼はもはや意識を手放そうとしていました。何か、つぶやいているようでしたが、はっきりとは聞こえず、


「たす……る……ぜったい……」

とだけ聞こえました。



「おい、姉ちゃん!回復魔法が使えるならすぐ使ってやれ!じゃなきゃこいつ、死んじまうぞ!」


町の人の言葉にはっとしたわたしは、すぐに回復魔法を唱えました。

しかし、回復しきっておらず、彼は苦しそうにしています。



「病人はどちらです!?」

そうこうしているうちに、この町の教会のシスターが現れました。


「これは……毒竜にやられたのね……かわいそうに……。」


「ぇ……?毒竜ですか……?」

私はわけもわからずこぼすと、


「あなた様は……!いえ、失礼いたしました。この町に運ばれてくる方は、皆さんこのような状態で……おそらく毒の一種かとは思うのですが、なにぶん私たちでは手の施しようもなく……。ですが、聖女様がおられるのなら、上級の解毒魔法で何とか一命はとりとめるかもしれません!」


「!わかりました!」


私が上級の解毒魔法を唱えると、彼の顔色は少しずつ良くなり、呼吸も安定しました。


「しかし、予断を許さない状況ですので、ぜひうちの教会を使って下さい!」


というシスターのお言葉に甘え、町の人と彼を教会に運び込みました。




治療中彼は、うなされているような声を上げて苦しんでいましたが、意識を取り戻したようでした。


「……ここは……?」


「教会の治療室ですよ、ゼムさん」


と、私が言うと、彼は今までの旅では見せたことがないような、優しい顔で、


「そうか、ありがとう」


と言いました。私は驚いてしまい、何も言うことができませんでした。

彼も意識がはっきりしてきたのか、今の自分が置かれた状況を把握し始め、一気に蒼ざめたかと思うと、



「……っ!!余計なことしやがって!」


と言いました。


「ねえゼムさん、本当のあなたは、もしかして、さっきまでの……?」



「ああ!?……そんなわけ……、今更もう無理か……。そうだよ。ごめんね」


彼が急変したことに、私は驚きを隠せませんでした。


「……どうして、?あなたは、あなたは何を隠しているんですか?」


「わかった。説明する。でも、その前に、僕と契約を結んでほしい。僕の秘密を誰にも言わない契約を」



彼が突然契約を申し出てきたので、私は深く考えずに、「は、はい」と返事をしてしまいました。


周囲が魔法契約の光に包まれました。



「守護騎士ゼムが聖女アイリスと女神アルテミスの名のもとに契約せんとす。契約内容は、僕の秘密を誰にも言わないこと。契約が破られた場合――」


私はこの時、内心(しまった!)と思っていました。契約を破った際の償いは、女神様の名のもとに、必ず遂行されなければならないものです。

今の状況では、どれだけ私にとって不利な内容を言われてもおかしくありません。


ですが、彼は、この後の私にとって、最も残酷な償いを選んだのです。





僕の命を持って償わんとす――」

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