vs魔王後
昨夜のことを思い出すと、三人には今でも新鮮な怒りが蘇ってくる。
いかに下衆な守護騎士といえど、ここまでの戦いについてきたのだから、最後の戦いに来ないなどと、思うはずもなかった。
だからこそ、四人でつかんだこの勝利の歓喜もひとしおなのだ。
しかし、聖女アイリスだけは違った。
彼女は、王の間に散らばった石像の、顔の部分を抱きしめて泣き叫んでいる。
「あぁ……ゼム、ゼム……!」
「な、なぁ、アイリス、さっきから何言ってんだよ?」
「ゼムは昨日国に帰るって置き手紙があったじゃない。実際、あいつの部屋はもぬけの殻だったし……」
「ね、ねぇ、アイリス」
勇者はあることに気づいた。
「君が抱いている石像の顔…見せてくれない?」
アイリスは、泣きながらその顔を彼らに向けた。
三人の息が止まった。
「え、あ、なんで…?」
「ウソ…だろ?なんで、?」
その石像は、昨夜袂を分かった守護騎士と同じ顔をしていた。
「どう、いうこと?アイリス…?説明、説明して欲しいな…?」
勇者ヴィオラが震える手をアイリスに伸ばしながら尋ねた。
「みんな、ゼムのスキルって知ってる?」
アイリスがしゃくりあげながらいった。
誰も答えるものはいない。
「ゼムのスキルは、『肩がわり』って、言うんだって……。その、効果は、パーティの受けた攻撃を自分が肩代わりするの……ゼムは、ゼムはずっと……」
三人とも震えが止まらない。
「私たちのダメージを受け続けていたの……」
先ほどまでの歓喜が嘘のように静寂に包まれた。
「な、んで?アイツは戦闘が終わったらすぐ娼館に行って、女、女って…」
「それもウソなの……治療院に行って、傷を治してもらってた」
「じゃ、じゃああいつが戦闘中にふらっと抜けてたのは……」
「肩代わりしたダメージを隠れてポーションで治していたの」
「あ、う、まさか、まさか!!」
三人とも気づいてしまった。
「そう…今日のダメージは、全部ゼムが肩がわりして、」
ここまで言うと、アイリスはまた泣き始めてしまった。
「ウソ…アタシ、そんな…え、?」
「オレ、オレ、なんで、?」
血の気の失せた二人と同じぐらい血の気の
失せた顔で、勇者は尋ねた。
「どうして、どうしておしえてくれなかったの、?」
アイリスは泣きながら言った。
「私だって、私だって!!みんなに言いたかったの!!でも、ゼムに、魔法契約で縛られて……言えなかったの!!」




