守護騎士と目覚め
長い、長い夢を見ていた。
よみがえってきたのは、遠い遠い過去、いや、前世の記憶。
僕は日本という国で営業という仕事をするサラリーマンをしていた。恋人もおらず、ひたすらに営業を続ける日々。
そんな生活の中、僕の癒しとなったのがノベルゲームだった。
中でも、ヤンデレ好きのゲーム作家さんが作った、「守護騎士~勇者の盾~」というゲームにどっぷりとはまっていた。
ノベルゲー特有のマルチエンドなので、もちろん、勇者パーティがヤンデレ化しない、「真・ハッピーエンド」も存在した。
しかしまあ、パーティのメンタルの弱いこと弱いこと。
勇者はすぐに守護騎士を閉じ込めようとするし、魔法使いは尊厳破壊される。武闘家は妄想家族計画を繰り広げ、聖女は狂信者化。
挙句女神さまも守護騎士を運命の聖人に定めようとするルートまであって、もうほんと、お腹いっぱい。
で、一番やばいルートが、「嫌われ守護騎士、全員を陰で守り切るエンド」ってやつ。
もうね、アホかと。全員がいっぺんに病み堕ちするルートだなんて、誰が見て―んだよ。オレの他に、いますかって、いねーか、はは。
――かくして意識は混ざり合い、やがて覚醒へと向かう。
「ぐ、おお、なんだこりゃ……徹夜しまくって休みに寝たら二十時間寝てた時みたいな……」
ふと、周りを見渡してみると、住み慣れた我が家ではなく、ごちゃごちゃとモノが置かれている木造の部屋だった。
一気に血の気が引いた。
「え……?オレ、何かやっちゃいました……?」
やべえええええ!!!思い出せ、昨日何してた?確か、取引先との接待で、アブラギッシュ社長にしこたま飲まされて、スナックのカラオケでドブネズミみたいになりたくなって、って!
「スマホ!!」
慌てて枕元にスマホがないか確認するが、スマホがない。というか、左手もない。……ん??
「おわああああ!!!左手があああああ!!??」
慌てふためいていると、鏡に自分が映っているのを見つけた。
「は……??え……?ゼムじゃん……」
どこからどう見てもゼムだった。左手を上げるゼム、顔をなでるゼム。全部俺の動作と連動している。
「い、異世界転生ってコト!!?」
そう俺が叫んだ時、外からあわただしい足音が聞こえ、ドアが開いた。そこには、超絶美人わがままボディシスターが立っていた。
「ゼム様!!??……ウソ、ぜ、ゼム様……」
シスターはオレを見ると、ハラハラと涙を流し、即座に祈りの姿勢を取った。
「あぁぁぁぁぁぁぁあ……ぜむさまぁ……わたしのかみさま……お目覚めになられたのですね……」
状況が呑み込めず、彼女の顔をじっと見つめると、あることに気づいた。
「え、もしかしてアイリス……?」
とオレが言うと、
アイリスはとんでもない速さで何かをつぶやいたかと思うと、
「そう、ですよね。ゼム様。あなたが、最後に魔王の呪いを受けてから、早三年が経ちました……。」
へえー守護騎士ってそういう裏設定があるんだあー……
ちょっと待て、これ、もしかしたら、あのルートに入ってるんじゃ……?
「皆は?!!皆は無事なのか!!??」
オレがみんなの無事(主にメンタル面で)を問うと、
「あなたは……、本当にあなた様は……、私たちのことばっかり考えて……」
と光を失った目をしながら、涙を流していた。




