第12話 断罪パーティ・テンプレ崩壊
王城の大広間は、宝石箱みたいに光で満ちていた。
シャンデリア、鏡張りの柱、色とりどりのドレスと軍服。
そしてその真ん中で――私は、用意された“処刑台”のど真ん中に立たされていた。
(……うん。テンプレ通り、雰囲気だけは満点ね)
壁際にずらっと並んだ貴族たちの視線が、一斉にこちらへ注がれる。
ささやき声のほとんどは、きっと「悪役令嬢のお通りだ」系統だろう。
それでも、前世オタク女子としては、こういう場面の“段取り”は嫌というほど知っている。
まず、王太子が壇上に上がって――
「本日は、卒業と、新たな門出を祝う夜であるはずだった」
リオネル殿下の低い声が、静まり返った大広間に響く。
「しかし、その前に――我々は一つ、見過ごせぬ“罪”と向き合わねばならない」
周囲の空気がぴん、と張りつめる。
(はいはい、来ました。“断罪イベント開幕”の合図)
私は、すっと背筋を伸ばした。
膝が震えないように、ドレスの裾を指先で軽くつまんで固定する。
視界の端で、きらりと何かが光った。
黒い――栞。
誰にも見えない高さに浮かぶ、それは。
王都記録局――いえ、輪廻庁ストーリー課でさんざん見せられた「黒い栞」と同じ形をしていた。
(“ここで話が終わる予定ですよ”って印ね)
でも、そのすぐ横に。
かすかににじむような、七色の細い栞が一本、そっと挟まっているのも見えた。
(……先生たち、ちゃんと間に合わせてくれたんだ)
胸の奥で、小さく息を吸い込む。
「レティシア・フォン・アルマ嬢」
リオネル殿下の視線が、まっすぐこちらに向いた。
「この場で、幾つかの疑念について、君に問いたださねばならない」
「畏まりました、殿下」
声が震えないように、前世で覚えた“腹式呼吸”を総動員する。
(さあ、台本通りに来なさい。こっちも、台本ごと叩き返してやるから)
◇
――視界の隅、UIレイヤー。
「始まったねぇ……」
俺は、ワイングラスを持ったふりをしながら、瞼の裏側に浮かぶワールドコアのログをちらりと見た。
【イベント:王立学園卒業夜会/公開断罪パーティ】
【悪役令嬢断罪テンプレ:適用準備 85%】
【黒い栞:現在位置=タイムライン終端】
「三城さん」
肩口のマスコット――ミニルナが、テーブルクロスの影からこっそり顔を出す。
【七色栞:試作ルート 有効】
【レティシア関連ログ:安定】
「とりあえず、“断罪した瞬間に物語終了”ルートは、もう外してあります。
あとは――」
「“ここからどう動くか”で決まる、だろ」
俺はグラスを唇に運ぶふりをしながら、輪の中心――レティシアを見つめた。
主役テーブルには、王太子リオネルとその取り巻き、それから“公式ヒロイン”のマリアが座っている。
マリアの顔色は、どこか迷いを孕んでいた。
(ログ調整は、ギリギリ間に合ったか……?)
ルナとセラが夜通し繋ぎ直してくれた「証言ログ」。
それが、この断罪イベントでどう出るか――。
◇
「まず一つ目の疑義だ」
リオネル殿下が、手にした巻物を開く。
「レティシア。君は、平民出身のマリア嬢に対し、度重なる嫌がらせを行った疑いがある」
ざわ、と周囲が揺れた。
(はいはい、項目その一。“テンプレ悪役によるいじめ行為”)
前世の記憶を総動員すると、ここは本来――
『平民のくせに王太子に近づくなんて身の程を知りなさい』
『あなたにこの場はふさわしくありませんわ』
みたいな、分かりやすい嫌味台詞が並ぶ場面、である。
でも、今の“実録レティシアログ”は、ちょっと違う。
「証言者として、マリア・ローゼ嬢。前へ」
殿下の声に促されて、マリアが一歩、前に出る。
白いドレスの裾が震えている。
でも、その瞳は――私の記憶にあるゲーム画面より、ずっと複雑な色をしていた。
「マリア嬢。レティシア嬢から受けた仕打ちを、この場で述べてくれ」
「……はい」
マリアは、ぎゅっと拳を握りしめた。
「レティシア様は、たしかに……最初は、怖かったです」
大広間の空気がまた、わずかに揺れる。
「厳しい言葉も、多くて。
『身の程を弁えなさい』とか、『礼儀を学びなさい』とか……」
(あー……言いましたねそれは。めちゃくちゃオブラートに包んだけど)
あれは、完全に“フラグ管理と事故防止のため”だったのだが、第三者視点ではそうは見えないのだろう。
「でも――」
そこで、マリアは一度、息を飲んだ。
空気が変わる。
「でも、今考えると……レティシア様は、いつも“私一人”を責めていたわけじゃありません」
ざわっ、と今度はさざ波ではなく、明確などよめきが起きた。
「え?」
「な、何を……?」
「礼儀作法や危ない行動について注意されたのは、私だけじゃありませんでした。
他の令嬢方にも、同じように……いえ、むしろ身分の高い方ほど厳しく」
マリアの瞳が、迷いながらも私をまっすぐに捉える。
「『誰か一人が恥をかいたら、周りの皆も困るでしょう』って。
あの言葉……当時は悔しくて、聞きたくなかったけど――」
彼女はぎゅっと唇を噛んだ。
「今は……あれが“私のためでもあった”って、気づいてしまって」
言いながら、自分でも困惑しているのが分かる声音。
周囲の令嬢たちの間から、ぽつぽつとささやきが漏れた。
「たしかに、あの時あの子に言ってた注意……私も一緒に怒られたわね」
「図書室の本を勝手に持ち出しては駄目だ、とか……」
「舞踏会のステップ練習も、つきあってくれたじゃない」
(……セラさんとルナさん、よくここまでログを繋いでくれたわね)
胸の奥で、そっと感謝を呟く。
◇
「ログ、割れてきてますね〜」
ミニルナが、俺の視界に小さなウィンドウを浮かべる。
【証言ログ:分岐発生】
【“一方的ないじめ”→“厳しめの指導+周囲も対象”へラベル変更】
「断罪テンプレ側の“前提条件”が、ちょっとずつ崩れてる」
「だが、まだ押し切られるぞ」
俺は、王太子の顔を見る。
リオネルの表情は、揺れていた。
でも、その口にくわえさせられている“台本”までは、まだ外れていない。
「……しかし、マリア」
殿下は苦しげに眉根を寄せる。
「君は、数多くの場で涙を流していたはずだ。
レティシアが君に対し、心無い言葉を――」
「それは……」
マリアが、何か言いかけて――言葉を飲み込んだ。
まるで、喉に見えない手をかけられたみたいに。
(ルナ)
【はいはい、今“上から”ノイズ入れられましたね〜】
ミニルナの耳がぴくりと動く。
【ヒロイン削減テンプレ:介入試行】
【対象:マリア発言ログ/方向性=“レティシア悪役固定”】
(やっぱり来たか。テンプレAIの押し戻し)
俺は、グラスを置いて小さく息をついた。
「――では、次の証言者を」
リオネルが話を進めようとした、その瞬間。
「よろしいでしょうか、殿下」
私は、一歩前に出た。
周囲のざわめきが、一瞬で凍りつく。
本来の台本なら、ここで私は黙って俯いているか、取り乱して叫ぶか。
どちらにせよ、“受け身の悪役”で終わるはずだった。
でも、今日は違う。
「レティシア」
リオネルの声に、かすかな警告の色が混ざる。
「まだ尋問は――」
「尋問と仰るのであれば、弁明の機会も頂けるのが、最低限の礼節ではございませんこと?」
にっこり、と。
いつもの“令嬢スマイル”を、最大限に引き上げてみせる。
「殿下。わたくしが、この学園で“何をしてきたか”。
“どこまでなら許されて、どこからは危険だったか”。
――その全てを、ご説明する必要があると存じますわ」
◇
「来た」
俺は、無意識に手を握りしめていた。
レティシアの足元で、見えない魔法陣――じゃない、構造ログが光る。
【レティシア:ステータス】
【役割:悪役令嬢/断罪対象 → “案件内ヒロイン候補”ラベル強化】
「三城さん、今の一歩で、ラベルがまた上書きされましたよ〜」
「ここからだ」
俺は、レティシアの口元を見つめる。
(“台本に書いてないセリフ”で、どこまでひっくり返せるか)
◇
「まず――」
私は、手袋をはめた両手を前で重ねた。
「マリア嬢に対する“注意”について。
たしかにわたくしは、厳しい言葉を用いました」
ざわめきが、再び膨らむ。
認めた、と取られたのだろう。
「ですが、それは“平民だから”ではございません」
言葉に力を込める。
「この学園に通う者は、皆、いずれどこかの“顔”となる方々。
身分の高低に関わらず、“あの場で、あの振る舞いをすれば誰が困るか”を考えたまでです」
「……誰が、困る?」
リオネルが、思わず聞き返した。
「殿下。
たとえば、夜会の場でドレスコードを守らなければ――非難されるのは本人だけではありません。
指導の行き届いていないご家族、そして、招いた側である王家の格まで問われます」
ゆっくりと、会場を見渡す。
「図書室の本を無断で持ち出せば、管理の不備が問われます。
危険な魔法を講義棟の廊下で使えば――最悪、怪我人が出る」
何人かの教師が、びくりと肩を震わせる気配がした。
「わたくしが“悪役”として引き受けていたのは――
皆様の代わりに、嫌われ役を担うことでしたわ」
沈黙。
それは、断罪イベントの台本には、一行も書かれていない“解釈”だった。
◇
「ログ補完、入ってきてますね……!」
ミニルナが、ぱたぱたと小さな手を動かす。
【過去ログ再評価:進行中】
【“理不尽ないじめ”タグ → “リスク管理指導”タグに書き換え候補】
「三城さんのほうでも、ワールドコアに“補助コメント”投げときました」
「助かる」
俺は、小さく息を吐いた。
レティシアは、自分の役割を誰かに押しつけられたわけじゃない。
自覚的に、「嫌われ役」を選んでいた。
そこに、“踏み台で終わるのは嫌だ”という前世オタク女子の意地が乗っている。
(その二つが噛み合った瞬間が――今だ)
◇
「それに――」
私は、くすりと笑った。
「もし本当に、わたくしが邪魔なだけの悪役だったのだとしたら。
どうして、殿下はこれほど長く、わたくしを婚約者に据え続けてくださったのでしょう?」
会場が、凍りついた。
そう、これは“テンプレ”の穴。
悪役令嬢を断罪する王子は、だいたい――
「本当は嫌いだった」「無理やり婚約させられていた」とか、なんとか言う。
けれど、現実のログは、そう綺麗に揃っていない。
「入学試験の前から、舞踏の練習にお付き合いくださったのは、どなたでしたか?」
リオネルの表情が、明らかに揺れた。
「学園の図書管理の改善案に、真っ先に署名してくださったのは?」
「それは……」
王太子の喉が、ごくりと鳴る。
「殿下。
もし本当に、わたくしが“断罪されるためだけの婚約者”だったのだとしたら――」
まっすぐ、彼の目を見る。
「それは、“殿下自身の物語”を、あまりにも安く見積もりすぎではなくて?」
◇
「うわ、それは刺さる」
思わず、心の中で拍手した。
ミニルナが、横でぴょこぴょこ跳ねる。
【王太子ログ:動揺値 急上昇】
【“テンプレ通りの優しい王子様” → “自分で選ぶ主人公候補”ラベル追加】
「リオネル殿下のルートも、今、ちょっとだけ書き換わりましたね〜」
「こっちも、“誰かの踏み台”じゃないって話だな」
悪役令嬢ばかりじゃない。
王子だって、本来は“自分で選ぶ権利”を持っている。
台本に書かれた“都合のいい優しさ”だけで生きるのは、もうやめろ――
レティシアは、そう迫っているのだ。
◇
「……レティシア」
リオネルの声が、低く響く。
「君は、いつから――」
「最初から、ですわ」
即答した自分に、少しだけ笑いそうになった。
「この物語に“転生”した時から、ずっと。
わたくしは、自分の役割を考えていました」
転生、という言葉に、周囲がざわめく。
けれど、それはもう隠しておくつもりのない事実だった。
「元いた世界で、何度も読んだのです。“悪役令嬢が断罪されて終わる物語”を。
そのたびに思いましたわ。――これ、本当にこれで終わっていいの、って」
言葉が、勝手に熱を帯びる。
「だから、決めましたの。
自分がこの立場になったなら、せめて、“誰かの物語を短くする役”だけはやめようって」
マリアが、小さく息を呑むのが見えた。
「マリア嬢」
私は、そっと彼女を見る。
「たしかに、わたくしはあなたに厳しくしました。
でも、それは――あなたが“この国の物語の中で、長く生きていけるように”するためですわ」
「……レティシア様」
「そして、殿下」
王太子を見据える。
「わたくしの物語を、ここで終わらせるのは簡単です。
台本も、場も、揃っておりますから」
視界の端で、黒い栞が小さく揺れた。
「ですが――」
胸の内側で、ぐっと拳を握る。
「ここでわたくしを切り捨てれば、“王国の物語のほうが先に尽きる”かもしれないこと。
その可能性については、もう一度だけ、考えていただきたいのです」
「どういう意味だ?」
誰かが呟いた。
それは、きっとこの場にいる多くの貴族の本音でもあったろう。
「この数ヶ月、わたくしがどのような提案をし、どのような改善をしてきたか――
殿下は、ご存じですよね?」
図書管理の整理。
領地ごとの税収報告の統一フォーマット。
魔物被害報告の集計ルート。
それらは、本来“共闘ルート”で生きるはずだった伏線たちだ。
「わたくしは、“王妃になるためにふさわしい振る舞い”を、誰より必死で学んできました。
――それは、殿下の物語を長くするためでもあります」
◇
「論理で殴ってる……」
思わず、俺は笑ってしまった。
ミニルナが、きらきらした目でログを飛ばす。
【レティシア発言:王国運営リスクログと紐づけ】
【“悪役令嬢退場=シナリオ成立”前提 → “退場=長期リスク増大”に再評価】
「断罪テンプレ側の“ご都合いい世界運営”が、だいぶ揺れてますね〜」
「まだ、決定打が足りない」
俺は、主役テーブルの一角――マリアを見た。
(ここで、彼女がどう動くか)
◇
「……わ、私も、いいですか」
震える声が、大広間を切り裂いた。
マリアが、勇気を振り絞るように手を挙げていた。
「マリア?」
リオネルが目を見開く。
「さきほどは、途中で言葉を詰まらせてしまって……ごめんなさい。
でも、今なら、ちゃんと言えます」
彼女は、一度深呼吸をした。
「最初、レティシア様が怖かったのは、本当です。
でも、それと同じくらい――」
ちらりと、こちらを見る。
その瞳には、はっきりとした意志の光が宿っていた。
「レティシア様に救われたことも、多いんです」
大広間が、息を呑んだ。
「魔法の実技で失敗して、危うく大怪我をしかけたとき。
私を突き飛ばして助けてくださったのは、レティシア様です」
そんなログ、断罪テンプレの仕様書には一行もなかった。
けれど、“現地ログ”にはちゃんと残っている。
「夜会のダンスで転びそうになったときも、支えてくださった。
平民だからって、見捨てなかった」
マリアの声が、だんだん熱を帯びていく。
「わ、私……“誰かを悪役にして終わる物語”を、信じたくありません」
その一言で――何かが、ぱきん、と音を立てて割れた気がした。
◇
「今の、聞いた?」
ミニルナが、俺の耳元でささやく。
【ヒロイン削減テンプレ:適用失敗】
【理由:ヒロイン候補同士の相互肯定ログにより、“片方のみ退場”条件崩壊】
「マリアちゃん側のテンプレも、“誰か一人を踏み台にして終わる”前提だったんですよね〜。
それを、本人が裏切った」
「いい“裏切り”だ」
俺は、視界の上部を見上げる。
【悪役令嬢断罪テンプレ:適用トライ → 条件未満】
【黒い栞:ひび割れ】
黒い栞に、蜘蛛の巣みたいな亀裂が走っていく。
そのすぐ横で、七色の細い栞が、すっと厚みを増していた。
◇
「……そうか」
リオネルが、ゆっくりと息を吐いた。
さっきまで台本に縛られていた瞳が、ようやく自分の意志の色を取り戻す。
「マリア。君の言葉、しかと聞いた」
そして、正面――私を見る。
「レティシア。君の“役割”についても、だ」
大広間の空気が、再び張りつめる。
でも、その緊張はさっきまでの“断罪前”のものとは、もう少し違う匂いがした。
「本来なら――ここで、僕は台本通りに君を断罪し、婚約を破棄するつもりだった」
あっさりとそう言い切った王太子に、会場のあちこちからざわめきが上がる。
「だが、“本来なら”などという言葉に、いつまでも縛られていていいはずがない」
リオネルは、壇上から一歩降りた。
王家の紋章が刺繍されたマントの裾が、床を擦る。
そして――まっすぐ、私の前に立つ。
「君は、嫌われ役を引き受けてきた。
僕や、この国のために」
金の瞳が、真正面からこちらを捉える。
「そんな君を、“ここで切り捨てる役”など、僕はごめんだ」
リオネルが、静かに手を差し出した。
「――ならば、今ここで新しい約束を結ぼう、レティシア」
黒い栞が、音もなく崩れ落ちる。
代わりに、七色の栞がタイムラインの先まで、すっと伸びていくのが見えた。
「僕の婚約者としてではなく――」
王太子は、はっきりと言った。
「この国の物語を、一緒に長く続けていく“相棒”として」
大広間に、遅れて拍手の波が広がっていく。
それは、誰か一人を断罪することで得られるスッキリ感よりも、ずっと不器用で――でも、温かい音だった。
◇
【悪役令嬢断罪テンプレ:適用条件未満 → 強制適用不能】
【ヒロインルート削減テンプレ:このイベントにおける実行権限 停止】
ワールドコアの上部に、淡い文字が並ぶ。
「……勝ったな」
思わず、呟いていた。
ミニルナが、満面の笑みでうなずく。
「はい、“断罪テンプレ崩壊ルート”、正式ログ入りです!」
黒い栞の跡地に、七色の栞がしっかりと挟まれている。
それはつまり――この物語が、断罪で終わらず、ここから先も続いていくという印だ。
(よかったな、レティシア)
前世、何度も画面越しに見送ってきた“悪役令嬢の退場シーン”。
その台本を、今度は真正面からボツにできた。
――生前、何度もボツを食らった側だった俺が。
今は、“ボツを出す側”として、古いテンプレを一つ折ったのだ。
大広間の中央で、レティシアが差し出された手を、少しだけためらってから――しっかりと握り返した。
その瞬間、七色の光が、彼女と殿下と、そしてこの国全体に、静かに広がっていくのが見えた。
断罪で終わらない物語が、ようやくここから始まる。




