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第13話 女帝と飼い犬

 水族館を出たあと、俺とモモちゃん先生は墨田区をぶらぶら散策した。

 浅草にも立ち寄ったりして、昼にはラーメンを食べた。


 もちろん、手を繋いでね。

 柔らかくて脆そうな手。だけどあまりにも小さくて、親戚の子供を連れているような感覚になった。


「でへへ、今日は楽しかったぞハナミ」


「俺もっす。また学校で」


 地元の駅で先生と別れる。

 ワタシのこと好きになっただろ? とは聞かれなかった。たぶん、先生も勘づいているだと思う。

 俺が先生のこと、恋愛対象として見れないことを。





 家に帰ると、キッチンにユキハがいた。


「やぁ、おかえりハナミくん」


「あれ、母さんは?」


「帰りが遅くなるらしい。だから今日は私が晩御飯を振る舞おう。君の大好きな青椒肉絲だ」


「お、おー」


 ひとまず荷物を置いてシャワーを浴びる。

 それから席について、一緒に食事。


 ユキハに話したらどうなるのだろうか。先生とのデートのこと。


 嫉妬、するのか。

 ダメだ、そんな好意を試すようなやり方。


 そもそも俺は、こいつを嫌いになる予定なんだから。


「知っているよ」


「なにが?」


「ハナミくんがモモちゃんと遊んでいたこと」


「なんで!?」


「ふふ、ハナミくんの行動はすべて人工衛星から監視している」


 事実っぽいから怖いんだよ。

 誰かに見られたのか? まさか尾行でもされていた?


「まぁ、それに関しては別に構わない。モモちゃんは可愛いからね、デートしたくもなる」


 嫉妬はしないのか。


「それに、結局ハナミくんは、私のところに帰ってくる」


 なるほど、嫉妬するまでもないわけか。


「ハナミくんは私の犬だからね。犬とは紀元前の時代から、主人のところへ帰ってくるものだろう? そうじゃなかった犬は、自然と淘汰されていった」


 どうせ犬扱いされるならピットブルだとか土佐犬になりたいね。


「犬だけじゃない。豚も牛も、人間に生殺与奪の権を握らせる代わりに一定期間の安心と確実な種の存続を得たんだ」


「じゃあ俺もお前に従ってたら安心と種の存続ができるわけ?」


「…………」


 なんだ?

 ユキハのやつ、赤くなって。

 恥ずかしいことなんか言って……あっ。


「いや、種の存続ってのは別にそういう意味じゃなくてだな」


「……」


 なんだか、やりづらいな。

 ここ最近、ユキハとこの手の流れになると妙に気まずくなる。


 理由? そりゃ意識しているからだろ。

 俺も、たぶんユキハも。


 けどお互いプライドというか見栄というか不安がネックになって、背を向けている感じ。





「なぁ、ユキハ」


 そろそろ、ちゃんと決着をつけたい。

 捻くれて何もしないでいると、先生みたいに後悔しちゃうかもしれないから。


「デート、しようぜ」


「デート?」


「俺は……お前に依存されたい」

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