表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

第12話 女帝の知らない休日

 なんだかんだユキハとの距離が縮まった木曜日。

 なーんか忘れている気がするが、思い出せないので就寝し、そして朝を迎えた。


 ユキハは今日も休むらしい。

 ワンピースを読みたいからではない。無理して数日徹夜をした反動が来たからだ。

 丸一日寝ていたいとのこと。


 して、学校で普通に授業を受ける。

 してして、放課後。


「島風」


 モモちゃん先生に呼び止められた。

 なんだろう。補習はないはずだけど。


 照れくさそうに、こそこそと要件を伝えてくる。


「明日、頼むぞ」


「明日?」


「一回試しにデートをするって話しだよ〜」


 あー、したかも、そんな会話。

 マジっすか? 俺が先生と、休日に?


「頼む頼む頼むよー。好きになってくれとまでは言わないが、試しに、ホントにお試しだから」


 そんなに年下男子と関係を持ちたいか。

 俺も26歳独身になったら、女子高生と付き合いたくてしょうがなくなるのかな。


「そこまでいうなら……暇ですし」


「やたーっ!! さすが島風、優しい男だナー」


 まぁいいか、大人の人がどんな場所に連れて行ってくれるのか、気になるし。



------------------------------



 驚いた。

 翌土曜日、スカイツリーの前に現れたのは、白のゴスロリ衣装を身にまとった、モモちゃん先生だっだ。


「ど、どうだ島風。早すぎるウェディングドレス……なんちゃって」


「あ、その、似合ってます。マジで」


 先生が小さいから、こういう服が本当に似合う。

 高価なドールのようだ。


「でへへ♡♡」


 通り過ぎる人たちも先生をチラ見している。


「さー!! デートするぞ島風!!」






 先生に連れられて、水族館に入る。

 大人のデートは水族館らしい。

 綺麗な魚にペンギン、対して好きじゃないけれど、久しぶりに本物を目にするとテンションが上がる。


「おほ〜、ペンギン可愛いナ〜。島風」


「なんすか」


「ペンギンとワタシ、どっちが可愛い?」


「すぅ〜〜。ペンギンですねぇ」


「おいおい、照れてるのが丸わかりだゾ〜」


「あ、あはは。……ところでモモちゃん先生、水族館好きなんですか?」


「好きというか、定番だろ? デートの」


「まぁ」


 先生の視線が再度ペンギンに向けられた。

 こうしていると、まるで珍妙な動物に心惹かれるお姫様だ。


「ワタシな、実ははじめてなんだ」


「なにがっすか?」


「男の人と遊ぶの」


 ペンギンたちから離れ、適当な椅子に座る。

 俺もつられて隣に座った。


「ワタシな、昔から恋愛や男を見下してきたんだ。恋愛なんてただ発情し合ってるだけ。男はワタシみたいなやつ相手にしないし、するとしてもロリコンだけだ。みたいな」


「捻くれてますね」


「でも20代も後半になって、理性じゃなくて、本能が焦り始めたんだ。ワタシ、ロクに恋愛経験がないって。このまま孤独に一生を過ごすこと、昔はへっちゃらだったけど、今は……ちょっと怖い」


 先生の肩が、普段より小さく見える。

 俺にはモモちゃん先生の気持ちはわからない。

 まだ高校生だから。理解したとしても、きっとそれは「わかった気になっている」だけなのだろう。


「そんなとき、お前と気が合うことを知ってな、浮かれちゃったわけだ」


「…………」


「はは、なんか気持ち悪いよな。26の女に言い寄られるなんて。知ってるんだぞ島風、お前は、月河が好きだってこと」


 強がるように先生が笑う。

 なんだか、構ってあげたくなるな。

 抱きしめて、優しい言葉を投げかけてやりたくなる。


 父性ってやつなのだろうか。


「島風、自分の本心に背を向けて、捻くれたままだと、ワタシみたいになるぞ」


「俺は割と素直ですよ」


「いままで、こんなワタシでも二回くらいは告白されたことあるんだがナ〜。どうしてあのとき……」


 俯く。

 悔いて、過去に浸る。


 俺と先生の間にある10年という時間の差。

 俺がこれから歩む未来を、この人はいま、振り返っている。


「モモちゃん先生」


「なんだ?」


「ここから先は手を繋いで名前で呼び合いましょうよ」


「えぇ!? で、でもそれはさすがに月河に怒られるんじゃないか?」


「先生の後悔をはらす、今日はそういう日ですから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ