表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

その他の短編

平和主義者たちの目指す先は

 その男は平和に憧れていた。

 醜く言い争う裁判を聴きに行ってはこの世のくだらなさに嘆き、紛争地域のニュースを見ては憤慨する。

 時は2100年。男の生まれた時代からは科学などは遥かに発達していたが、人々の在り方は何も変わっていなかった。

 どうして皆、平和に過ごせないのだろうか。

 そんな毎日に疲れ果てた頃、男は同志――一人の少年と出会う。

 少年は、幼いながらに世界を変えたいと心から望んでいた。希望に満ち溢れた瞳で、子供らしい無邪気な声で、男を誘う。

「ねぇ、おじさん。世界を平和にする方法を、ぼく、知ってるんだ」

「教えてくれ」

「全ての悪人を取り除けばいいんだよ。簡単でしょう?」

 少年は、未来を憂う大勢の仲間を引き連れていた。

「良かったらおじさんも手伝ってくれないかな」

 少年の一団に加わった男は、あらゆる悪を裁いた。

 何が原因か知らないが揉めているカップルやら親子やらの口を二度と開けないようにして回った。一度でも罪を犯したことのある人間を調べ上げ、昼夜問わず電話をかけて自死させた。国税で民を苦しめている国の上層部の人々を大量の爆薬を仕掛けて木っ端微塵にした。

 日々、争いの声が消えていく。日々、平和が近づいてくる。

 逆賊だと叫ばれ、軍隊で襲いかかってきた。リーダーの少年は自ら犠牲となって首を差し出し、幼い少年を無慈悲に殺めた軍の非道さを全世界に訴えることで、逆に同志が増えた。

 結果的に軍隊は他国によって潰され、その他国もまた別の国の反感を呼んで、国が一つ、また一つと滅んだ。

 犠牲となった少年の理想を絶対に叶えてやる。そう誓った男は、仲間たちと共に、ただひたすらに突き進む。

 平和主義者だけの楽園は、もうすぐそこだ。


 ――彼らは気づかない。自分たちの行動が、多くの悲劇を産んだことに。

 ――彼らは気づかない。行き着く先が、荒廃でしかないことに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こういう人、リアルにもいますよね( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ