06話 呪われた子
「可愛い可愛い私の子…」
一人の女性が、生まれて数ヶ月しか経っていない自分の子の頭を撫でていた。
そして場面は代わり、目の前は火の海になっていた。
「…うっ…うぅ…っ………おかあさぁん…」
火の海の中、一人の子供が涙を流して泣いていた。
母親を探す子の後ろから、数人の大人が出てきては武器を子供に向けた。
「居たぞーー!!呪いの子だぁーーー!!!」
「殺せーー!呪いを断ち切るんだぁ!!!」
そのようなことを言いながら、大人達は火の海の中、子供向かって武器を振り下ろす。
「え?」
こうして子供の命は理不尽に奪われたのであった…
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あの後、警察に事情聴取をされたり、怪我をしていないかと見られたりしたが、腰に湿布を貼ることになったこと以外問題はなかった。
吊るされたり操られていた人達も、栄養失調などになっていると聞いたが、命にかかわる病気や怪我はなかったようだ。
事情聴取を終え、俺は無事家に帰ってこれた。
危険な雑木林に入ったってことで父さん達に注意はされたが、人を助けたということで怒られることはなかった。
部屋に戻ったのだが…
「あ~兄ちゃんの部屋落ち着く~」
「うおっ!漫画が沢山ある!!」
「兄御、コイツは何処に寝かさればええんや?」
「…」
一名物理的にデカいのが居るせいか、一気に部屋が狭くなった気がする。
「取り敢えずその子は俺のベットに寝かさせてあげてくれ」
「分かった!」
山左衛門は子供を俺のベットに寝かせた。
俺は何をするべきか考え始めた。
子供に色々と聞きたいけど、いつ起きるかは全くの不明…と、なるとあの雑木林の辺りで色々と聞く方がいいか。明日は休みだし…
子供は当分起きないと判断した俺は、明日に雑木林に戻って色々と調べることにした。
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次の日、俺は眠たい目を擦りながら電車に揺られていた。
「兄ちゃん、大丈夫?」
「……なんとか………」
俺の前でふよふよと浮いているこむぎが心配してくれた。
俺がこんなにも眠たい理由は、昨日の晩子供をベットに寝かせたため、俺は床で寝たのだが…
睡眠が要らない幽霊である涼や山左衛門が喋ったり野良幽霊と喧嘩を起こしそうになったりして、中々寝付けなかったのだ。
最終的にはこむぎが何とかしてくれたが…
子供の様子を見て置くという理由と昨晩の罰として、涼達は置いてきた。
睡魔と戦いながら数分後、ようやく駅に着き、俺は欠伸をしながら雑木林に向かった。
雑木林に着くと、規制線が張られており完全に関係者以外立ち入ることはできなくなっている。
「参ったな~」
規制線の前には警察が数名経っているし、雑木林の中はブルーシートで見えないようにされていた。
「おやおや…騒がしいと思っていたら、何があったんだい?」
ブルーシートを見ていると、後ろの方から声が聞こえてきて俺は声の方を振り返った。
声の方を見ると、優しそうな顔をしておばあさんが杖を使って立って居た。
「やっぱり、呪いの子の影響かねぇ~」
「呪いの子?」
おばあさんが口に出した言葉に、俺はつい復唱してしまった。
「おや?知らないのかい?…ここら辺の者なら知っている者が多いのだがね~…まぁ、知っていると言っても私のような年寄りしかしないけどね…」
そう言い始めると、近くにあったベンチまで移動しため、俺は真剣に話を聞くことをした。
そして、おばあさんはポツポツと昔話を話し始めた。
「昔はね、ここら一帯は小さな村だったの…そしてその村には妖術使いの家族が住んでいたの…村人達は妖術使いをよく思っていなかったみたいでね~…村八分をしていたそうよ……その結果、その家に住んでいた夫婦は病で亡くなり、その年、村は飢饉に襲われたみたいなの…村人達は妖術使いの呪いだと決めつけ、一人で住んでいたまだ幼い夫婦の子を呪いの子と呼んで手をかけたそうな…だけどね、そんな残虐なことをしたからか、神様に見放され飢饉だけではなく水害とかも起きたそうよ…そして、一家の呪いだと怯えて一家の家があった所に小さな祠を立てた…その祠があそこでね~…今でも私ら年寄りには訳アリの場所として知られているのよ」
祠について話を終えると、おばあさんはゆっくりと立ち上がった。
「そう言うことだから…あの祠には悪さしない方がいいよ…今回の事件も、誰かが悪さをいしたからっと言われておるし…」
おばあさんは俺に注意をした後、ゆっくりと去っていった。
その呪いの子が家に居るなんて口が裂けても言えないな…
そんなことを思っていると、ブルーシートで囲われた雑木林の中を見るアイデアを思い付いた。
「こむぎ、こむぎって物持てるよね?」
「うん!普通じゃあ持てないけど、神力を使えば持てるよ!」
「それじゃあさ…このスマホで雑木林の中を人にバレないように撮ってきて」
「は~い!」
録画機能を起動させたスマホを持って、こむぎは雑木林の中を撮影しに行った。
そう、俺が思いついたアイデアとはこれなのだ。昨日、こむぎが小物を浮かせていたから、ひょっとするとスマホも行けるのか?っと思ったのだ。
例えるならば、騒音がない幽霊ドローンだろう。
幽霊故にドローンのような音が出ることはないし、スマホの録画機能を予め起動させておけば撮影する際に出る音が無くなる。
少しズルかもしれないが、そうでもしないと情報が集まりにくそうだからね、うん!仕方ない仕方ない!
暫くすると、こむぎが少し申し訳なさそうな顔をして帰って来た。
「え~っと、兄ちゃん…?その…怒らな…い?」
「ん?どうしたんだ?」
「えっと……中に居たおじさんに姿見られちゃった!」
「はっ?」
こむぎの言葉を聞き、俺がその場に固まった瞬間、雑木林の方から複数の足音が聞こえて来た。
「取り敢えず逃げるぞ!スマホはあるよな!?」
「う、うん!」
「よし!一回分かれて駅で合流するか、人が通れない所や通りにくい所を通って来いよ!」
「分かった!」
足音が迫ってくる中、俺らは二手に分かれて脱兎の如く駅へと逃げて行った。
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「つ、疲れた~…」
「私も~…」
何とか撒けた俺らは、駅のホームで電車が来るまで息を整えていた。
色々と謎はあるが、皆で撮れた物を見たいため、家に帰ってからじっくりと動画を見るとするか…