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04話 雑木林の噂

学校が終わり、今か今かと待っているこむぎを横目で見ながら帰りの準備をしていると、


「蛍人~、今日は一緒に帰れるから、帰るか?」


いつもなら部活で一緒に帰れない悠希が、声をかけて来た。

見える体質になってから体調がすぐれなくなった俺を心配して声をかけて来たのだろう。

その時、悠希にこむぎの件について話してなかったことを思い出した。


「…いいけど、少し言いたいことがあるから、ちょっと荷物を持ってついて来てくれないか?」

「?分かった」


疑問を抱いているだろう悠希についてくるように頼み、俺らは学校を後にして荷物を持って雑木林の近くまでやって来た。


「おい…ここって…」

「ああ、噂の雑木林だ…」

「……幽霊退治でもするつもりか?」


いきなり雑木林に来たため、悠希は戸惑いながら幽霊退治をするのかと聞いてきた。


「気になるんだってよ」

「誰が?」

「こむぎが…」

「?」


こむぎが雑木林を気になっていることを伝えると、悠希は口をポカーンと開けてその場で固まった。


「お前…ついに…」

「いや、壊れてねぇからな?」


俺が恐怖のあまり壊れたと思っていたのか、悠希は憐みながら俺の肩にポンっと肩を置いた。

即座に俺は壊れていないと否定し訳を話すことにした。


「俺もあんまり分かってないんだけど、こむぎがなんか俺の守護神として帰って来たんだよ」

「うんうん、幽霊を見すぎて壊れたか…お前元々ホラー系嫌いだしな」


簡単にこむぎについて話してみたが、信じてくれている様子は一切なかった。

どうやって信じ込ませようと考えていたその時だった。


「お母ちゃん…どこ行ったの…」


雑木林の奥から幼い子供の声と泣く声が聞こえてきた。

そして次の瞬間、嫌な気配を放つ力士とヤクザみたいな風貌の男が雑木林から出てきて、力士が俺らの手首を片方ずつ掴み、ヤクザ男は俺らの背中を押して来た。


「兄ちゃん達に…なに、するの!!」


俺らを押されたのを見て、こむぎは力士とヤクザ男に向けて白い球をぶつけた。


「がっ!」

「ゴハッ!」


こむぎに白い球をぶつけられた男達は、大きく怯んだ。

怯んだ男達を見ていると、白い球が当たった所が音を立てながら黒い煙を上げているのが分かった。


「何が起こったんだ!?」


雑木林に入るギリギリのところで助かり、状況が分からない悠希は混乱していた。


「悪霊が襲って来たんだが、こむぎがそれを助けてくれた」

「…マジでこむぎが戻って来たのか?」


悠希はようやくこむぎのことを信じてくれた。


「まだまだ!!」


こむぎを見てみると、男達に先程の白い球を雨のようにぶつけて続けていた。

こむぎの容赦ない攻撃に、男達達は手も足も出すことができていない状態で、少し可哀想になって来た。


「どうなってるんだ?」

「うん…まぁ……俺らを襲って来た悪霊が、こむぎに手も足も出せずにボコられている」

「えぇ…」


俺から状況を聞いた悠木は、開いた口が塞がらなくなっていた。

もう放置でいいなと思っていた時、いきなり後ろから首元を掴まれた。


「なっ!」

「何!?」


何が起こったのか分からない中、抵抗むなしく俺らは雑木林の奥へと引きずり込まれ始めた。


「兄ちゃん!?」


男達の相手をしていたこむぎは、俺らを助けようとしてくれたが、引っ張る力が強く、俺らは勢いよく雑木林の中へと連れていかれた。


「どうなってんだよ!」

「何かに掴まれているみたいだな」


必死に首元を掴んでいる物から離れようと藻掻いてみるが、中々離れられない。

助かる方法を考えていると、雑木林の奥で俺らはいきなり離された。


「「いったぁ!!」」


いきなりは離した物だから、俺らは尻餅をついてしまい、俺の場合木の根が腰に当たって余計痛みを感じた。

もう少し丁寧に扱えよ…

痛めた腰に手を当てながら立ち上がり、後ろを振り返った。

すると、そこには…連れ去られたのだろう。多くの人達がキツネの仮面を付けられ、木からぶら下がっていた。そして、俺らの正面に和服の一人の子供がしゃがみ込んでいて、背をこっちに向けていた。


「か~ごめかごめ…かごのなかのとりは~、いついつでやる。よあけのばんに、つるとかめがすべった…うしろのしょうめん……だ~ぁれ?」


カゴメの歌を歌っていた子供は歌い終えると、ふらつきながら立ち上がり、俺らの方を向いた。

表情は付けている仮面のせいでよく分からないが、異様な雰囲気を放っていた。


「…何だあれ?」


先に声を漏らしたのは、幽霊が見えないはずの悠希だった。


「見えるのか?」

「ああ…昔お爺ちゃんに聞いたんだが、霊の中でも強い力を持つ者は普通に見えるんだってさ…伽〇子や貞〇さんみたいな感じだな」


分かりやすい例を挙げてくれた悠希だが、正直昔からホラーが嫌いで見ていなかった俺にとって、例を挙げられても名前しか知らない程度だ。

まぁ、ヤバい奴ってことは分かったけどな。


「嬉しいな~、お兄さん達も遊んでくれるの~?何して遊ぶ~?」


言っていることは無邪気な子供なのだが、本能が警告するレベルでヤバいと感じる。

逃げれるように、少しずつ後ろに下がり始めたのだが、


「え…帰っちゃうの?」


俺らが少しずつ下がっていることに気付いた子供は首をかしげて聞いてきた。


「なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…」


狂気じみたことを言いながら、子供は一歩、また一歩と近づいてくる。


「逃げるか…」

「嗚呼…」


俺らはこれ以上はやばいと判断し、逃げようとしたその時、


「逃がさないよ?」


そう言うと、子供は俺ら目掛けて赤い糸のような物で俺らを拘束しようとしてきた。

拘束されそうになった時、悠希の守護霊である老僧が子供を錫杖で子供を突き飛ばし、それに続くように俺の守護霊が俺らの目の前に出た。


「…お爺さん達が、僕と遊んでくれるの?」


老僧に錫杖で突き飛ばされた子供は、ゆらゆらと立ち上がった。


「でも、僕はお兄さん達と遊びたいから、お爺さん達はこの人たちと遊んでよ!」


子供がそういうと、守護霊達の前に木に吊らされていた人達が子供の前に落ちてきて、立ち上がったと思った次の瞬間、守護霊達に向かって殴り掛かった。

普通ならば、生きている人間が幽霊を殴ることはできないのだが…老僧は防御したものの、操られているだろう人から殴られ、少し後ろに飛ばされた。

何故殴れているのかと思い、操られている人達のよく見てみると、手に先程の赤い糸が巻き付けられていた。

原理はわかないが、恐らくあの子供の悪霊が作った糸が原因だろう。


「おい!何処見てるんだよ!」


焦る悠希の声を聞き、子供の方を見てみると、俺らの近くまでそこまで迫っていた。


「お兄さん達、一緒にあ~そぼ」


子供はいつの間にか作っていた大量の赤い糸を俺にぶつけようとしてきたが、


「み~つけ…た!!」


こむぎの声が聞こえて来たと思うと、最初俺らのことを襲って来た男達が思いっきり飛んできて、子供を押し倒した。


「姉貴!危なかったからって、いきなり投げることはねぇだろ!!」

「うぷっ…酔ってまいそうやわ…」


飛んできた男達は先程までの嫌な気配が無くなっていた。


「おーもーいー!」


力士とヤクザ男に上から乗られている子供は抜け出そうと必死に藻掻いていた。


「…あれ?なんでいきなりあそこに倒れたんだ?」


男達の姿が見えていない悠希は首を傾げていた。

見れたとしても、俺みたいに何が起きているか分からないだろう。


「兄ちゃ~ん、お待たせ~!」


声がした方を向くと、こむぎが片手に炎を纏わせながらやってきた。


「姉貴!早くコイツを正気にしてやってくれ!」

「見た目は子供やが、コイツの力は俺ら以上や!姉御はよ頼む!」


こむぎがやってくると、男達はこむぎを姉貴や姉御とそれぞれ呼び、子供に何かするように頼んだ。


「そうだった!」


男達に言われ、何かをすることを思い出したのか、こむぎは子供の炎を纏っている手を向けた。


「今助けるからね」


そう言い、こむぎはふぅーっと、炎に息をかけた。

普通ならばゆらゆらと揺れるだけだろう炎だが、こむぎが息をかけた炎は子供の方へ塊となって飛んでいった。

飛んで行った炎は、男達に抑えられている子供に触れ、それを確認すると男達は子供の拘束を解いて少し離れた。

そして、炎はあっという間に子供を黒い煙を出しながら燃え始めた。

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