03話 神が居る日常
「…重い……」
こむぎが帰って来た次の日、寝ていた俺だったが、腹部辺り違和感を感じたため上半身だけ起こしてみると、犬の姿のこむぎが丸まってスヤスヤと寝ていた。
起こすために、恐る恐るこむぎを触ってみた。
触って見ると生前と同じ温度、触り心地だった。
「っ!おはよう!!」
俺が触るや否や、昔から寝起きが良かったこむぎは尻尾を振りながら人型になって起き上がった。
昔から朝に強かったなよコイツ…
母さんが起こしに来る前に、俺はベットから出て下へ降りた。
「おはようさん。深雪は?」
「まだ寝てると思う…」
「全くあの子は」
弁当を作ってくれている母さんに、深雪がまだ起きていないことを伝えながら、冷蔵庫からヨーグルトを一個取り出し、そのままスプーンを引き出しから出して素早く食べた。
俺がヨーグルトを食べている間、こむぎは母さんに自分の存在に気付いてほしいのか、必死にもうアピールしていたが、見えない母さんに意味はなく、結局気付いてもらえてなかった。
「兄ちゃんが見えてるから、母ちゃんも見えていると思ったんだけどな~」
悔しそうな表情を浮かべながら、俺の後を付いてくるこむぎ。
「おはよ~」
「ああ、おh…」
支度のために部屋に入ろうとした時、隣の部屋から少し寝ぼけている深雪と、めっちゃ威嚇してきている虎が出てきた。
一瞬死を悟ったね…今まで以上に虎が警戒しているんだから…何なら昨日からずっとあの状態。
ふと、こむぎの方に視点を向けてみると、こむぎはこむぎで虎を睨め付けていた。
このままは不味いと思い、そそくさと俺はこむぎと一緒に部屋の中に入った。
「あ~もう!あのデカ猫嫌い!!」
部屋の扉を閉めると、こむぎは虎に対して文句を言った。
「前から見えてたのか?」
「うん、私生前から霊感があったから、姉ちゃんに虎の守護霊が取り憑いているの知ってたの…いっつも私が姉ちゃんに近づくたびに威嚇してきたんだよ?おかげで、姉ちゃんから来ないと構ってもらえないし!」
どうやら虎に威嚇されていたから、こむぎは生前妹を避けていたようだ。
なんでアイツには虎が憑いているのだろうな…
そんな疑問を抱きながら学校の支度を済ませ、学校へ向かった。
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いつも通りに守護霊と目が合ってしまうなっと思っていたが、何故か守護霊が俺から一定距離を取って離れている。
もしやと思い、こむぎに小さな声で尋ねた。
「守護霊が一定の距離を保っているのって、こむぎのせい?」
「多分神聖な力に怯えていると思う、守護神の中でも私は上位の方だから」
「…新米とかって一番下から始まるんじゃないの?」
「実力!」
「なるほど…」
神様の世界は実力主義なんだな…厳しい世界だ。
「そういえば、神様になる条件とかあるのか?」
この際、神様になる条件も聞いてみることにした。
「あるよ、最低条件として三つがあって、何かしらの力、それか何かしらの神様と繋がりある。生前幽霊を見れていた。そして信者が十人以上居るのが条件だよ!」
神様になれる条件をこむぎから聞いた時、一つの疑問が浮かんできた。
………ん?こむぎに信者とかいるか?
そう、こむぎに信者が居ないことに気付いた。
「どうやって信者の数の条件を満たしたんだ?」
小声で信者の条件を満たしたのかと、こむぎに聞いて見ると
「婆ちゃんとか、たまに来る子達とか~、お兄ちゃんの友達を信者にしたんだよ!その神様が居ると信じている、もしくは神になる者のことを覚えている者が居るか、どっちかの条件を満たされたOKになるよ」
信者の条件を満たす詳細を教えてくれる。
なるほど…親戚と俺の友達を無理矢理信者としたのか…
そうこうしていると、電車が学校の最寄りの駅に停車したため、学校に向かって歩き始めた。
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学校に着き、カバンから教科書などを出していると、クラスメイト達の会話からある噂が聞こえてきた。
「知ってるか?学校の近くの雑木林の噂」
「え?何それ?」
「なんでも雑木林の近くを通った時、子供の泣き声が聞こえてくると凄い力で雑木林の中に連れ去られるらしいぜ」
「なにそれ!?マジか!?」
「マジマジ、実際俺も連れ去られそうになったし、噂を聞いていたから子供の泣き声が聞こえた瞬間全力で走って逃げたけどよ…あれはマジで怖かったわ」
雑木林の噂を聞きながら小説を取り出した時、こむぎが机からこんにちはと言わんばかりに、顔を出して来た。
内心ビビったが、声を出せば変な奴と思われてしまうので、ここはぐっと抑える。
「ねぇ兄ちゃん、学校が終わったら行かない?」
嫌な予感が的中し、俺は言葉を失った。
「絶対嫌に決まってるだろ…」
そんな噂がある雑木林には絶対行きたくない…非現実的なことに首を突っ込みたくはない。
「行こうよ~!ねぇ~!!」
どうしても気になるこむぎは駄々を捏ね始めた。
こむぎが駄々を捏ね始めた瞬間、教室に置いてある黒板けしや、筆箱などの小物が浮かび始めた。
「えっ!!なにこれ!?」
「ぽ、ポルターガイスト!?」
行き成り物が浮かび上がるの見たクラスメイト達は混乱し始めた。
「分かったから落ち着け!」
「…行ってくれる?」
「わ、分かったから!」
皆が混乱する中、俺はこむぎを大人しくさせるために、渋々俺は雑木林に行くことを承諾した。
「やった~!」
雑木林に行けるようになったこむぎは無邪気に喜び、それと共に宙に浮かんでいた小物が力尽くようにその場に落ちた。
クラスメイト達は何が起きたか分からない中、先生がやって来たためホームルームが始まった。
何名かが先生に小物が浮いたことを話したが、普段ふざけている連中が話していたため、先生がその話を信じることはなかった。